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型が身につく鍼灸臨床 -問題設定・解決の思考法-

人生は思っているより遥かに短い
 「体感では19歳で人生の半分が終わる」という言葉を知っていますか?
 フランスの哲学者ポール・ジャネが提唱した法則で、「ジャネーの法則」として知られています。この理論では、例えば5歳児にとっての1年はこれまで歩んできた人生の1/5という割合なのに対して、50歳にとっての1年は人生のわずか1/50でしかないという理論です。つまり、5歳児の一年を体感するには、50歳の1年が10年分も必要だということです。この理論に基づいて人生を80年と仮定し算出すると、体感速度では19歳で人生の半分が終わってしまいます。
 この理論を知ったときに、衝撃を受けたのを覚えています。それと同時に人生は思っているよりも遥かに短く、私が残せることなんかたかが知れていることも感じさせられました。「もう少し余裕があるときに…」や「子育てが落ち着いて時間があるときに…」と考えていた人が、実際にその時を迎えたら気力も体力も残っていなかった…なんて、話しもよくあります。忙しい日々の中でも、時間を捻出して今できる目の前のことに臨まなくては成長は見込めないと私は考えています。

 鍼灸師として成長するためには鍼灸師になる前の学生時代から取り組み始めて、鍼灸師になってからは5年以内に何らかの成果や結果を残せるようにしなければ、気が付いた時にはすでに手遅れな状況になってしまう恐れがあります。私自身も鍼灸学生~若手鍼灸師の方々に向けて情報を発信しているのもこの理論を知ってしまったからかもしれません。しかし、成果をあげることや結果だけが人生のすべてではないことも知っています。それでも次世代にバトンを渡すときに、できれば今よりもより良い状態でそのバトンを渡したいですよね。そんな意気込みで取り組んでいます。

前回の復習

 前回は、鍼灸医療面接について学びました。
 (1)では、鍼灸医療面接の重要性やその本質、副作用や医療面接を行う上での注意点などをお話ししました。

 (2)では、私自身が実践している鍼灸医療面接を解説しました。

 今回は患者さんから得られた情報をもとに、問題の設定方法や解決の思考法を習得し、治療方針の立て方などについても学んでいきます。
 問題設定の方法では、プロブレムリストの作り方を解説し、問題解決の思考法では、①仮設思考②システム思考③ラテラル・アプローチ④ピボット・クラスター戦略を学んでいきます。
 治療方針の立て方では、ラテラルシンキングロジカルシンキングイシュー思考について学んでいきます。


問題設定の方法

プロブレムリストとは?

 プロブレムリストとは、患者さんに対して何を治療し、何を改善しようとしているのかが分かる一覧表のことです。これによって特筆すべき有意な情報を見抜くための情報処理能力、さらには病歴の情報の中からキーポイントとなるものを見抜く力も上がります。

アセスメント

 後輩の指導に当たる場合には、まずこのプロブレムリストを作成してもらい、それをもとに指導を行っていきます。
 指導を行う側は適切に情報を取捨選択できていたか、優先順位は正しかったかなど指導していきます。指導を受ける側は認識のズレを是正し、情報処理能力を身につけて問題設定の方法を習得していきます。したがって、この一連の作業に対してフィードバックを受けられる環境を見つけることが重要となってきます。


プロブレムリストの作り方

  • プロブレムリストには健康管理上、分析や介入する必要があると判断した事項はすべて列挙する。

  1. 列挙する順番は重要度順で、さらにその中で、Keyとなるものを選び出す。

  2. 「鍼灸治療を行う上での問題(現代医学・東洋医学)➝心理的問題➝社会的問題(家族・仕事・経済的問題など)」の順に記載する。

  3. 治癒した場合には終了日を併記して終了する。


プロブレムリストの作成方法

 カンファレンス用資料を作成したので、実際の症例で検討してみましょう。

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