【開催レポート】Feel度Walkを私の古民家でやってみて気づいたこと 〜歩いて、感じて、語り合ってみて〜
みなさんこんにちは!鹿児島出身・愛媛在住のファシリテーターのいわし〜です。「えひめの板書屋」という名前で、愛媛を中心に全国で活動しています。
今回、ジェネレーターとして活動しているKTを神奈川から愛媛にお呼びし「Feel度Walk(フィールドウォーク)」を我が家で開催しました。一体何をするのか?というと、歩いて、見て、書いて、語り合うと言うとても単純なもの。これがなかなか面白かったのでレポートします。
私が拠点にしている古民家、清水邸で初のイベント開催ということもあり、一週間前から少しずつ庭の草刈りと部屋の掃除を念入りに。開催当日に参加者の皆さんが歩きまわれるようにと思いながら、家と庭を整えました。
そして開催当日。飛行機に乗って神奈川から愛媛に来てくれたKTを駅まで迎えにいきます。
なんとなく、あてもなく
卯之町駅に到着した時から、KTのFeel度Walkはすでに始まっていました。「ここのマンホールかわいい!」「駅の中にたくさんうさぎのモチーフのものがあるね!」と全方位を見渡してどんどん写真を撮っていくKT。
足元にある道路のブロックから、上にある駅の時計や看板まで、隈なくキョロキョロと見ていたのが印象的でした。「あ〜〜!いろんなものが気になりすぎて、長居してしまうから早く会場に行こう!」と目を爛々として私に言うKT。二人で清水邸に向かい、一息ついて参加者を待ちます。
さて、11時になると、少しずつ参加者が集まってきました。家族連れや夫婦でと媛県各地からいろんな方が参加してくださり、玄関にたくさんの靴が並ぶ風景になんだか嬉しくなります。全員が集まったところで、KTからの挨拶と今日の流れについてお話し。そして、卯之町駅でKTが見たもの・気になったもの・面白いなと思ったものを写真で紹介していきます。
今日みんなでやるFeel度Walkってなんなの?をKTに話してもらう中で、私が特に印象的だったのは「なんとなく、あてもなく」と言う言葉。え、そんなのでいいの?と詳しく聞いてみると、
とのこと。ほうほう、なるほど。そして、元・小学校教員だった自分の経験をもとに、KTは話を続けます。
「自分の“なんとなくセンサー”を働かせて、身の回りを歩いてみて自分が発見したものみんなで面白がる。これを繰り返していくことで、子どもの探究心と自発性を育むことにもつながると思ってて。子どもと一緒に授業を作ることに取り組んでいる学校や先生がいる一方、大人が一方的に子どもに教える形もまだまだ多く、課題待ち・指示待ち状態を生んでしまうことも。でも、Feel度Walkをやっていると、誰か他の人の働きかけに関係なく自発的に動く子どもの姿をたくさん見れるんですよね。」
気になったものを撮って、写真を見ながらスケッチして、語り合う。とっても単純なことで、誰にでもできそうなことだけど、なんだかとっても深そうだぞ。百聞は一見にしかず。ひとまずやってみよう!
早速、Feel度Walkのスタートです。
私も初めて知ったことなのですが、この天井の上にはなんと「たまゆら」という、幸せをもたらしてくれる良い妖怪!?がいるそうです。参加者の杉本さんが「存在は知っていたけど、生でみるのは初めてです!」と興奮してみんなに伝えてくれました。「え、それ私の家で撮影した時も写ってて、埃も立ってないのになんだろう?と思ってたんです」と別の方からも。清水邸でFeel度Walkを開催していなかったら、一生気づかなかっただろうなあ。ほえー。そして、天井を覗かせてもらった後は、たまゆらさんにお礼を言ってそっと扉を閉めました。
さてさて、各々で好きなところをあてもなく歩き始めます。
この写真で面白いなあと思った箇所は、こどもたちは井戸を見て、おとなは全く別のところを見ているところ。同じ空間に居ても、見ているところは全然違う。それぞれが自分の感度のまま動く様子もまたいい。
お昼ごはんとお昼寝
2時間かけてたっぷり歩いて、清水邸に帰ってきました。携帯にはたくさんの「なんとなく気になったのもの」の写真が収められています。写真をスケッチする前に、一旦みんなでお昼ご飯。お弁当は各自持参で集まってもらったので、朝に仕込んでおいた味噌汁をみなさんに振る舞います。玉ねぎは地元産のもの、お味噌は隣町の宇和島市のものを使って作ってみました。お茶碗も元々清水邸にあったもの。
お昼ご飯の後は自由時間を設けて「みんな好きなところで好きに過ごしていいよ〜。私はちょっと昼寝します。」と私。その後、それぞれが好きなように過ごしていました。自分のしたいことを、自分がしたいときにしたいようにする。この雰囲気を作ってくれたのは、清水邸のおかげかもしれません。
スケッチすることで自分と他者が見えてくる
お昼時間が終わったら、写真を撮ったものを見返して、スケッチしていきます。どんなペンで描こうかな、この色かな、ちょっと違うなあと言いながら各々が描き始める。時間が経つにつれて少しずつ静かになり、みんな真剣な表情に。20分くらい経っていたと思うのですが、しんと静まり返って、ペンの音だけがカリカリ…と聞こえていました。
私が選んだ写真は、虫に食べられた古い箒(ほうき)。規則正しく編まれて、節目で糸で縛ってあるの縦の線と横の線が美しいな〜と思い選びました。でもよ〜く写真を見てみると虫に食べられたブツブツ感が目ん玉に見えて子どもの顔に見えてきたり、編まれる場所で紐の素材が違う!という発見があったり。「箒の色ってこの茶色じゃない…どのペンが一番実際の色に近いかな」「あ、でも黄色やピンクでもいいんじゃない?」「だんだんカラフルなとうもろこしに見えてきた!」と私は頭の中でもう一人の自分とたくさん話をしながらスケッチをしていました。
一旦描き終えたら、書いたものを紹介しながら一人ずつ話していきます。清水邸の母屋の扉にいた蜘蛛を書いた人、清水邸を外から見た時に、屋根の下の暗闇と丸い窓が気になった人、玄関上の大きな支柱、道路の反射板、草花…。各々エピソードを語る中で、この人にはこういう景色が見えてたんだという発見がたくさん!
相手がどんな視点で、何を見て、どんなペンや色を選んで、どう書いたのか。この工程を通して、相手の内面が少しずつ滲み出てくる(勝手に出てくるのかも?)。まるで山の頂上にある湧水の始まりのようだと私は思いました。
KTの見ている世界がおもしろい。
KTとの出会いは、青山学院大学のリカレント教育。ワークショップデザイナー育成講座というオンライン授業で同じ班になり、切磋琢磨しながら夜な夜な班活動をしたことがきっかけです。実際に対面で会ってみると、あの時とガラッと変わったなあと私は感じました。彼女からは洞察力や探究心がどんどん溢れている。自然で例えるなら、出会った当初のKTは山の静かな湧水で、今のKTは、温泉を掘り当てました〜っ!ドカーン!という感じです。KTと一緒に過ごしていると、自分が今まで興味を持っていなかった風景にも目がいきます。「この花ってなんでこんな形で花びらが8枚あるんだろうね」「この電柱についている会社のマーク、どうして一つだけ菱形なんだろうね」と一緒に話すことで身の回りのことに興味がいき、自分で考える力も深まる。同じ風景を見ているはずなのに、彼女はこんなにも見ている世界が違う。これからもこうやって彼女はジェネレーターとして全国を飛び回って、いろんな人の見る世界を変えていくんだろうな、と思ったいわしーです。
彼女のみている世界をもっと知りたい!と言う方はこちらの動画もぜひご覧ください。
Feel度Walkが私たちに気づかせてくれたこと。
Feel度Walkそのものはとても簡単なものです。簡単で誰にでもできそうなものこそ実は大切なのかもと感じた1日でした。参加者の中には、Feel度Walkを通して、自分の子どもの感覚を一緒に体感してみたかったという方もいました。
歩いて見ることで、自分の中にある興味関心に気づき、今まで自分が見ていた周りの世界が豊かに見えてくる。Feel度Walkをしていると、これ気になる、もっと見たい、楽しい、おもしろい、不思議、なぜこうなっているのだろう、これはなんだろう…といろんな自分の感覚を呼び起こし、自分ってこんな感性を持っていたんだなと気づかせてくれました。
今回は、KTの肩書きであるジェネレーターについてお話しする時間が作れなかったのですが、そもそもジェネレーターって?もっと詳しく知りたい!と気になった方はこちらの記事もぜひ。市川力さんはFeel度Walkの発案者で、KTのお師匠さんです。
Feel度Walkを終えて、それぞれが自分の家に帰っていく。帰りの夕日がいつもより美しく見えました。感度が高まった一日。これまで自分が見ていた景色が、明日はもっとも〜っと豊かなものになりそうだ!