クリップケースを作る実験
昨年、実家にPrusaMini+を持ち帰った際に、妹にも3Dプリンタを布教しました。Fusion360でドアストッパーを設計したものをこちらで少々手直ししてプリントしてプレゼントしました。年末も3D CADとプリントをこれ見よがしにしていたところ、リクエストがありました。クリップケースで、指でクリップを引っ張り出せるものが市販であるので、2種類入るバージョンが欲しいなぁ、とのこと。
リクエスト、ありがとうございます!是非作りましょう!ってことで、妹の前でサクッと設計してプレゼントする!はずでしたが、時間切れとなってしまいました。大きさを決めて設計して試作したのですが、思いのほか小さくて指が入らない、ってことで、ちょっと試行錯誤しました。それを一応記録に残します。
目的と試験方法
使用したフィラメントはこれです。
結構かっちりしていて爪を立てても形が変わることはありません。
こちらは大理石っぽいフィラメントです。実は、積層密着度合いがあまりよくない感じです。
こちらは、実家に戻ったときに手持ちで持っていたフィラメントです。
ついでにPrusament PLAでもプリントしてみました。
4つの対称的なフィラメントを使用して作ってみました。
Fusion360でのデザイン
妹からのリクエストは、クリップを入れられる穴があり、底から指で引き出せる、クリップは2種類を収納したい、フットプリント効率を上げるために大きさは市販のものと同等にしたいというものでした。
やってみましょう!
こういう実用的なものを作るのは、回転や押し出しをうまく使いたいと思いました。というのも、おいたときの底の平面度合いなどがうまく取れず、最終的には底面をフラットにするためにカットしているからです。
しかしながら、リクエストを聞いているとちょっと無理そうだなと思いました。なので、Formで外形を採り、穴はロフトを使って空けるようにしました。
初めに作ったのはこちら。なんだか無機質な、私にぴったりの感じ。妹からは、もう少し丸っこくしたい、引っ張り出すところはここまで広がっていなくてもいいから、とのこと。そういうことは初めに言いなさい!
次に作ったのがこちら。かなり最終形に近いイメージになっています。
プリントしたのがこちら。かわいく仕上がったのではないでしょうか?ちょっとハート形っぽくて、でも甘すぎずいい感じ。
しかしながら大きな問題が。指が入らないのです。妹は大丈夫!と言ってくれましたが、形にはこだわれない私としては機能性が担保できないものは許せない!
なので、再設計することとしました。この時点で、妹は退出する(帰宅)ことになりましたので、後の作業は自宅に戻ってからとなりました。
というのも、やはりマグネットを仕込んで(実家にはマグネットはない)、とりやすいようにしたいという気持ちがあったためです。
ここで、ダイレクトドライブ化のために改造していたMini+が壊れました。ねじを締めたり外したりしていて(手順を適当にやっていて、間違って戻ること多々)ねじがメインボードの上に落ちて(メインボードからコネクタを外した時にふたを開けたままにしていた、多分これが原因でショート)うんとも寸ともいわなくなりました。
なので、あとは自宅に戻って試行錯誤することになりました。
J1の使いこなし
Snapmaker J1は、2021年のKickstarterでバックしていたもので、昨年中に届くはずが1年遅れで11月末に到着しました。まだこなれていないので毎日のようにFirmwareがアップデートされます。当然バグが残っていて、あれ?と思うとバグだったりします。
ということで、入手以降に陥ったトラブルを紹介します。
レイヤシフト
ファーストレイヤーが均一にならない(場所によって浮く場所がある。特に前方)
デュアルエクストルーダのシフト(x側は問題ありませんが、y側でシフトが起きる)
途中でポーズできない
レイヤシフト
キャリブレーションして、何プリントしようかな、と迷ってとりあえずプリントしたのがこれ。サポートの感じがプリンタによって変わることないだろうなと思いつつ、思いつかなかったのでこちらをプリント。
で、何度プリントしてもレイヤシフトする。こういうずれの場合、Mini+であればヒートベッドへの定着が悪いからってことで、プリントしたモデル自体がぶっ飛んでしまってずれるのですが、今回はエクストルーダがシフトした模様。同じトラブルが多発していたようで、フォーラムで対応方法を見つけました。
まずは、ファームウエアのバグがあるようですので、バージョンアップ。このころバージョンアップが一週間に何度もあったので、知らない間にバージョンが上がっていて、さらに修正箇所の詳しい情報がないので、デグレしない?って不安になりながらバージョンアップしていました。
問題はファームウエア以外にも、ベルトのゆるみも問題となっていたようで、ベルトの聴力を確認するモデルがファームのバージョンアップで提供されました。
Y軸は問題なかったのですが、X軸のベルトが緩んでいたので締めなおすことで無事レイヤシフトが治りました。
ファーストレイヤーが均一にならない
奥側はうまく定着するのですが手前が定着しないという現象が起きました。なぜ気が付いたかというと、プリントした作品の手前だけ浮く、手前のモデルだけ外れるということが起きました。試しにファーストレイヤーキャリブレーションのモデルをプリントするとこんなことが起きました。
現時点でマニュアルキャリブレーションが提供されていません。なので、オートキャリブレーションを使用します。
キャリブレーションはヒートベッド(PEIプレートを外した状態)上で実施します。
プリントする際には、PEIプレートを載せます。これがガラスでそれなりの厚みがあるので前方が沈んでいるようです。なので、前方の定着が悪いことになります。そこで、キャリブレーション(PEIプレートを載せる前)に前方にスマホを錘として置いておき、PEIプレートを載せたときと同じ程度の傾きとなるようにした状態でキャリブレーションをしました。
これにより無事、全面のレベルを合わせることができることができました。
デュアルエクストルーダのシフト
これは、今回の問題というより、干支モデルのプリントで発生したこと(デュアルエクストルーダを使用した時の問題)です。こちらもファームのバージョンアップで解消されました。
Aは右から見ても左から見ても柄の出具合が変わりません。
Bは右から見たところが赤い部分が沈んで見え、左から見たところ赤が少し飛び出して見えます。
エクストルーダ2側が1側より少しy軸のマイナス方向にシフトしていることになります。これは気が付いて何度かキャリブレーションしましたが解消しませんでした。ちなみに、はじめにキャリブレーションした時には問題は起きていませんでしたので、デグレードということになります。
途中でポーズできない
今回のモデルでポーズして途中でマグネットを入れようと思いましたが、J1で途中でポーズすることができませんでした。チャレンジしたコマンドはこちら。G4以外は止まりませんでした。G4では止まったまま再開(Resume)しませんでした。
M601: Pause print
M600: Filament change pause
M76: Pause the print job time
G4: Dwell
ということで、今回のJ1でのプリントは、マグネットを入れる瞬間(レイヤ、Gコードライン)をルバンスライサのモニタ画面を見て待ち構え、Pauseしてマグネットを入れました。
Fusion360での設計変更
すでに設計してあったので設計変更になりますが、指が十分入る大きさを確保し、内側もふっくらしたシルエットにしました。外径はForm機能で作り、内側のくぼみは主にロフト機能で作りました。
手前部分の穴がマグネットを入れる部分です。初めは1つだけにしていたのですが磁力が弱くて(使用したマグネットが弱かっただけかもしれませんが)クリップがくっつかなかったので、2つマグネットを入れるようにしました。そして、できる限り磁力を有効活用できるようにクリップを滑らせる部分に近づけるようにしました。
マグネットはこちらを使用しました。
最後のバージョンはSnapmaker J1とPrusa Mini+でプリントしました。
Prusa Mini+でM601で止まらず、結局M600(カラーチェンジ)で停止させてマグネットを挿入しました。
マグネットを挿入したら、磁力が強すぎてエクストルーダに吸い寄せられたので、マグネットを両面テープでくるんで脱落を防止しました。
出来上がったのがこちら。
プリント結果
モデルはこちらです。よろしければお使いください。
https://www.printables.com/model/375738-clip-holder-for-dual-size
もしかしたらTPUでふたを作るかも。持ち運びを考えるとふたが欲しくなりますね。