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あのとき、わたしの目は。

日曜の夕方、スーパーに行くと両手で葡萄のパックを握りしめた、ベビーカーに乗った幼い子とすれ違った

大好物なのかな?

なんとも微笑ましい

そして、きれいなきれいな紫色の葡萄

葡萄も植物だ、植物の色に勝るものはないと思う


数年前、視覚障害者のパソコン教室にボランティアとして月1回参加していた

ここは先天的に見えないのはなく、事故や病気などで後天的に見えなくなった方々の教室だった

基本、1人に1人サポートという形で基本的なパソコン操作をお手伝いし、ひとりでも使えるようになってもらうことが目的だった

月1回ということで、例えば12月だったら年賀状作成のお手伝い、なんて感じ

このときお手伝いさせていただいた方は、見えていたときに撮った写真を年賀状に使いたいとのことだった

フォルダの場所、保存してある写真のこと、記憶力のあまりのよさに驚愕したものだった


あるとき、「ネットショッピングがしたいの」という女性のサポートをすることになった

「編み物が好きでね、毛糸を買いたいの」

視覚障害者用のパソコンは自動で文字を読み上げてくれる

その補助をしながら欲しい色を確認していった

「ピンク、クリーム色、紫」

…紫

とても難しい色だ
赤っぽいのも紫だし限りなく紺色に近くても紫、明るいのも暗いのもある

人によって極端に思い描く色が違う色だ

「どんな感じの紫色ですか?」そう尋ねると

「きれいなやさしい紫がいいわね」

「赤紫?紺に近い紫?」ひとつひとつ確認しながら数点に絞っていく

そして、これが一番近いのかな?という色を選んでみた

「その色はどんな色?」と聞かれ、

とっさに「きれいな葡萄色です」そういってしまった

彼女はにっこり微笑み

「じゃぁ、それにするわ」


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地元岩手のベアレンビール

今時期だけ発売される『山葡萄ラードラー』
入手困難だけど今年も1箱ゲットした

きれいな紫色、泡まで紫、やさしいやさしい淡い紫色

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葡萄の季節がやってくるたび、思い出す

彼女の記憶の中の『葡萄色』とわたしが思い描いた『葡萄色』は同じ色だったんだろうか?

どうせ、見えなんだから気に病むことはない、そういう人もいるかもしれない

けれど、わたしはそうは思わない

一瞬でもわたしは彼女の”目”になったのだから

どうか、わたしの思い描いた葡萄色は彼女の葡萄色と同じでありますように


苦い思い出だ




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