『運転者』を読んだ感想
喜多川泰さんの『運転者』をちょうど今読み終わった。面白くてほぼ2日で読んでしまった。読んで興奮冷めやらぬうちに感想を書こう思う。
まず、この本を見つけた経緯だが、何か本を読もうと思ってKindleを漁っていたところ、おすすめの1番上に出てきたのがこの本だった。タクシーの絵が描かれた表紙に『運転者』と書いてあり、「運転手」の間違いでは?と一瞬思ったが、レビューを読んでみるとその題名の由来に納得できた。乗せたお客さんの運を転ずる者だから”運転者”という意味だそうだ。「なるほどな」と正直に思った。
個人的にいいな好きだなと思った言葉があるページには付箋をしながら読んでいたのだが、付箋をつける手が止まらなかった。
その中でも私が特に気に入った言葉をあげる。
「基本姿勢が不機嫌な人に、毎日の人生で起こる幸せの種を見つけることなんてできない。」
「痛みを経験して初めてスペシャリストになれる」
「誰かの努力、ひたむきな姿勢は、他の人に幸せをもたらす力があるということです」
「実際に今の自分がやった努力の成果が自分に対して表れるのは、普通の人が考えているよりもっとずっとあとになってからです。」
「本当のプラス思考というのは、自分の人生でどんなことが起こっても、それが自分の人生においてどうしても必要だから起こった大切な経験だと思えるってことでしょう」
他にもいい言葉はたくさんあったが、他の人もよく取り上げているものが多いので省略する。
”運”についての解釈を一新させられた。
「運は〈いい〉〈悪い〉ではなく〈使う〉〈貯める〉で表現するもの」「先に〈貯める〉があって、ある程度貯まったら〈使う〉ができる」「〈運がいい〉と思われている人は貯まったから使っただけ」
この考え方は新しい考え方でありながら、しっかりと筋が通っており誰もが聞いて納得できる点が素晴らしいと思った。
「もっと長い目で見たら、報われない努力なんてないんですよ。あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを期待しすぎているだけです。今日頑張って明日実になるなんてどんなに早く育つ種でも無理なことですよ」
この考え方も当たり前なことなのに、ハッとさせられた。当たり前のことを違う視点から表現するとこう言えるのだなと。
あと、私が読後感が良いと思った理由の1つは最後の終わり方である。
それまでずっと修一目線だったのが、最後は妻の優子目線になる。修一がギターを持って帰って来たとき、解約の件を話すときなど不機嫌になる優子の反応を予想していたのだが、どれも反してそんなことはなかった。私も読んでいて、優子自身にも考え方が変わる何かきっかけがあったのだなと思ったが、まさか優子もタクシーに乗っていたとは思わなかった。それで、その乗車中に運転手によって語られるある家族の話が修一たちの未来の話だというのは素敵だなと思った。そして、最初のシーンの伏線の回収の仕方も良かった。
やはり終わり方が素晴らしい作品は、小説にしろ漫画にしろ、読者の心に爪痕を残し心の中でいつまでも生き続けるのだと思う。
私も「ついてないなあ」と思わず考えてしまいそうになった時は、この本で出会った言葉を思い出そうと思う。