読書記録2 安藤祐介『本のエンドロール』
読書記録第二回は
安藤祐介『本のエンドロール』(リンクは講談社BOOK倶楽部の『本のエンドロール』紹介ページに飛びます)
です。
感想を書こうと思っていた分はこれでラストで、10月は読了本がまだないので、しばらく小説の読書記録の更新はありません。
安藤祐介『本のエンドロール』とは
あらすじ(文庫版裏表紙より引用)
本の奥付に載っている会社名の後ろには、悩みながらも自分の仕事に誇りを持ち、本を造る「人」たちがいる。豊澄印刷の営業・浦本も、日々トラブルに見舞われながら「印刷会社はメーカーだ」という矜持を持ち、本造りに携わる一人。本を愛する人たちの熱い支持を集めた物語が、特別掌編を加え、待望の文庫化!
こちらの作品は、2018年3月に講談社から単行本として刊行され、2021年4月に文庫化されました。
私が読んだのは文庫版です。
とっても素敵な本だったので、早速感想に入りたいと思います。
安藤祐介『本のエンドロール』感想
この本を知ったのは書店でした。詳細はおぼろげですが、この作品を紹介するPOPが印象的だったように思います。その時は購入を見送り、Twitterでの評判が良かったので購入に至りました。
私たちが普段読んでいる様々な本は作家と出版社さえあれば書店に並ぶわけではない、というのを再認識させてくれる本でした。考えてみれば当たり前のことなのですが、当たり前過ぎてその存在と大切さを忘れてしまうというか。
本に関する作品に初めて触れたというわけではありません。ドラマ版の重版出来や塩田武士『騙し絵の牙』など出版社や編集者にスポットを当てた作品には触れてきました。どちらも大好きな作品です。
今回読んだ『本のエンドロール』は本造りの過程の中で主に印刷会社にスポットを当てた作品です。
私は正直、メインの登場人物である浦本という豊澄印刷営業の男性が苦手でした。出版社の無理な注文を突っぱねることなく受け、印刷工場の人たちにその無理を押し付ける。申し訳なさそうな態度はしているけれど、私ならこの人とは働けないなあ、と少し思ってしまいました。
この浦本が苦手で、前半部分で脱落するのではないかと思いました。でも、周りの助言を受け入れながら段々と成長していく姿をみて次第に応援したくなりました。
この作品に出てくる登場人物はみんな右肩下がりの出版業界で右往左往しながら頑張っています。そんな姿に心打たれました。
本編を読了すると、文庫版特別掌編の後のページに映画のエンドロールのようにきちんとこの文庫の製作に関わったスタッフの皆さんの担当・名前・所属が書かれていることに対し、涙腺を刺激されました。
あと、使われた用紙や印刷の加工についても表記されていて、胸にグッとくるものがありました。ニクい仕様ですね。
月並みの言葉になってしまいますが、もっと本を大切にしようと思える一冊でした。
読書が好きな方でまだこの本を読んでいないという方、是非とも読んでみてほしいです。
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