嘘は墓場まで持って行くって言ったのにバラしちゃうのは、それもまた嘘付きじゃないかしら

『嘘を付いたら墓場まで』
そうオランダ姓の彼は
いつも言っていました。

10代からの初恋で20歳で大恋愛をし
これまた派手に裏切られた人で
嘘って事に凄く敏感に反応する人でした。

恋愛に対して
何処か臆病で
だから本気になるのが怖くて
チャラチャラとした恋愛ごっこしか出来ない
思い切り自己防衛の恋愛的真似ごと。
それは私も同じでした。

私が留学生という立ち位置で
一時的な恋愛ごっこでなく
将来を考えた
本当の恋愛にしようと
2人で決めた日から
彼は『嘘を付いたら墓場までな』と
ずっと言い続けていました。

私は英語で流暢に嘘がつける訳もなく
ハイハイと聞いていたのですが、
ある日のお陰で
私の英語力、主に喧嘩が激しく饒舌になった
きっかけがありました。

それは私がルームメイトの子と一緒に
バンクーバーアイランドに出掛けた時でした。

朝早起きして
フェリーから見えた鯨に大興奮して
綺麗な街並みや公園が楽しくて
夜に帰りのフェリーから彼に電話を掛けました。
『今、帰りだよ』と。

すると
『今日は大学時代の友人達と飲んでいるから』と

その頃はまだ別々に住んでいたので
そかそか、気を付けてーと
それで終わっていたのです。

私もルームメイトも朝早くから出掛けて
夜遅くに帰宅して
そのままぐっすり眠って
彼には今度会った時にでも
色んな話をしてやろうと、
そう思って1日を終えました。

次の日に電話があって
『昨日飲んだ友達がNorikoを紹介しろって』と
急遽ホームパーティに呼ばれて
誰だろうなぁと思う人と
変わるがわる自己紹介をし合って
食っちゃべる。

彼にも話しましたが、
これが初期の私の1番の苦行でした。
まだカナダ生活1年にもならず
英語もままならない頃
頭上で飛び交う英語の会話について行くのは
本当にキツかった。
1対1の会話ならともかく
大人数となると難しくて
『お喋り好きのNorikoがどうして俺の友達や家族とは話をしないんだ！嫌いなのか！』と
ガチの喧嘩になった事もあります。

心底大変なんだよと話して
『あぁ、そうか』と納得されても
そんな機会は多くて
この日も何を食べたんだか
エヘラエヘラと愛想笑いに疲れ果てて
帰宅しました。

自分から飛び込んだとは言え
何を言ってるのかサッパリの集団に混じるのは
疲れます。
先日、バンクーバーアイランドで買った
お土産を渡すと私は無言になってしまいました。

『散歩に行こう』と空気を変えたのは
彼でした。
一緒に
少し肌寒くなったイングリッシュベイ沿を
歩きながら
私は少しずつ元気になって
フェリーから見た鯨の事や
レストランで食べたパスタが美味しかった事を
話したのです。

『夜の飲み会は楽しかった？』と聞くと
携帯の写真を見せてくれました。
コレが誰々、コレが今日会ったやつで・・と
話していた彼が突然黙り込みました。

そして
『ごめん、俺、嘘付いてる』と。

私は反射的に
いつも彼のパーカーのポケットに入れて
繋いでいた彼の手を振り解きました。

彼も嘘を付けない人でした。
あの日の夜に何かあったな、というのは
何となく感じていました。
あの電話の時の声、
今日の態度。
私が今はカナダの姉と慕う
彼の元彼女の事です。

お互い恋愛感情が無く
それでも一緒にいた2人で
正式に別れた後、彼女はとても精神的に不安定でした。
2人がどうのこうの成る訳では無いので
私は彼が彼女に会う事を
否定も拒否もしていませんでした。
何なら不安定な時は会ってあげてと
話していたのです。

彼が話さなくても
私は気が付いていた。
彼があの日、彼女から連絡があって
一晩中側にいた事を。

『何で言うの？』
『嘘付いたら墓場まで持っていけと自分が言って
なぜそれすら守らないの？』

とにかく
当時私の知り得る言葉の全てを使って
彼を責めた事を覚えています。

『ガッカリした』
そう言った私に彼は怒ったように言いました。
『Norikoも、そこら辺の女と同じ様な事言うな』

もう意味不明な喧嘩でした。

元彼女と仲が良くって
私の事も可愛がってくれていた
彼の幼馴染が中に入ってくれて
私たちは仲直りをしたのですが
思えばよく喧嘩をしたなぁと。

言葉で上手く説明出来ないから
感情だけが空回りして
よく私なんかと一緒にいてくれたなと
思います。

お互い似たもの同士で
面倒臭いやつで
我儘で意固地なくせに
寂しがり屋。

先に死ぬのはズルいです。
良い思い出しか残らないから。

この20年間で夢に見たのは数回だけ。
一昨日、久しぶりに夢で話した彼。
懐かしくて嬉しかった( ´ ▽ ` )

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