【3-10】はちみつを搾るまであと少し(~789目)
ミツバチの分蜂
去年は少し心許ない状況だったけれど、今年は新しい群を導入したので何とか元気に過ごしている。
正直に言ってしまえば、自力で強群を仕立てたとは言えず、養蜂家と名乗るなんておこがましすぎる状態。
それでも、元気に飛び回るミツバチを眺めているときは、至福のひとときであることに変わりはない
最近みつばちの分蜂が世間を騒がせている。
養蜂場で管理されているミツバチも、同じことが起こりうる。
そのため、分蜂防止のために女王蜂の羽を切って、飛び出すのを防いだり、分蜂熱が高まってきて、王台を作る群の王台を切り落としたりするなど、様々な対応をする。
私も色々と対応をして、分蜂されることの無いようにお世話をしてきた。
はずなのに…。
内検をしようとすると、どうも様子がおかしい。
「ざわっ」と嫌な感じがする。
この感覚が何から来ているのか説明できないんだけど「嫌な感じ」がすると、何かが起こっているのは確か。
虫のしらせってやつは科学的に説明できると思っているけれど、私の知識や技術がそこまでに達していないので、これを解明していくのも今後の課題。
蓋をあけると、上段にもたくさんいたミツバチの姿がない。
いーやー!!!
頭の中真っ白。
慌てて下の段の様子も確認する。
女王がいない!いなーいーーーー!!!
どうやら分蜂されてしまったようなのだ。
ようなのだ、じゃないんだよ…。
ちょうど半分くらいの働きバチを連れて旅だってしまったようなのだ。
ようなのだ…。
周囲を見渡しても、その影も見えず。
内検をせずとも、かなりの頻度で養蜂場に足を運び、ミツバチの様子をマメに観察してきたつもりだったのに(泣)
プラスに考えれば、去年までは分蜂されてしまうほど元気な群になっていなかったわけで、ようやく分蜂されるくらいの群に育てられるようになったのだ、ともいえる。
元気がなければ分蜂しない!
とはいえ、ここから一ヵ月くらいで蜜を集めまくってもらう最高潮になるはずだったのに~。
ずっと一緒にいるって言ったじゃない泣(言ってないけど)
どれだけ手を尽くしても、愛情をかけても、ミツバチはこちらの気持ちなんてどうでもよくて、自分たちが生きるためにすべきことをする。
そんなミツバチと触れ合っていると、人間に対しての接し方も少し変わってくるような気がして、物言わぬ彼らに学ぶことはとても多い。
ほんと、いろんなことがあるなぁ。
いのちがけ
ミツバチは、一つの群で一つの生命を維持している。
群れの中に女王が1匹いて、その女王がいなくなると群れは崩壊する。
群れは女王を中心とした細胞のように、互いを補い合う。
外敵が現れると、自分の身を犠牲にして攻撃をして群れを守る。
その針はお尻の毒袋と一体化していて、刺せば針ごと身体から切れてしまう。針が切れたミツバチは、敵に痛みと羽音とをリンクさせて記憶させて恐怖心を植え付けるかのように、ブンブンと警戒音を立てて飛び回り、死んでゆく。
ミツバチのお世話をしていると、どうしても刺されてしまう事がある。
手袋をせずに、ミツバチを潰すことのないように、丁寧に作業をするようになっても、どうしても潰してしまう事がある。
一匹ミツバチを潰してしまうと、仲間の危険を察知して周囲の働きバチも怒り出す。
なので、時間はかかるけれど、なるべくミツバチを怒らせないように作業をする。
本当ならば、自分たちのために集めているはちみつを、分けてもらうのだから、できるだけストレスを与えずに過ごしてもらいたいと思う。
それだってきっと、ミツバチにしてみたら、そんな人間の気持ちなんて知ったこっちゃないんだろうけれど。
はちみつ搾るまでもう少し
ミツバチ達が集めてくる花粉を見ながら、どんな花から蜂蜜を集めてくるのかを見ている。
真っ赤な花粉はトチの木のようだ。
周囲の山を眺めて歩きながら、花の咲き具合を確認して回る。
アカシアが咲きだしているので、ここからがピークになっていく。
来週少し雨が降るらしい。
集めた蜂蜜をミツバチが羽で風を送って乾燥させて糖度を高めて蓋をする。
そうしてようやく、完熟した蜂蜜が完成する。
はちみつが溜まって蓋をし始めた巣枠を抜き出して、蜜を搾る。
今年のはちみつに会えるまで、あと少しだ。
ワクワクする。