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クリスマスケーキを買いに行ったら裁判になった話 1

もう10年以上前になるだろうか。
当時付き合っていた彼女と、クリスマスケーキを買いに行ったときのことだ。ケーキ屋の駐車場で車同士の接触事故を起こし、一年後、事故の相手と裁判で争うことになった。

当時付き合っていた彼女とは、車で1時間ほどの距離の、遠距離(?)恋愛をしていた。クリスマスイヴの日、その彼女とケーキを買いに、彼女の家の近くのケーキ屋に向かった。12月下旬、クリスマスともなると、かなりの雪が積もる。この日も大粒の雪が降っていた。

ケーキ屋の駐車場は、案の定ケーキを求める人たちでごった返していた。空きを探して駐車場のなかをぐるぐると走っていると、右手に一台分だけ空いているところを見つけた。バックで駐車するために車を右に寄せつつ一度通り過ぎ、ハザードを焚く。「ここに停めますよ」という意思表示のためだ。ギアを「R」に入れ、ゆっくりと、ゆっくりと後ろを確認しながら、ハンドルを右に切り駐車していく。ルームミラーとサイドミラー、さらに目視で直接後ろを確認しながらじりじりと車を後退させる。ちょうど後輪が駐車スペースに入ったころだった。

ゴンッ!と鈍い音がした。
振り返ると、今までいなかった軽トラがそこにいた。車を降り、状況が飲み込めず呆然と立ち尽くしていると、軽トラの運転手も降りてきた。おじさんだった。50過ぎくらいだろうか。昔のヤンキーのような、黒地に金色のラインが入ったジャージを着ていた。

第一声が「あーあ。」だった。完全に「あーあ(やってくれたな)」と取れるニュアンスの言い方だった。おじさんはぶつぶつとなにか言いながら、ぶつかった箇所の確認に向かった。2台の車の間にしゃがみこみ、軽トラの左横腹をさすっている。軽トラにはたいした傷はないように見えるが、自分の車は左後ろのバンパーがべっこりとへこんでいた。

ようやく状況が飲み込めてきた。
バックで停めようとしていたところに、無理に割り込んできたに違いない。憤りを感じながらも「怪我はないですか」と聞くと「ないけど」と太々しい態度。さらに苛立った。お前が割り込んできたんだろう!と吐き捨てたくなる気持ちを必死におさえ、車内へ戻り110番に電話をかけた。

「事件ですか?事故ですか?」と聞かれ、事故です、と答えたあと、事故が起こった場所と状況を説明する。怒りからか恐怖からか、携帯電話を持つ手が震えていた。お互いの車が自走できることを伝えると、最寄りの交番に向かうよう指示された。通話を終え、おじさんにそのことを伝えると、あからさまに「めんどくせえな」という態度を顔と行動に出しながら軽トラに乗り込んだ。

軽トラを追走し、交番につくと、それぞれに警察官がつき対応した。交番のはじとはじ、席を離されて事故の状況説明と、書類の作成にあたった。「交通事故証明書」なるものの交付に必要らしい。住所や名前、事故の状況などを書き込んでいると「停めようとしていたところにバックで突っ込んできた」と向こうの方でおじさんが言っているのが聞こえた。反射的に「いや、突っ込んできたのはそっちの方でしょう」と声を荒げると「まあ、落ち着いてください」と警察官に制された。喧嘩になるからこうやって席を離してそれぞれ対応するのか。なるほどな、と思った。

手続きを終え、お互いの連絡先を交換し、交番を後にした。今後は「物損事故」として、お互いの加入している保険会社を介して話し合いが進むらしい。

「ああ、こりゃあ面倒なことになるぞ」と、この時すでに思い始めていた。


つづく。


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ヤサグレフクロウ
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