デジタルネイティブ世代の貯金箱と、5歳児のお小遣いルール
我が家には、黄色いゾウがいる。
置物ではない。これは、5歳10か月の娘の貯金箱だ。
振るとチャリチャリーンとお金の音を響かせるかわりに、「パオオーン」と鳴く。そして、胸の部分に「貯金額」があらわれる。
この数字は、娘の銀行口座と連携している。表示されているのは、銀行口座の金額だ。モバイルバンキングで、お金のやりとりができる貯金箱なのである。
これを見たとき、デジタルネイティブ世代は貯金箱までも「電子」なのかと衝撃をうけた。使ってみると大変便利な代物なので、せっかくだから我が家のお小遣いルールとともに、紹介しておこう。
銀行口座とつながった貯金箱「Clever Kash(クレバーキャッシュ)」
この黄色いゾウの貯金箱は、その名も「Clever Kash(クレバーキャッシュ)」。ニュージーランドの銀行・ASBが、子どもたちに無料で配布している。
2015年からはじまり、すでに6万5000台が国内で提供された。中国・広州をベースとするTody Financeが技術ライセンスを持ち、今後は中国の40を超える銀行でも展開予定の話があるなど、なかなかすごいゾウなのだ*。
対象となるのは、ASBに口座を持っている3歳~12歳の子どもたち。我が家は、娘が4歳になるときに店頭でもらい、5歳を過ぎてから使い始めた。
使い方はいたって簡単。娘の銀行口座と黄色いゾウを紐づけるだけ。設定はモバイルバンキングのアプリから、3分で終わる。
ニュージーランドの銀行口座は、未成年の銀行口座を親の口座に紐づけられる。私がモバイルバンキングのアプリにログインすると、娘の口座も表示される。
この黄色いゾウの優れた点は、「管理がものすごく楽」だということ。
娘の黄色いゾウへお小遣いをあげるのは、モバイルバンキングを通じて行う。10セントから移せるので、小銭を探す必要がない。ボタンひとつで、完了。大変手軽でよい。
いくら貯まったかを、すぐに確認できるのもポイントだ。貯金箱をひっくり返して、小銭を数える必要がない。ゾウの胸に表示される数字が大きくなっていくのは、見ているだけで楽しい。
また、子どもが勝手に持ち出せないので、「貯まりやすい」という利点もある。
電子ながら、「お金」にこだわったつくり
ぜんぶがネットで完結するなんて、お金のありがたみがわからないんじゃないかしら……みたいな心配をする人もいるだろう。
輝く100円玉や、大きな500円玉を手にしたときの喜びを味わえたほうが楽しいのかもと、私も思ったりする。
この黄色いゾウは、そんな心配に応えてちょっとした仕掛けを用意している。
ゾウに表示される金額は、自動ではアップデートされない。かならず、モバイルバンキングで更新をする。そのさい、未更新の金額をコインやお札で黄色いゾウに振り込むことができるのだ。
小銭をスワイプすると、チャリンチャリーンと、小気味のよい効果音もついてくる。
我が家では、お手伝いをしたあと娘にお小遣いをあげる。モバイルバンキングでお金を口座に移したあと、アップデートするのは娘の担当。
1回のお小遣いはだいたい50セントだ。それを、アプリ内で10セントコインで5回、ゾウの貯金箱に入金する。たくさんコインを投入できて、娘も楽しそうである。
5歳児のお小遣いルールは「ちゃんと」お手伝いができたら
我が家では、娘がお手伝いをしてくれたら、お小遣いをあげる仕組みを運用している。
ただし、「遊んだあとのお片付け」「帰宅後、お弁当箱を出す」「脱いだ服を洗濯カゴにいれる」といった、自分の身の回りのことはお手伝いの対象外。なんとなくだけど、お手伝いは娘のいまの能力で、ちょっと頑張ってできることを設定している。
そして、「最初から最後までできたらお小遣い」というのもポイント。ごはんの準備に「お箸を並べた」だけでは、お小遣いはもらえない。
マットをセットし、お皿とお箸をならべ、コップにお水を入れ……と「ごはんが食べられるようになるまで」手伝って、はじめてクリアという感じ。
娘は、集中するときはひたすらやるが、飽きっぽいときは続かない。とくに、夕方の疲れているときはダメ。「お手伝いしたい」とやってきたから「じゃあ、テーブルを拭いてね」とお願いしたのに、半分だけふいてテレビを見ているなんてこともザラである。
中途半端なお手伝いだとお小遣いはもらえないため、5歳から開始した娘の貯金合計は8ドル。だいたいが20セント~50セントのお小遣い。月に2~3回もらうスローペースだ。
生きていくのに必要な家事と、お金をもらえる労働を区別したい
お小遣いがもらえる対象のお手伝いを、ちょっとハードルの高いものにしているのは、生きてくために必要な家事スキルと線引きをしたい親の気持ちがあったりする。
身の回りのことは、お金がもらえなくても、よく生きるためにやらなければいけないことだ。それを、娘に誤解してほしくない。
もっというと、お皿洗いも、トイレ掃除も、家事はすべて生きていくのに必要なものだ。「お金をもらえないなら、やらない」は通用しない。そういった意味で、お手伝いとお小遣い制度をわけるというのも、ひとつの方法だと思う。
でも、我が家では娘が家事スキルを身に着けるのに、やる気を出すなにかがあるといいなと思った。それが、いまやっているお小遣いルールになった。ちょっと頑張ってお手伝いしたら、ほめられてお小遣いがもらえる。本人もうれしくて、やる気になる。
なんでもかんでもお小遣いがもらえるわけではないと娘も理解しているため、「お手伝いしたからお小遣い!」とねだってきたりはしない。今のところは、娘にはこのルールがちょうど良いと思っている。
年齢とともに変わる、お小遣いルール
とはいえ、中学生になって「ごはん前の食器並べ」だけでお小遣いをあげるのは甘いなと思う。だから子どもの年齢とともに、お小遣いルールも変えていけたらいいなと考えている。
いまはまだできない、トイレ掃除やお風呂掃除もそのうちお小遣いの対象になるだろう。芝刈りや庭の草むしりも立派な労働になる。
16歳になったら、外でアルバイトもできるので、お小遣いとお手伝いを完全に切り離すのもいいんじゃないかと思っている。18歳になれば、たいがいの子どもは家を出るニュージーランド。そして、友人たちとシェア生活をはじめる。
そこから他人との家事分担を学ぶのだろうけど、それまでに一通りの家事スキルを教えてあげたいなあ。これは男女関係なく、よく生きるために身に着けたほうがいいものだから。
とりあえず次のステップは、「お金の使い道を考えて決める」かな。10ドルたまったら、こんなのが買えるよと娘に教えてあげよう。どう使うか、決めるのは彼女次第。
いつもは食べられないダブルのアイスクリームを買うのもよし、キラキラの髪飾りを買うのもよし、全額もってゲームセンターで遊ぶなんてのもある。
使って大満足かもしれないし、もっと欲しいと思うかもしれないし、こんなの買うんじゃなかったと後悔するかもしれない。
それもひっくるめて、たぶんお金との付き合いかたを学ぶことなのだ。
まあなにより、自分で稼いだお金を使う喜びがある。いまはまだ、黄色いゾウのお腹にただ表示されている数字だけど。そのお金で、なにが手に入るのか。楽しく付き合っていってほしい。
〈参考〉
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