どれだけ大人になっても
カーテンから朝陽が差し込んでる。
運命の日はいつも快晴。
シリアル、牛乳。簡単な朝食をかきこみながら、電話したい衝動をおさえる。彼女の朝はいつもゆっくりで、きっと、あのやわらかい部屋でまだ夢のなかにいる。
すっかり待ちくたびれた旅行鞄を持って、外に出た。ひらり、と桜の花が舞う。彼女が生まれた日も、春がこんなに祝福してたのかな。
出会って3回、歳を重ねる彼女に何を話そうか。
ほんとうは、とっくに言葉を決めている。
でも、僕の脳は3か月前に髪を切った彼女のうすい鎖骨や、なにも塗られていない透明な唇を繰り返し思い出してしまう。
たしかな笑顔を期待して、臆病な心臓が跳ねる。
何十回と、鞄のなかの小さな箱の中身を思う。
携帯が、ふるえた。
『おはよう、待ってるね』
文字が躍っている。言葉を打った彼女の白い指。きっと、似合うと思う。
この先も彼女の側にいたいから。
ずっとずっと、僕は君に夢中だ。