友達の涙で泣いた日
「樋口可南子さんに似ている」と、言ってくれた友達がいた。自分ではわからなかったけど、他のひとが見ていないところを認めてもらったようで、なんだか嬉しかった。その友達が今日、結婚した。
高校時代、派手に遊ぶでもなく、スポーツや勉学に燃えるわけでもなく、独自の世界に地味に情熱を傾けながらときどき寄り集まっていた私たち。その程よい距離感をとりなれているおかげで、結構な年数会っていなかったのに空白を感じなかった。教会式、扉があいた瞬間に、微笑んでお父様と並んで立っている姿をみたとき、この美人は誰だろう、とは思ったけれど。
修学旅行を思い出した。浮かれて沖縄に行ったものの初日から記録的な大雨で、することがなさすぎてホテル内のプリクラ(世代!)のフレームを撮り尽くしたこと、部屋にお化けが出たのでツインの部屋に6人くらいでぎゅうぎゅうになって眠ったこと、屋台で買ったアイスクリームが早回しのように溶けていくのがおかしくてげらげら笑ったこと。彼女と一緒に過ごした濃厚な時間。きっと私たちは今までもこの先も、一緒に旅に出ることなどしないだろうなと思う。
その修学旅行の懐かしい写真がスライドで流れて、ああ同じように楽しく思い、覚えていてくれていたんだなと嬉しかった。20年近く経つのに、私が同じ髪型をしていて爆笑。変わらないねといわれ、私もそう思うよと答えた。
笑いがいっぱいで、あったかくて、とても良いお式だった。
彼女の涙をはじめて見た。
おめでとう。
樋口可南子さんに似ていると言われた件、残念ながらあの美人女優さんと顔立ちはまったく似ていない。ただ得体のしれない凄みを覚える雰囲気、ものすごい迫力と情熱を秘めている静かな穏かさは、たしかに似ているのかもしれない。
今よりももっと自信がなかった頃、外側でなく内側を見て一緒にいてくれた当時の彼女に、改めてありがとうと言いたい。