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《記録》3/30 にちようびのアトリエ「どうぶつたちのいるところ」


この日のワークショップ、タイトルは「どうぶつたちのいるところ」。
6歳のふたりが来てくれました。

事前にこちらで決めていたテーマはふたつ。
◯図鑑や絵本のなかの動物を、見て、描いてみること。
◯ハサミやのりを使って立体的に作品をつくってみること。

それ以外は、こどもたちの心の動き、手の動きに任せて、進めていきます。
あとからその過程をふりかえって、気づいたことを書きました。


描いたことがないものを描くって?

動物の絵本や図鑑をパラパラとめくりながら待っていると、ひとりの子が「動物を描いたことがないんだ」と言いました。

いつも、こういうひとことを聞くとハッとします。
わたしは大人で、たくさんの記憶の蓄積で生きている。そんな大人の、「知っている」前提で、こどもたちに話をしてしまっていないか。こどもの前に立つとき、彼らはそうではないことを、わたしはどこかで忘れてしまってはいないか。

まず、ひと呼吸。
こちらの思い込みをほぐしながら、話しかけてみます。なんにも持たない彼らに尋ね、ちいさなやりとりをかさねて。やわらかな心は動きだすでしょうか。


選んで、決める


「動物園、行ったことある?」
― あるある〜
「どんな動物がいた?」
― ゾウとか…
― なんだっけ?忘れちゃった。



「えーっと、この生き物、なんていうんだっけ。知ってる?」
― トカゲじゃない?
― ワニだよ!
「えー、これ、ヤモリっていうんだって」
― うそー、こんな色してるんだ!
― きもちわるーい!

動物の絵本や図鑑を見ながらの、動物あてクイズ。
ページをめくるごとに気持ちがほぐれて、こどもたちは、動物のなまえや動物園で出会った生き物を、自然と思い出していました。

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そのときには、ひとりの子は、ネコとハムスターを描くと決めていました。
最初から決まっていたのかな、と思えるようなキリッとした横顔。そのときは言葉にならなかっただけなのかもしれません。それから、「わたしのママはゾウが好きなんだよ」と笑って教えてくれた。

もうひとりの子は、ネコとリス。図鑑でリスを見つけて、気に入った様子。木を登る、雑木林を駆ける。そんなリスの写真の中から一枚を選びました。

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手のことば

選択肢がたくさんある、ということは、迷うこととセットです。
そう考えると、「好きな動物がいない」、「描きたいものがない」と言っていたのは、もしかしたら<迷ってる状態>だったのかな、とふと思いました。そのことがわかるまで「選ぶ前から、なんだか諦めているのかしら…」なんて思っていたわたし。でも、そうではなかったのですね。

描きたいのだけれど、どう描いていいのかわから「ない」。
伝えたいのだけれど、どういう言葉で伝えたらいいのかわから「ない」。

それは「ない」のではなく、「わからない」ということ。

「わからない」という言葉はとても便利です。大人たちがそうやって多用しているのを、こどもたちも聞いて、こうして容易く使うようになっているのでしょう。

だからここでは、違うことばを使います。

それが、手を動かす、ということ。
手に聞いて、手に動いてもらう。

絵の具をぽとり。
ハサミでじょきじょき。
手を動かして、くすくす笑って、ぺちゃくちゃおしゃべりをしていたら、ふしぎと気持ちは素直に声になる。心が動きだすと、手ものびのび動きだす。

― これ、やだなぁ。こういうふうにしたいんだけど。
― ……(夢中になっている)
― あ、いいこと思いついた!

そうそう、その感じ。
まずはなんでも、やってみよう。わからなかったら、聞いてみよう。言ってみると何かが動きだすから。やってるうちに、なんだか楽しくなってくるから。

安心できない場所では、こどもの心はあっという間に固まってしまう。
だから、まずは安心して、のびのび手を動かせる場所を。なんでも言えて、なんにでも挑戦できる場所を。

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