”強さ”について考えさせられた作品:湯を沸かすほどの熱い愛
公開中もずっと行きたかったのに、劇場に見行くことができなかった作品。ついにamazon primeに登場!ということで鑑賞。
結論、ただの感動映画ではなく、非常に色々と考えさせられた作品でした。ストーリーだけ見るとイマイチなところもあるのですが、各キャラクターの生き方、人としての強さ、そのあたりにとても魅力を感じました。多分人生で一番泣いた。
以下ネタバレ含みます。
まず一番に感じたことは、辛い経験をした人は強い、という使い古された言葉の本質。
結果論は確かにそうかもしれない。でもそれは、辛い経験をしただけで自動的に強くなれるわけじゃない。きっと、辛いことに負けないように、強く生きる努力・負けない努力を強いられた、あるいはせざるを得なかった結果、なのだと思う。
杉咲花演じる安澄は、いじめ・蒸発した父、育ての母の余命宣告と死・生みの母との出会い、新しい妹、、、と様々な辛い経験をする。最初はすべてから逃げようとしていたが、育ての母・双葉がそれを許さなかった。強く生きることを強いられた。そして本当に強くなっていく様子が伝わってきました。花ちゃん演技上手だった。
16歳の高校生が抱えるには重すぎる苦難。でもそれを乗り越えなければならなかった。辛い目にあっている人が、さらに辛い思いをしながら、強く生きないといけなんて、人生って本当に不平等で酷だなあ、そう思わずにはいられませんでした。
また主人公である母・双葉も、夫が蒸発し、娘がいじめにあっているのを知りながらも学校に行かせ、突然あと2ヶ月という余命を言い渡される。夫が別の女との子供を連れてくる。そんな辛い出来事の連続。すべてを乗り越えていく人としての強さ・家族への愛を目の当たりにして、心が痛かった。
強い家族愛をテーマにした作品だった、と一言では片付けられないほどのいろいろなテーマを包含した作品でした。
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話は逸れますが、こんなに女性進出が叫ばれるこの時代でも、昨今のドラマ・映画、特に恋愛作品の文脈から見ると、”強い女性”って生きにくい、そんな描かれ方が多いように思います。女性には隙が大切、可愛げが大切・・確かに、それは女性の私から見てもそう思います。
でも、強く生きることを強いられてきた人が、そんなに上手く立ち振る舞えるのだろうか、という違和感がいつもついてまわっていました。過去に辛い経験をした人は、例え乗り越えたとしても、時が経ったとしても、そのことを思い出すだけで涙が出ると思う。そんな経験をした人は沢山いると思います。そんな思いに蓋をしようと必死で強く生きる女性(女性に限らないかもしれませんが)って多いのではないだろうかと。思い出すと同時に、自分の中の弱さを感じて、それを隠したいと思って、また強くなろうとする、それって結構誰でも経験したことあるんじゃないかなと。
この映画を見て、ああ自分は意識下で、必死で強く生きる努力をしいたんだなあ、と感じると同時に、強くいることを肯定された気がして、それがさらに涙につながったような気もします。
なのに、どうしてそれが女性性という文脈で語られると、時に強い女性は否定的に表現されるのだろう。ここ数年感じていた”強い女性観”への違和感の正体がわかったような気がしました。
双葉さんのためになんでもしてあげたいと思うのは、それ以上に双葉さんがなんでもしてくれているからだろう
ラストに出てきたこの言葉。強く、強く生きていきた女性にとってはものすごく幸せな言葉なんだろう、そんな気がしてとっても印象に残りました。
いろんなテーマを扱った作品でしたが、そこが一番心に響きました。