理系も知っておきたい事業資金と貸借対照表の関係
前回はこちら:
資金調達のアドバイスをしていた関係で負債による調達を知ってもらいたく、前触れもなく負債のことをポストした。一度記事を見直し、そもそも、事業に供する資金と貸借対照表の考え方を知っておくことは理系の事業家には良いと考え、基本的なところをまとめてみる。
他人資本と自己資本
事業資金には、負債が含まれる他人資本と株式による調達が含まれる自己資本がある。負債が他人資本と呼ばれる理由は、文字通り他人が投じた資本(~事業に使用するお金)のためである。一方、株式などを通じた資本を自己資本と呼ばれる理由は、株主が会社の所有者であり、その所有者が自分の会社に投じた資本のためである。株主は会社の所有者のため、起業した会社に外部株主がいれば、その会社の一部はそれら株主のものということになる*。よって、会社の所有者である株主に会社を操作する権利が付与されることは不思議ではないであろう。
*感情的には、会社への資金拠出のみで、自分の会社づらされるはつらいかもしれませんが。
株式による調達の怖さ(負債の可能性を伝えたかった理由の一つ)
株主=会社の所有者は理解できたと思うが、株主が会社を直接経営するわけではなく、所有者として権利があることになる。それらの権利にはお金にまつわる自益権と企業を操作*する共益権がある。
*正確には経営であるが、経営を日々の事業運営と定義したほうが分かりやすいと考え、ここでは操作とする
自益権は、会社の利益の分配(配当)と会社が解散時の他の支払い(負債や社員の給与など)後に残った資産を受け取る権利が主である。昔、話題になったハゲタカファンドは後者が投資額を上回るため、企業買収後、企業を解体と各事業の売却していた。共益権は、株主総会での議決権に加えて色々ある。外部株主は、経営者選任の拒否により経営者から退任させる、経営の基礎となる定款の変更の拒否により事業運営の自由度や役員報酬の低減などの可能性がある。
よって、経営が思い通りできず、株主要求の対応に時間が奪われる可能性がある。企業家の利益を守る(=株式保有比率を高く保つ)に加えて、企業家の事業が思い通りに実施できるように負債の可能性についてポストした次第である。よくよく、投資家は見極めたほうが良い。
貸借対照表(B/S)の左右の意味(自己流の理解)
上記は、理系になじみがない財務3表の右側を理解したことになる。よって、左側を理解すれば、貸借対照表(B/S)を概観することになる。そこで、B/Sの細目は省き、その左右の事業との関連を示す。興味がある方はご自身でつっこんでほしい。
B/Sの右側は出資額が入った出資者リストと考えればよい。銀行などの借り入れや買掛金は負債に入っており、株主からの出資は純資産に入っている。加えて、この純資産にはこれまで蓄積した利益も含まれる。これらの資本を投資したものが左側の資産である。例えば、製造業ではものづくりに必要な工場、機械やソフトウェア、小売業では店舗やレジなどがあるであろう。これらは付加価値を生むための装置と考えることができ、原材料や販売用の商品がこの資産に入ってきて、付加価値を加えて顧客に販売されることで利益がでると考えられる。よって、画一的に資産が大きいことがいいとか悪いとかはない。日本企業の問題のひとつは、この資産の現金が多すぎ、付加価値を生む装置に投資されていないと説明できる。
初歩的な内容ではあるが、投資資金や貸借対照表について概観が得られたのではないだろうか?株式による資金調達はあくまで、会社の所有権を切り売りすることを忘れず、最も良い資金調達ができればと思う。世の中には、これらの知識と経験が豊富な大人がいるのでご注意を。「ただ」より高い物はない。全体を通じて、資金調達(株式による)にまつわる話とB/Sのイメージをある程度つかめたのであれば幸いである。少し、広めのテーマを野心的に設定したため、わかりにくい内容はご指摘いただければうれしいです。
参考文献1:ストーリー形式で初学者によいかと。
参考文献2:同僚だった優秀な弁護士からの紹介、株主の権利などはここから引用