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境界標
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ある牧場の事務所の前に仲良く並ぶ境界標。
何故か気になる、何故かとても大事な(笑)霊験あらたかに感じて、この境界標をまたがない、踏まない、瞳の端に捕らえながら行きも帰りも、発進する時も気になり、眺めながら境界標を後に走り出している。
子供の頃、山にあった境界標を掘り起こして、物凄く両親に怒られた事があった。
私の知識の中には境界標の意味等入っていない、どうしてこんな所にコンクリートがあるのだろう ?? クエッションマークが飛び交って仕方がない。
山の天辺、周りは笹と木々が生い茂り不思議が満開、笹を除けて少し掘って見た。
なんか深いし長いコンクリートが刺さっているんだわ、どの位の長さなんだろう。
その日は不思議満タンで、何時スコップ片手に掘り起こそうか ? ワクワクしながら帰宅した。
記憶は鮮明ではない、途切れて所々、季節は今頃秋の始め頃、未だ山葡萄を採りに行くには硬いし酸っぱ過ぎた事を覚えている。
要するに遊びたい、時間を持て余して、遊び物はないかと心の瞳がキョロキョロ、子供の興味津々はとどまる事を知らない。
お昼過ぎ、秋晴れで風もなかった様に記憶している、自宅から急斜面を登る事20分程、11~2才だった筈、一時間程度掘っただろうか ? 掘っても掘ってもコンクリートの終わりがない、押すとグラグラ、このまま抜こうと抱き付き引っ張ったが抜けて来ないが、ようやく抜けた。
どうしてこんな山の天辺にコンクリート、可怪しいし、邪魔だろうと思った。
1メートルもなかったと思うが重くて運べず、掘り起こしてそのままにして帰って来た。
帰りは下り坂なのに足がもたつき、疲れきってグッタリ、不思議の掘り起こしは、この先絶対にしないと心に誓った。
それから幾日か過ぎたある日、両親にコンクリートの事を話した。
「三角点の所にコンクリートがあったから、掘って持って来ようとしたんだけど、重くて持って来れなかった」
父だったか、母だったか両方いる時だったかは忘れたが、その事を話した瞬間両親の顔が鬼の様に変貌した、雷鳴ゴロゴロピカ一ッドーン、頭が身体の中に引っ込むかと思う位にシコタマ怒られた。
「今直ぐ元の位置に戻して埋めて来い、2度と触るな」
半べそかいた。
それから暫くして境界標の意味を教えて貰い、とても大切な物なのだと云う事を、身体を張って半分泣いて理解した。
そんな境界標が二本もある、眺めては、掘るのも埋めるのも重労働、心臓がビクンと止まっても怒られた事が蘇って来る。
ワクワク境界標、シコタマ怒られて境界標、触ると怒鳴り声が聞こえそうなので、またがない踏まない。
(笑)