ひとつの命
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幹が見えない程に白いスモモの花が、人が立ち入らない木々の中で際立ち咲き誇っている。
その昔開拓に入った人々の家々には必ずスモモの木が植えられた。
日々の暮らしは厳しく子供達のおやつ等買えない、何処の親達も夜明けと共に働き、日が沈んでフクロウが鳴き始めてようやく仕事の手を休めて、疲れた身体を横たわらせて眠りに付く。
そこまでして働いた人々は、今も残り大きな農場や、沢山の土地を手に入れ現在は四世代目位になっている。
そんな過酷な生活に耐えられず、都会へ生きる道を求めて出て行った人々は九割を占めるのではないだろうか ?。
残った人々は1パーセント居るのだろうか ?
大きくなった家々にはもうスモモの木は見当たらない、スモモより美味しい果物やお菓子が容易く入手出来る様になり、泥道はアスファルト舗装。
木々の中に咲き誇ったスモモの木は、入植者がいた証であり、子供達もいたのだろうと推測する、その人々は何処に行ったのだろうか ? 今はそんな地域に住んでいた事など知らない子供達が元気に生活しているのだろうか ? 車を走らせながら見つめたスモモの花に思いを巡らせてしまった。
今年は実家の木瓜の花が枝をしのらせて咲き誇っていた。
4~5年振り位に見つめた木瓜の花、毎年たった一頭のメスの逃げない鹿に蕾を食べつくされてしまっていた木瓜が、ものの見事に咲き誇っていた 💀💀 毛虫もぶら下がっていた 💀
実家の花畑の花は逃げない鹿に食べられずにスクスク背丈を伸ばしている。
野菜や色んな物が食べられてしまうから 😢 実家に行く度に手を大きく振り回したり、当たらない様に物を投げたりしてこの鹿を追い払っていた。
でも、私がいない時に来て色んな物を食べていたのよね~(笑)
追い払った理由は小鹿を連れて来たから・・・どうして !? なぜ ⁇ と言う目をしていたのを思い出す。
人間を怖がらない子供が出来ては大変なのよ、野生の動物は無防備では生きて行けないのよ、そんな思いから私はこの人なつこい雌鹿と小さな子供を追い払う事にした。
木瓜の花が満開に咲いた、あの雌鹿の命がひとつ消えた事を意味する。
増えすぎた鹿の被害は酷いけど、記憶に入り込んだたった一頭の鹿の一生の断片に、追い払った私が居る事だろうな~。
木瓜の花がこれ程沢山咲いたのを初めて見つめた。