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遠い記憶のメロディー

 773 文字

 少し湿り気を、まだ保っているヒヤリとするコンクリートの塀を、黒い甲羅の昆虫が斜めに登り、塀の裏側に消えて行った。
 眺めて花畑、雨が続き草畑、オダマキ、テッセンの花は終わり、オダマキは種を包んだ殻が風に揺れる、カラカラと乾いた音が、草取りでしゃがんだ私の耳に聞こえて来る。
 どうしましょう ? 種をばら撒いたらオダマキ屋敷になるわね、花の盛りは7月中頃迄、その後は花が無いと言う事になる、それは寂しい。
 色んな場所に振り撒いて来ようかしら、ニマ〜 今ではアメリカの花となったルピナス、日本ではノボリフジとも言われている花の種を、行く先々でばら撒いた人のお陰で、アメリカの花になったと何かで読んだ事がある。
 記憶違いかも知れないけど、私も真似しようかしら〜と思う程に、オダマキの種が沢山、なんとなくこのまま捨てるのは勿体ない気がしてならない。
 (笑)夜な夜な種をばら撒きたい衝動を押さえて、今朝の温度は14度、温度をドロップキックしてやりたい。
 
 ハンゴンソウ、野山にポツン、ポツンと草丈は2m位の物が多い、子供の頃、このハンゴンソウという名前等知らなかった。
 根元は直径6センチ位になる、鎌で切り、程良い部分で笛を作り音を鳴らした。
 口に当てて音を出して遊んだが、口が青臭くなり長い事吹いていられない、グタグダな音色しか出せない私は直ぐ飽きて、ハンゴンソウの音の出る筒を恨めしそうに見つめた事を思い出す。
 暫く放って置くと青い筒は乾燥する、すると音が高くなる、でもやっぱりグタグダな音階、聞いている自分さえ聞きたくない音になるから、せっかく作った笛はいつの間にか腐葉土になったのだろうと思う位、作った笛のその後の記憶がない。
 ハンゴンソウの花が咲く度にあの笛は何処に行ったの ?あの麦わら帽子は何処へ・・と日本映画とリンクしてしまう。

#エッセイ

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