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彼女が引っ張る人魚の夢

【彼女が引っ張る人魚の夢】

「ようこそ、海の世界へ」

私は彼女の頭の上から顔を出した。


「きゃ、あなたは誰?」

彼女は驚いていた。

「私は人魚よ、見えるかしら」

私は尾ひれをひらつかせ、彼女へ見せる。


「綺麗ね、私にもあったら良かったのに」

彼女はなびく尾ひれに目を輝かせていた。

「人間さん、あなたにもあるじゃないの柔肌な脚が」

彼女の脚をスーッと指を滑らせた。

「な、なにをするの!?」

恥ずかしくなりながら、彼女は脚を引いた。

「美麗なものが好きなの、それと脚がある羨ましさかな」

もう少し触りたかったなと思いながら話した。

「そうなのかな、ありがとう」

彼女は嬉しそうな表情をしていた。


「私もいつかは海を出て地上というものを見てみたいの」

私は光が差す方向を見ながら語った。

「人魚さんは夢を持っているのね」

彼女は真剣に聞いてくれていた。

「叶わない夢だけどね…」

私はしゅんとなった。


「叶わないけど近いことはできるよ」

何か思いついたように言った。

「行けるの?地上に?」

私は指さした。

「うん、行けるよ。私について来たら」

彼女は私の手を取った。

「ほんとに、ぜひ行ってみたいわ」

ワクワクする気持ちで彼女の手を握り返した。


「私のスピードに合わせてよ?」

彼女は光の方へ泳ぎ始めた。

「ふふふ、わかったわ。あなたに合わせるよ」

いたずらに尾ひれをパンっとしならせスピードを上げた。

「待って、早すぎよ!待って!」

不意な私のスピードに彼女は慌てていた。

「ごめんなさい。行きたい気持ちがスピードに出てしまったわ」

もっともらしい事を言いつつ彼女のスピードに抑えた。


「まったく、私がいないと地上に出られないというのに」

彼女は呆れながら、私の手を引っ張った。




【最後に】

『彼女が引っ張る人魚の夢』を読んでいただき、ありがとうございます。

・これからも500~1000文字程度のすぐ読める空想物語を書いています。

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まだあなたが読んでない空想物語がある場合お早めに読んでください。

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