初めての雪。【11作目】「短編」
僕の町に雪が降った。
僕は初めて雪を見た。
窓には雪と全身真っ黒な僕が映る。
世界がいつもと違う色に染まっている。
なんとなく、外に出てみた。
じっとしていられなかった。
近くの公園に向かった。
人は通らない、全身はすぐに白くなる。
雪のはずなのに不思議と寒くはなかった。
公園の遊具は解けた雪で濡れていた。
同じことを考えている同士が
自然と集まってきた。
僕以外は顔見知りのようだ。
みんなそれぞれ白くなっている。
今は何もかもを考える気にならなかった。
上を向くと目に雪が入る。
自然とみんな下を向いて話している。
みんなどこか自由で、
何にも縛られずに生きている感じがした。
ずっと聞き耳を立てて話を聞く。
雪が止み始めた頃、みんなちらほらと帰って行った。
僕だけが残った。みんなと一緒だけどみんなと違う。
それが、僕をなんとも言えない気分にさせた。
もう少しこうしていたい。
「あー!クロいたよ!勝手に家から出ちゃダメじゃない!」
振り向くと同居人がいた。
結局僕はどこにも行かずに、
どこにも行けずにいた。
僕は、あの家に閉じ込められるしかない。