大木 七輝

おおき なつき。文字、言葉好き。思い付き。短編小説、詩。長編小説→https://kakuyomu.jp/users/7huge_moon2

大木 七輝

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最近の記事

可愛いあの人に。【15作目】「短編」

チョコの匂いが街を覆っている。 休日だからか人も多い。 心做しか今日はいつもよりも 男女の2人組が多い気がする。 そんな見せ付けるように街を闊歩しなくても 幸せなのは充分に伝わってくる。 多分そういう相手がいることを 僕らのような人間に見せつけたいんだ。 うん、そうに違いない。 当然、僕にはそんな相手はいない。 今まで16年間生きてきて、 1度もいたことはない。 欲しくないわけでも、 男が好きなわけでもない。 ただ、女子と話すのが 少し苦手なだけだ。 人の群れを縫って、 よ

    • コーヒー。【14作目】「詩」

      揺れる瞳。 震える肩。 固まる表情。 抑揚のない声。 向かい合う2人。 冷めたコーヒー。 粘度の高い時間。 賑やかな店内と 緩やかなジャズ。 下を向く2人と 正反対の空。 1人がミルクとシロップを入れて コーヒーを飲み干す。 顔を歪めて、そこを後にする。 雑踏に消える幻影。 片側の空いたテーブル。 残された1人と 残されたコーヒー。 止まらない音楽。 騒がしい喫茶店。 そのまま、そこを後にする。

      • アザレアを探しに。【13作目】「短編」

        アザレアという花がある。 白、赤、ピンク、紫。 赤みがかかっていて明るい色が特徴的。 色ごとに花言葉もある。 アザレアという色もある。 日本語ではツツジ色と呼ばれている。 わたしは特に、花が好きな訳では無い。 ただ、アザレアという響きから好きになっただけだ。 興味から調べてみたら、アザレアの花言葉には、 よくある「恋の喜び」、「青春の喜び」 のようなものがある中で、 「禁酒」という意味があるのも面白いと思った。 だから捨てられたわたしは、 アザレアを見に来た。 薄明かりの

        • 青天の転生。【12作目】「短編」

          人にはそれぞれ、物語がある。 そこで本を読んでるサラリーマンにも、 スマホを夢中にいじっている学生にも、 ドアが閉まって乗れなかった女性にも。 同じ車両に乗っただけの何十人。 時間は誰にでも平等に流れている。 そこで、それぞれの役割を全うしている。 みんな自分の物語の主人公を演じている。 ただ、わたしは自分の物語ですら 主人公になれなかっただけだ。 小さい頃から、自分の意見を伝えるのが苦手だった。 可愛い人形を使ってる子に貸してって言えなくて、 誰も使わない積み木でずっと遊

          初めての雪。【11作目】「短編」

          僕の町に雪が降った。 僕は初めて雪を見た。 窓には雪と全身真っ黒な僕が映る。 世界がいつもと違う色に染まっている。 なんとなく、外に出てみた。 じっとしていられなかった。 近くの公園に向かった。 人は通らない、全身はすぐに白くなる。 雪のはずなのに不思議と寒くはなかった。 公園の遊具は解けた雪で濡れていた。 同じことを考えている同士が 自然と集まってきた。 僕以外は顔見知りのようだ。 みんなそれぞれ白くなっている。 今は何もかもを考える気にならなかった。 上を向くと目に雪

          初めての雪。【11作目】「短編」

          夜の仕事。【10作目】「短編」

          み「ゆうきくん、だよね? はじめまして、みさきです!」 ゆ「はじめまして。なんで名前知ってるの?」 み「これからゆうきくんってイケメンが来るって、さっきあっちで聞いたから! ゆうきくんはこういう飲み会あんまり来ないの?」 ゆ「普段は仕事だからあんまり。 今日はどうしてもって頼まれただけだから。」 み「そうだったんだ!なんのお仕事してるの?」 ゆ「夜の仕事だよ。」 み「あー、どうりでイケメンなわけだ! そこではなんて呼ばれてるの?」 ゆ「はるとだよ。」 み「かっ

          夜の仕事。【10作目】「短編」

          輝く場所へ。【9作目】「短編」

          夜が、眩しいほどに輝いている。 私の地元の田舎だと、 この時間にやっている店はほとんどない。 でも、ここではどこもキラキラ光って見えた。 私はここで生きていくと、 東京に初めて来た日に、心に決めた。 気付いたら上京して早6年。 この街での生活も、当然慣れていた。 走る学生、駆け込み乗車のサラリーマン。 都会の人は、いつもせかせかしている。 窮屈な電車、踏まれる足。 都会には人が溢れている。 ふと、思ってしまった。 どうして私は東京に来たかったんだろう。 あの頃は、全てが新

          輝く場所へ。【9作目】「短編」

          雫のゼラニウム。【8作目】「短編」

          「あなたは何故、弊社を志望したんですか?」 耳にたこができるほど、聞かれた質問。 今の僕は正直、通いやすくて規模が大きくて、 安心して金が稼げれば、 職場はなんでもいいと思っている。 だからといってアルバイトじゃあるまいし、 それをバカ正直に言えるわけがない。 だから自分なりに考えて、 それっぽい理由で返してきた。 でも、多分それが滲み出てしまってたんだろう。 気付けばもう10月。 今も頭の中であの質問が鳴り響いている。 僕は今まで、何も成し遂げて来なかった。 部活やサーク

          雫のゼラニウム。【8作目】「短編」

          Anfang.【7作目】「詞」

          花酔う春の空白。 伝わる音の振動。 彷徨う夏の誘爆。 連なる人の波に。 紅燃ゆ秋の通達。 深まる時の隙間。 肌乞う冬の終着。 群がる光の中に。

          Anfang.【7作目】「詞」

          閃光。【6作目】「短編」

          光の粒。遠くなる音。 濡れた車体が通り過ぎる。 初めて空中で考え事をしている。 話で聞いたことはあったけど、 時間が止まったように感じるって本当だったんだ。 最期に思う。 ああ、俺でよかった。 今日もどこかで誰かが死ぬ。 別のどこかでは誰かが生まれる。 世の中はそういう風に廻っている。 最早、世の中の常識としてそこにある。 ただ、それには1つ思い違いがある。 星と同じように人も生物も、 死ぬ時と生まれる時の2回、 徐々に光りだし、 最後には閃光を放つということだ。 人が光る

          閃光。【6作目】「短編」

          二番目の女。【5作目】「短編」

          私は、やっぱり二番目の女だったみたい。 ここ最近、彼の様子がなんか変だと思った。 極め付きはさっきだ。 起きかけの朝の記憶。 急用なのか少し急ぎながら、 私を起こさないように用意をして、 彼は私には何も言わずに、 電話をしながら行っちゃった。 私が起きてるとは思わなかったのかな。 それに、普通に考えて 女の家で他の女と電話するかな。 でも、そんな抜けてるところも好き。 ただ、何か一言だけでもかけて欲しかった。 まだこのベッドにはあの人の温もりがある。 こんなことでも彼を感じら

          二番目の女。【5作目】「短編」

          寝れない朝は。【4作目】「詩」

          寝れない朝は、いつもより早い。 寝れない朝は、いつもより長い。 寝れない朝は、いつもより白い。 寝れない朝は、いつもより明るい。 寝れない朝は、いつもより可笑しい。 寝れない朝は、いつもよりうるさい。 変わらない昼と変わった夜。 終わらない愛と終わった恋。 交わらない心と交わった体。 寒がりな私と暑がりな君。 強がりな私と湯上りの君。 寝れない朝は、こんなにも重い。 寝れない朝は、こんなにも死にたい。 寝れない朝は、こんなにも微睡み。 寝れない朝は、こんなにも痛い。

          寝れない朝は。【4作目】「詩」

          短距離想。【3作目】「短編」

          部屋にいる間、頭に浮かぶのは キミのことばかりだった。 アルバイトも無くなって、 解放感と共に絶望感がやってくる。 このままじゃダメだと焦る気持ちと裏腹に、 公園の冷えたベンチに腰を降ろした。 マスク越しの息に水分を感じる。 手袋をしているのに手が悴む。 勝手に上下の歯が当たる。 強い風に乗った濡れた白が 顔を目掛けて飛び込んでくる。 息抜きに散歩する時期は終わったんだ と改めて実感した。 近年が暖冬だったせいで忘れてたけど、 これが本来の寒さか。 いや、多分それだけじゃな

          短距離想。【3作目】「短編」

          WORLLLD.【2作目】「短編」

          『WORLDはWORDとLで出来ている。』 私たちの世界は、言葉と何かしらのLで出来ている。 目に映るものは全て言語化出来る。だからWordはわかる。 でも、Lってなんだろう。 心が綺麗な人はきっと、LoveやLifeと答えるんだろう。 先に言っておくと、私はそんな人間ではない。 「この世界って窮屈だよね。」 オレンジに染まる道の上で 彼はそう言ってはにかんでいた。 よく見ていた顔も、 いつもと何かが違う気がした。 私は何も言えなかった。 彼はいつでも優しかった。 一人

          WORLLLD.【2作目】「短編」

          雨の夜の離脱。【1作目】「短編」

          深夜2時半、外はまだ雨が降っている。 目の前に僕がいる。 どこまでも飛んで行けそうな浮遊感と、 地面に引き付けるような気怠さが共存している。 この体なら自由になれる気がした。 家族はぐっすり寝ている。僕だけの世界に感じる。 初めて壁から外に出てみた。 歩行者はいない。雨も僕を通り過ぎていく。 雨が跳ねる夜の街を散歩することにした。 幼い頃に遊んだ公園、通っていた学校。 当てもなく歩いているつもりでも、 やっぱり見知った道を巡ってしまう。 新しいマンション、駄菓子屋があった

          雨の夜の離脱。【1作目】「短編」

          はじめまして。

          大木 七輝(おおき なつき)と申します。 これから少しずつ短編小説や詩を投稿していきます。 拙い文章ですが、楽しんで貰えるように頑張ります。 使っている写真は全て趣味で撮ったものです。

          はじめまして。