カミキリムシのいた街路樹
「千の点描」 <第二九話>
美しい昆虫は、必ず高い樹の上に棲んでいると、私は理由もなく信じていた。私は昆虫取りが得意で、小学校の高学年になった頃から、さまざまな高い樹に登っては昆虫を取っていた。今から思い返すと、昆虫そのものに格別の執着があったわけではなく、どんな高い樹にも自在に登れることが私の本当の自慢だったような気がする。そして高い樹に登った証明として昆虫が必要だったのだと思う。
あえて「昆虫採取」と言わず、いつも「昆虫取り」と呼んでいたことにも、そんな私の気持ちがその