[ルポ① ] 外国人労働者と『拷問 製造ライン』
日本人のことは置いておいて「外国人労働者を増やすこと」に国は尽力しているが、外国人労働者にとって、日本は働きやすい、良い国なのだろうか?
日雇い派遣の現場には、外国人労働者が沢山いた。
フィリピン、インド、ブラジル(日系ブラジル人?)、モンゴル、タイ、ベトナム、台湾、中国、韓国、アフリカ系(どこの国かはわからない)と多国籍だが、白人は見たことがない。
特に工場で、日雇い派遣労働者より人権のない扱いを受けている外国人労働者を見てきたので、いくつかの事例を紹介する。
※ちなみにマトモな会社の方が多いのは言うまでもない
【1】薄いペラペラの軍手で灼熱の鉄板を持つ作業
弁当のおかず"チキンのオーブン焼き"を取り出す作業をした。
オーブンから出てきたばかりの灼熱の鉄板を持つのに、使い古しのペラペラのぺちゃんこの軍手を2枚重ねて使うよう言われた。
もはや薄すぎて、鍋つかみの用途をなさない。重ねていても鉄板の熱は伝わってきて、私の指先は真っ赤になった。
私が「あちちち!あちちち!」と作業していると、フィリピン人達が来て
「オ姉サン、カワイソウネ。代ワッテアゲルヨ」「ワタシタチ、慣レテルカラ平気」と言って代わってくれた。
でもやはり熱いみたいで「アチチチ!熱イヨ、コレ。アハハハ!」と笑っている。
メンタル強い!笑ってる場合じゃないよ!
私は1日しか来ない日雇い派遣なので、担当の社員に「あの手袋、ペラペラになっているので新しい物に変えられませんか?」聞いたが、即答で「ない」と言われた。
こういう対応なので、外国人達の労働状態は、今も劣悪なままだと思う。
【2】頭ごなしに怒るターゲットにされている
菓子工場に行ったら、パートの半分はフィリピン人であった。日本人の女社長は小柄な人なので、穏やかな人なのかと思ったが、1時間もしないうちに豹変し、本性を現した。
特に怒るべき事象がないのに、怒鳴り口調でフィリピン人パートらに「もっと早くやれよ!」とか「もっといいやり方あんじゃねえのお?」と威張り散らした。
長らくプロとお菓子作りをしていた私は、作業スピードもやり方も、特に問題を感じなかったし、女社長には明確な策がなさそうだ。このヒステリー女は、ただただ怒鳴り散らしたいだけなのだろう。
でも、フィリピン人たちは明るいので
ハハハハ!と大きな声で堂々と笑っていた。
社長は「笑ってんじゃねえよ、お前らとっとと国に帰れよ!」とキレたが、フィリピン人達は、ハハハハ! ハハハハ!と返し続けたので、女社長は呆れ果てて退散した。
怒りは笑い声にかき消されて負けたのだ。
全て笑いで跳ね返すフィリピン人、最強!
ちなみに、2度目にその工場に行った時も、同じコントをしていた。
毎日やってるのかな。
【3】拷問製造ライン
評判の悪い劣悪な食品工場があった。
この会社は商品の製造ノルマ達成のためなら、何でもやる会社であった。
イカれた設計の製造ライン
詳細は書けないので、ボヤかして説明するが、ますます恐ろしい感じになってしまった。しかし、本物は更に恐ろしかった。
この工場の近くに住んでいた私は、年をまたいで数十回、その工場で勤めたが、あの拷問マシンを見たのは、悪夢の一夜限りであった。
あんなものは470社で働いて、後にも先にも見たことが無い。
あまりに頭の悪い、いや、頭のおかしい設計の製造ラインで、外部から監査が入ろうものなら、1発でアウトになる代物であることは一目瞭然であった。だから、奥の奥の方の部屋で、密かに動かしていたのだろう。
この歪な製造ラインは、まず、作業をする人間が江戸時代に行われた拷問「海老責め」を彷彿とさせる姿勢をとらないといけないのである。
ありえないのは作業姿勢だけでは無い。
「商品(食品)が、作業者の下を流れている」のである。
長靴を脱いで食品レーンの上の鉄板に作業者が座るのだが、靴下のゴミは目に見えなくても落下はしていただろう。商品の中に。
体をグッと倒して前屈みになり、手には液体を入れる漏斗(600-700g)を持って、ラインが流れている限りは休みなく液体を流し込まなくてはいけない。カップに漏斗の口を近づけるため、かなりの前屈みになる必要があった。(横には漏斗に液体を補充する作業員がいて、その人は立ち姿勢で作業する)
海老責めとの違いは、手は後ろ手に縛らないものの、液体入りのステンレスの漏斗を片時も離さず持ち続けなくてはいけないため、手は腱鞘炎になり、指は曲げられないほど痛くなる点である。
ラインが流れる時間は4時間前後。
ノンストップである。
(海老責めでさえ、2時間以上してはいけないと決められていたのに)
絵のような縄による手足の拘束が無くても、手には液体入りの大きな漏斗、足のやり場は非常に限られたスペースで不自然にしか置けないため、見えない縄で縛られているも同然であった。
その上、注入する液体は、ラインが汚れてしまわないように、絶対に容器からはみ出してはいけないのである。
拷問は流血のイメージが強いが、血流を止める拷問もまた、おぞましいものである。
血栓が出来、老廃物が溜まり、激痛に襲われ、しまいには血管が破裂する。私はこの拷問製造ラインを思い出すにあたり、「あの拷問機器"スカベンジャーの娘"みたいな」と連想したのだが「海老責め」のほうが近かった。
拷問でなくとも、長時間同じ姿勢を取り続けることにより起きてしまう「エコノミークラス症候群」も同じ原理だ。足の静脈に血の塊ができ、その血栓が肺に詰まって呼吸困難や心肺停止をさせる"肺塞栓症"を起こす。突然死するケースもあるので、侮れない。
※エコノミークラス症候群は4時間以上同じ姿勢を取り続けると発症率が上がるそうだ。この工場では、水分補給を(嫌がらせで)禁止までしているので、危険性は更に高かった
これらの一切を考慮せずに作られたのが、「拷問製造ライン」である。
流れ続けるライン作業で、1列でも液体の流し忘れがあろうものなら「てめー、寝てんのか、このやろう!」と、パートの女が喚きながらカチコミに来る。
私は一度、その部屋に連れて行かれて作業をしたが10分ももたなかった。20代後半か30代前半の時にしたのだが、手も腰もやられそうになり、早々にギブアップした。
流し込みを全てのカップに出来なかったため、発狂したパートの女が怒鳴り込んできた。
「てめえ!こんなことも出来ねえのかよ!おめーの代わりはいくらでもいんだよ!帰れ!帰れ!」
怒鳴られている私を見て、近くにいたブラジル人達が、励ましてくれた。
「コレ、トテモ大変ダヨ、オ姉サンニハ無理ヨ」
「人間ヒトリヒトリ、ダイジ。イラナイ人、イナイ」
「ワタシタチ、代ワッテアゲルカラ、モウ大丈夫ヨ〜」
みんな、優しい!
この言葉に泣きそうになった。
ブラジル人達は、イカれた製造ラインの上で不自然な姿勢で作業を始めた。
「イタイ、腰イタイ、イタタタ」
やはり、慣れている人でも無理だった。
そこに威張り散らす男性社員が来て「ちゃんと作れ!」と、怒鳴り散らしていった。
その社員に連れられ、私は少しマシなラインに移された。
それ以来、このイカれた製造ラインの作業に入ることはなかった。
この拷問機械で働く人が皆、腰を痛めてしまったり、商品に異物が入ったため、解体されたのかもしれない。(翌年働いた時には、同じ商品が普通の製造ラインで流れていたので、きっとそうだろう)
【4】「水を飲むな」、トイレも禁止
別の日に同じ工場で見たのは、蒸し風呂状態の洗浄部屋で、水を飲むことも許されず働かされる外国人達であった。
私も30分ほどその部屋で働いたが、制服は汗で上下びっしょりになった。そのまま終業時間になったので、急いで水を飲みにいったが、気分が悪くなった。
この工場は、従業員の健康を破壊することが余程好きなのか、「水を飲むな」「トイレに行くな」というルールを10年以上強要していた。労基署に通報されてもへっちゃらで、従業員の家族から「トイレに行かせてもらえなかったので、家内の膀胱炎が悪化した」というクレームが来ても、無視し続けた。
【5】告発
今年2023年、とうとうこの工場は、公開レビューで複数人に、日常的に行われている"重大な食品衛生に関わる、異常なハラスメント行為"を暴かれてしまった。
「まだ変わらないのか、あの工場は!」
その書き込みを見つけた私は、労働研究に携わった時に作って未発表だったブラック企業レポートをパソコンから発掘し、「水を飲むな」「トイレに行くな」ルールはパワハラで安全配慮義務違反であること、高濃度の次亜塩素酸を使い続けて手がかぶれた従業員が多数いたこと、従業員を病院送りにする凶悪お局の件に、公開中の口コミのURLを添えて、サプライチェーン統括本部に告発メールを送った。
(併せて「AIにも予測不可能な凶悪なお局」の話もどうぞ)
返信は、すぐに来た。
調査は10日もしないうちに迅速に行われたようで、調査・指導後の工場の変貌ぶりは従業員の書いた公開レビューにすぐに反映され、確認できた。
短期間で驚くほどマトモな会社に改善されたようだ。
労基に何度通報されようとも平然としていられたブラック企業も、さすがに主要取引先に調査を入れられたら、変わらざるを得なくなるか。
私は2018年10月に行われた、永田町の参議院会館の『守ろう!外国人労働者の命と権利』の集いに参加したが、これより更に酷いケースの報告も多々あった。
※自民党、立憲民主党、国民民主党、社民党、日本共産党、無所属の国会議員合わせて28人が出席した。
※新聞、テレビの取材陣もたくさん来ていた
※サプライチェーンの底辺にある違法行為について、この動画でも触れられている。
16:00〜
こんな企業を蔓延らせていては、日本で働きたい外国人なんか順調にいなくなるだろう。
国の愚策続きで国力が衰退し、未来の日本人が、このような働かされ方を海外でさせられないことを祈るばかりである。