完全犯罪の条件/愚かな高額バイトのツケ
「おい、そろそろ罪を認めたらどうだ?」
そう刑事が問いかける。
「もう証拠も、全部わかっているんだ。いまのうちにあらいざらい喋ったほうが見のためだぞ」
俺は笑いを堪えるのに必死になった。
必死に警察たちが自白を促してくる。がそれはそれだけ自白が必要だってことだ。
「お前のスマホも押収して中身も解析済みだ」
はいはい。スマホを解析w ご苦労さまです。
なにもわかっていない。
この刑事も周りの警察官も全然わかっていない。
俺は犯罪を犯した。
完璧に計画された犯罪を実行した。
俺個人は末端の構成員だ。しかし、その組織の大元は巨大組織だ。
今回、俺が捕まっても何も問題ない。
指示ややり取りはすべて秘匿性の高い「ARCOM」というアプリを使っている。
通常のインターネット通信と違い、その内容を第三者が読み解くことは出来ない。
そして、犯罪に使った道具や狂気も処分済みだ。
指示されたとおりに捨てた道具は本部が回収済み。今頃は完全に抹消されている。
俺は犯罪を犯した。
しかし、それを立証する術を警察は持っていない。
俺は勾留期間を黙秘で貫けば証拠不十分で開放される。
そして、今回の報酬を受け取ることができるというわけだ。
完璧だ。
せいぜいがんばってくれよ、公僕さん。
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「なんであんなに余裕なんですかね」
「多分、自分が大丈夫と信じているんだろ」
「ええ? こんな証拠が揃った状態でですか?」
そう一人の刑事が驚く。
「多分、アプリ内の会話は絶対に安全で、道具も処分されていると思っているんだろうさ」
「ええ⋯? あのアプリの提供元から通信内容全部提供されているってのに。道具も事件現場の近くで押収済みですよね?」
「そうだよ。ただアイツは信じているだよ。自分は絶対に大丈夫だって」
「なるほど。じゃなきゃ、こんな馬鹿なことしないですかね」