動物愛護の行き着く先 / ペット人権化法案可決
「この子は本当の家族なの!」
「ペットの虐待を許すな!」
そんな悲痛な声が多数派になり、政治家も無視ができなくなった。
少子高齢化が進み、昔のように番犬みたいに犬を買う家族はいなくなった。
そして本当の家族のように扱うような人達が増えた。
自分自身がそれだけならばまだいい。
それを他人に強要し、公共に要請するまでになった。
ペットが金儲けになるとしった下卑た業者の存在を罰するためにもそういう事が必要だったのだろう。
が、いつの間にか「このコはペットじゃない」「本当の家族」「人と同じように扱ってほしい」「扱うのが当然」「人と同じくらいの医療責任を」「人間と同じ扱いを」⋯とエスカレートしていった。
結果、ペットには人間と同じような「人権」が付与された。
動物病院には人間と同じように医療過誤が起きたらその責任が課され、
多くの公共機関などではペットの同伴を可能とする多様性への配慮が求められた。
ペットを飼うーーいや、飼うというと差別主義者というレッテルが貼られるため、多様性家族(フリーファミリー)を形成する人たちは満足したはずだった。
が、
「こんにちはーー〇〇さん、最後通牒ですよ」
「こんな額を払えるはずがないだろうーーあんまりだ! こんな犬猫を飼っているだけで⋯」
「こんななんてそんな。大切な家族でしょう」
俺は差し押さえ令状ーー税金類の督促状の束を見せながら詰める。
「あなたが扶養している多様性家族たちの住民税、国民年金保険料、健康保険料諸々ーーきっちり払ってください」
奥からこちらを不思議そうに覗き込む犬猫に微笑みながら、続ける。
「権利だけ主張するなんてムシが良すぎるでしょう? 人が生きるということは金が、税金がかかるんですから」