プライバシーの価格/他人の不幸は高値で取引されます
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俺がスクープした記事がネットで注目を浴びている。
プライバシーや個人情報云々が騒がれて久しいが、それでも芸能人…いやいまでは芸能界だけにとどまらず知名度の高い人物にそういったモノは存在しない。
有名税って奴だろうか?
いや、もっと貪欲で矮小な、ただの明け透けな人々の興味。
マスゴミだのなんだと言われるが、それでも俺はこれで日銭を稼いでいる。
ネットなどの伝達手段が発達したために、そういった高値で取引される人物の情報は逆に易々と手に入るようになった。
どこどこで誰を見かけた。
誰が何をしていた。
そんな情報を軽々しく、人々が扱うからだ。
他人には自分の情報を厳重に扱うことを要求する癖に自分が手にした他人の情報は安易にネットに公開する。
まるでその他人が実在しないただの情報の様に。
それで叩かれる者もいるが、こちらはそれが商売だ。
叩かれても、それ以上に旨味があればいい。
100万の罰金を払ったとしても100万以上の収益が見込めるならば商売として成り立つ。
それだけ需要があるということだ。
その需要に蓋をするようなことはムダなのだ。
人の知りたいという欲は、止まらない。止められない。
「悪いな。これも商売なんだ」
そういって俺はまた本当はどうでもいい有名人のゴシップネタをニュースとして取り上げた。
が、そのコメントに
『この○○という記者。分別が付かなくてヤバイな」
ん?
俺の本名が載っていた。
記事のライターは非公開のはずなのに
『こいつの今の住所は××××』
『連絡先は――――――』
俺の個人情報が晒されている。
そして、突如としていたずらや脅迫まがいのメールやDMが無数に届き始める。
本物だ。
削除も間に合わない。
どういうことだ? と慌てていると
『ここにこいつの情報を送るとカネもらえるぞww』
そんな書き込みを見つけて即座にアクセスするとそこには
『人のプライバシーを踏みにじるライター××の個人情報を買い取ります』
と書かれていた。
いつの間にか俺は、情報を売られる側の人間になっていた。
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