ルックバック感想 ネタバレ有り
泣いた
京本、かなしい
なんでしんでしまったんや
誤解を生んでしまう文になってしまうが、きれいな人生を見ている気がした。
あっという間の一時間だった、平日の昼間の上映だったからかマナーもよく見終わった後もオタクたちがそそくさとはけていたのに感動した、近くで鼻を啜ってくれていた人ありがとうそのおかげで私は泣けました。
藤野にとって京本という疎ましかった存在から認められたことですぐ調子に乗ってしまったのも小学生特有の可愛さとちょろさが出ていてよかった。
あの時出会わなければよかったという後悔を第三者として見ているとそんな、呪いのようにこじつけなくていいのになと思えるのに、当人として生きているとそうもいかないよな、と感じてしまった。
自分の中で大切な存在となった京本が自分が何気なく放ったこれからのたらればの未来に対して希望を持ち、京本自身のこうなりたいという自我が育って藤野と京本自身の願望を叶えるために進んだ先で命をなくしてしまったこと、現実でもあるんだろうが少し夢をみているような物語で、でも、命をなくす事故につながらなくても、あの時こうしておけばよかった、もっとこうしていれば、と人間誰しもが過去の己の過ちに対して思うよなという部分が映し出されていた。
でも、どう足掻いても二人が二人の人生において交差するものがあること、二人とも好きなことが絵を描くという行為であることに変わりはなくて、別々の人生を歩んでいても藤野は京本の光たり得る存在であることは間違いなくて、京本にとっての藤野はずっと神様みたいなものなんだろうなと感じた。
藤野歩は普遍的な人間で、だからこそ学生時代好きなことを自分よりも才能のある京本という人間に認められたことが嬉しくて、二人ですごい作品を作るぞ!って息巻いていたあの瞬間がすごく楽しくてしかたがなかったんだろうなと思いを馳せてしまった。京本が大学進学を決めた後もペンネームはフジノキョウだったのが藤野の思いを感じて泣いてしまった。
京本がいなくなったあとも歩み続ける藤野、ずっとずっと京本がいてくれたから、京本と出会ったから描いていた漫画を一人でも描き続けること、本当に本当にすごいと思って、一人で生きていく孤独感、さみしさがエンドロールを伝って感じた。
藤野が子供の頃に机に這いつくばって絵を描いていた頃の背中はどことなくこれからに対して未来がある分必死さを感じていたが、エンドロールの大人になった藤野の背中をみていると、くたびれてしまった人生を感じてしまって、大人になるってこういうことだよなの気持ちになってしまった。
それでも京本が藤野に対して抱いていた憧れや希望を閉ざさないように藤野自身のためにも描くことをやめずに続けていく選択肢を取ったことが本当にすごいなと思った。
音楽と映像の一つ一つの書き込みがきれいで、藤本タツキ先生の絵が動いている、と感動してしまった。
藤野の出会わなければよかったという言葉がすごく苦しくて、そんなことないよって言ってあげたくなるたびに、そんなことないと言ってくれていた側の京本という存在がいなくなってしまったことを噛み締めてしまってまた苦しく思った。
小学生、中学生という多感かついろんなものに希望を見出せる時期に一人の人間から自己をも肯定されるほど称賛された、という経験が羨ましいなと感じた。
少しSFちっくだったが、ででくるな!の世界線の京本が幸せでいてくれたらいいと思う。
一人で漫画を描いて生きている藤野のあゆみそのものが、これからも京本を照らしていてくれたらいいなと思った。
藤野の声優さんも京本の声優さんも知らない方だったが、二人の演技も相まって心が震えた作品でした。