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[9]冬のレース

冬枯れの
  桜並木は
     見あげれば
      
 青磁の珠に
   ひろげるレース


雲ひとつない冬の空、
ことに、
午前中の清冽な日射しをたたえる空は、
まるで磁器のようだ。
なめらかでつややかなその曲面を、
そっと指先でなぞりたくなる。

ところで、
この川沿いの並木が桜だと
まるで世の中は忘れてしまったんじゃないかと思われるような、
冬枯れの樹々の佇まいに心惹かれる。

樹皮は白々と乾き、殻のように固く軽やかで、
それでいて、
芯にあの、世界まで桜色に染めるような生命力を秘めている、
そんな二律背反する性質が同居している。

そんな空を背景に、
そんな冬枯れた桜並木の遊歩道を歩く。
そのアーチを見上げれば、
繊細で計算された枝々の重なりが
視界いっぱいに広がる。

白いレースがかけられた青磁の珠。
そこが、私たちが生きる場所だ。

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なごみ
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