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[74]梅が枝 三句

白梅やポップコーン弾け空へ

魔法の杖ならこれだね梅が枝

梅が枝で深呼吸する魔法かけ



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緩やかに続く丘陵が、
この時期、見渡す限り白と赤に染まる。
まるで空気までその色に染まるようだ。
ここは地元では有名な梅の名所で、
小ぶりな山一面に梅が植わっている。
もともと青梅を収穫する農園なのだが、
花の時期だけ一般に公開されるのだ。

山を巻くように緩やかに続く遊歩道を、
入園客がのんびりと散策している。
それをよそ目に、
農家の方々が
花が終わりかけている樹の剪定をしている。
地面に落ちているそれらは処分するので、
自由に持って帰っていいことになっている。

梅の枝は成長が早い。
「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」
という言葉があるように、
剪定をしてやらなければ
よい花実がつかなくなるのだ。

左右にゆったりと広がる太い古い枝から、
たくさんの若い枝が伸びている。
その、
スラリと真っ直ぐ天に伸びる姿は
瑞々しく清々しい。
春の生命力が空にあふれ出るようだ。
その枝一本一本に、
一つ咲いたかと思えば、
次々に弾けるように花が咲く。
春が待ちきれないと言わんばかりに、
競うように咲くその様は、
喜びと躍動が溢れるようで小気味よい。
それは
空に向かって次々はじける
ポップコーンのようでもある。

その枝の
のびやかな姿としなやかさ、
その枝に
弾けるように咲く花の躍動感、
この枝そのものが魔法なのではないかと思う。
剪定された枝の一枝を思わず手に取って、
そしてひと振りしたくなる。

さらに顔を寄せて瞼を閉じ、
深く、深く、その香りを吸い込む。
可憐な香りに酔い、ふと我に返ると、
向こうで枝を持つあの人も、
そちらで枝を持つあの人も、
枝に顔を寄せている。
みんなこの杖の魔法にかかっている。

家に持ち帰ったその杖を花瓶に活ける。
また、深呼吸する。
そして、私の隣で家族も魔法にかかる。


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なごみ
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