暴力クレーマーを勇者としてかっこよく討伐した話 【後編】

成人男性、還暦男性にビビって失禁。                    社会的抹殺。                               今後の人生お先真っ暗。                          これからどうやって生きていけばいいというのだろう。



色んなことが頭を駆け巡ったけど、漏れてなかったです。大丈夫でした。いやまじだって。ほんとに。その後ちゃんとトイレいって確認したし。まじまじ。

実際はビクッて体のけぞった。でも店長全然動じてなかった。なんで????(そして未だ震える膝小僧。ぶるぶる。)

せっかく恐怖を克服しようとしていたところにやつからの不意を突いたフェイント。せっかく収まりかけていた膝はどうやら震度7を更新しているらしい。これにはソムリエたちもびっくり。ツイートする暇なんてないね。

そいつは殴ったりしようとしたわけではないらしく、ただ肩を動かしただけのようだったが、それとは別にまだよくわからない音を発し続けている。永遠と繰り返されるその状況に痺れを切らした店長は

「もう警察呼びますね」

と言い、国家権力に助けを求めることを宣言した。

「んな……警察とか……くぁwせdrftgyふじこl」

なんかごねていたが決心したように店長は店内に電話を取りに行く。店長が背中をやつに見せ、遠ざかろうとしたその瞬間、

そいつは店長の背中を殴った。

「やっていいことと悪いことがあるやろがごぉぉらぁぁぁ!!!!!」

気づいた時にはそいつの両手をこれ以上自由にさすまいと手を掴み、関西弁巻き舌ぶち殺す勢いで怒鳴っていた。

びっくりした。何がびっくりしたかって

「あ、自分って誰かに怒るとこんな感じになるんだ」

ってこと。普段ほとんど何かに対して怒ることないし、誰かに対して怒りの感情をぶつけることってない。イラっとか、ムッ、とかはあっても攻撃的に誰かに言葉をぶつけることがほとんどない。

だから自分が怒った時って、こんな反応するんだってことに驚いた。

ひろゆき風に言うと「店長が殴られたことに怒りを覚えて怒鳴る行動をとった自分に驚いたんだよね」

手を掴まれたそいつは反抗することもなく、言葉を発するもできず、ただ茫然とこちらを見ていた。

そして押さえつけた僕は思った。

「このじじい力よわぁ……」

まじで何にビビっていたのかわからんくらい微力。たぶんウォシュレットのおしり、の方が力ある。知らんけど。(ウォシュレットを人生で一回も使ったことないって話はまた今度)

ちなみに膝の震えは止まってた。

自分の行動の意外性とじじいの力のなさに驚いていたところ、店長は普段温厚な僕がキレた、と思ったらしく(後で聞いた)、殴ったりしたらやばい!と思ってそのじじいではなくこちらの方に向かって

「落ち着いてください!!落ち着いてください!!!」

と制止してきた。

内心はこんなことを考えているくらいには冷静だったので

「大丈夫です」

と言いながら手を放し、落ち着いていることを店長にアピール。その間もじじは何が起こったのかわからない、といった表情を顔に張り付けている。

「もう警察に解決してもらうか、お引き取りください」

店長がやつに最後の通告をし、我に帰ったようにその言葉をかみ砕いたそいつはあわあわしながら捨て台詞を吐くこともなく、いそいそと彼方へと消失した。

緊張の糸が切れ、店長の背中を心配する声をかけていると、そのうちにいつの間にか見世物となっていたこの件を見ていたギャラリーも消えた。

丁度先に休憩に入っていた僕の推し(もうほんとこの人ほど黒のワンピース似合う人見たことない。店長とはまた一味違った美人さ可愛さ美しさ)が帰ってきたため交代するようにして休憩を貰った僕は休憩室に入るやいなや

「怖かったよぉ~~~~~びびったよぉ~~~~~」

と、机に向かって倒れこんだのでした。めでたしめでたし。っと。

なお後日談。背中を殴られてた時店長は

「こいつ、殺す」

と思っていたらしい。臨戦態勢ばっちりだったみたいです。僕より全然肝座ってんね。

「まぁ殴られて怪我でもしたら慰謝料がっぽりとってやるから」

とも言っていた。まぁよくよく考えたらこの店のお姉さま方々全員気の強いので、一番まじでびびりなのは我なのでは????と思った次第であります。

暴力クレーマーを店で一番ビビりな男が精一杯かっこつけて帰って貰ったお話でした。おしまい。

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