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映画「ボイリング・ポイント/沸騰」は、緊張感で走り抜ける90分ワンショットムービー
イギリス映画、ボイリングポイントを見てきました。アカデミー賞でも4部門ノミネートしてるし、もちろんイギリスでは大評判と。
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そんな、映画でした
見てびっくりの映画です。90分、ワンショット撮影。編集もしない。撮影場所は本物のロンドンのレストラン。SFXだの、3Dだの作り込み、いじくりまわした感のある最先端とはまた違う方向に今のテクノロジーを使いこなしてます。フィルム時代には絶対できなかった全編ワンショットという撮り方です。とにかく、楽しかったー。
日本のレストラン事情とは違うかもしれないけど、臨場感と緊張感でワクワクでした。
厨房、フロアー、裏口まで誰かについていって動き回るカメラ。そして、次々起こるアクシデントにアドリブ。応戦する俳優さん達の演技。役になりきりですね。
主人公のオーナーシェフのアンディは妻、息子と別居したばかり。仕事もパンク寸前。昨日、今日の仕込みができなかった。発注もできてない。息子の試合に行けなかったし、とにかく疲労困憊で心身共にギリギリのピンチ。
食品衛生検査が入ってまさかの2ランク落ち。スーシェフのカーリーはアンディを必死でリカバーする。辛抱強いなー。
でも、平気で大遅刻するふざけた奴はいるし、妊婦に英語が苦手な外国人労働者、これは自分の持ち場ではないと言い出す奴、無駄話ばかりしてる奴。
予約過剰で厨房スタッフはマネジメントに怒る。元々厨房とフロアースタッフには対立があり、労働者とマネジメントの中産階級、さらに外国人労働者問題が絡む。イギリスは日本とは違い、階級制度が残っていて容易にその壁は乗り越えられない。ブレグジットにまで発展した外国人労働者の多さも私の想像以上でしょうし、綺麗事ではすまされないでしょう。
ITを導入したけど使いこなせてない問題。メンタル病んでる問題。日本のあらゆる職場にもあるある問題、かしら?あんなサボってばかりの奴は首にしたいけど、深刻な人手不足に猫の手も借りたい。ブレグジットの影響もあり、募集しても応募が来ない問題多発中かしら。日本も仕事が見つからない人がたくさんいるけど、人手不足も深刻。どうにかならないの?
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臨場感せまるシーンの連続に
かこちらも追い詰められる
フロアースタッフもストレス爆発ギリギリ。フロアーマネージャーは、厨房スタッフの突き上げ、自分のスタッフの教育、経営、ブッキング、オーダーに頭パンパン。気持ちもギリギリ。
お客も色々でハラスメント、インフルエンサーの横暴さ、LGBT問題ももさらりと触れる。最早、みじかな事柄なんですね。
さらにさらに、ライバルのテレビにも出る有名シェフがサプライズでグルメ評論家を連れてきた。無駄にイケメンのこの人、何を思ったか、脅迫まがいな取引を持ちかける。そして、更に、アクシデント。
クリスマス前の金曜日のレストランは戦争。まさに、沸騰寸前。どうする、どうする!
90分と感じさせないピリピリに凝縮された時間。観客までピリピリさせる、珍しい作品です。こういう表現もあって良いね。
シェフに、フロアーマネージャーに、スーシェフに、色々なスタッフに自分の現実に照らしながら共感を感じつつ、現代の社会問題、イギリスの抱える問題にがチラリと見えて面白く、終わらせ方がどうなるのかと思ったら、そう来たか。