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一流のオーディエンスを目指して~名曲全集176 指揮:小林研一郎 ヴァイオリン:前橋汀子

だいぶ記事にするのが遅くな
りましたが、先日はミューザ川崎で名曲全集第176回を聞いてきました。
特に音楽教育を受けて来なかったけど、単なるちょっと音楽が好きな少女だったけど、この年齢になり、人生の折り返しをかなり過ぎて、やっと美しいものとは、本物とは、大切なものとは、表現とは、人とは、生きるとは、何なのかいくらか見えて来ました。
クラシック音楽が好きだけど、それ以外の音楽も好きだし、音楽以外のものも好きです。
今はコロナ禍で、行動にどうしても制限がかかり、心も乾きがちです。だからこそ、音楽の素晴らしさに今さら気がつきました。演奏は今から練習しても間に合わないし、不器用な音痴です。けれど、オーディエンスにはなれる。できれば一流のオーディエンスになりたいものです。


さて、このコンサートは東京交響楽団の定期演奏会です。今回は指揮は小林研一郎、ヴァイオリンは前橋汀子を招いています。

曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトと、ドヴォルザークの新世界。という王道なプログラムでした。


私はいつもながら、2階舞台後方席で、セットチケットだから2400円という格安です。それで、世界的な演奏を聴けます。

前橋汀子さん、御年76歳で舞台生活60年の今年、真っ赤なボリュームのあるドレスで女王様のような演奏でしたね。キリリとした威厳さえある佇まいから、ヴァイオリンは情感溢れてこぼれ落ちるばかり。貫禄ある女王からではです。演歌なら石川さゆりか?小林幸子か?汀子さん、こぶしも回るししゃくりも多用してましたし、エイジレスの良い女っぷりも発揮してました。カデンツァなんぞ、思い切り行ってました。コバケンさんは、女王様に優しく付き添うナイトの如く。お守りしてるスタイル。東響はコバケンさんを見習い、寄り添う、やはり、情感を大切にする優しさ溢れる演奏でした。


一方新世界はというと、こりゃ素晴らしい出来の良さ。何が理由でこんなとんでもない上出来演奏になったのかわからないけど、コバケンさんの演奏後の恒例のお話によると、観客の皆さんの力で不思議な世界が作れたと、四方八方にコバケンさん、オケのメンバー全員でお辞儀され、びっくり仰天でした。
30分ほどの演奏があっという間だったです。そして、今回は初めてビオラの音色の素晴らしさに気づきましたよ。まあ、この曲は全ての楽器の良さを聞かせるシーンがあり、オーケストラを楽しむのにうってつけです。ドヴォルザーク、やはり天才。
しかも、家路で有名な第二楽章だけでなく、全楽章にキャッチーなメロディーがあるんですね。ロックではリフという、あれでしょうか?素人だからクラシックの動機や主題と区別できませんけど。その主題を色々な楽曲で繰り返し、飽きさせない。これでもか、これでもかと盛り上げる。私の大好きなクラリネットもティンパニも大活躍。家路のテーマはまずはイングリッシュホルンでしたね。ああ、良い音色。コントラバスも、チェロも良かったー。トロンボーン、フルート、大好きなホルン。第一、第二ヴァイオリンを忘れてはいけない。豊かな、輝く音色が交互に重なり、響き会っていました。
コバケンさんは、時に優しく頷きながら、時に胸に手のひらを置いて気持ちを乗せて、時に激しくのけぞったり、全身でエネルギーを発信したりと、80歳ですか?本当に?熟練と、優しさと、情熱と、信頼とがカリスママエストロから常にほとばしり、観客席をも巻き込んだ感じでした。
その観客は四階席まで埋まり、大盛況。その大人数が集中して音楽にのめり込んだ迫力は、凄まじかったです。やはり、この大成功の新世界の演奏は、観客と演奏者の一体感の素晴らしさでしょうか?杖をつく人も目立ち、近くには白杖の方もいたり、車椅子の方も見かけました。どうしても聴きたかったんでしょう。来て良かった。聴いて良かった。生きてて良かった。幸せです。

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