『おい!ハンサム2』の見事なバラエティ・ドラマ

 『おい!ハンサム2』は、このクール、もっとも面白く楽しませて
 くれたドラマだ。
 日常の些細な細部にこそ、人間性が表れて、そのこだわりの面白味や
 おかしさやバカバカしさや駄目さ加減が笑える。
 
 最終回のハンサム吉田剛太郎のメッセージは、
 朝日新聞の鷲田清一氏の「折々のことば」でも取り上げられた。

 完璧な選択なんかない。だからとりあえず選ぶ。
 とりあえず選ばない。それでいいんじゃないか。
 
 正解を求め過ぎるな。
 正解を求めるよりも、選んだものを正解にしていく方が大事なんじゃ
 ないか。

『おい!ハンサム2』脚本:山口雅俊より

 選んだ選択を正解にしていくための過程にこそ大切なものがある。

 誰もが持っている先入観や偏見に惑わされたり、自分の選択に悩んだり、
 聞かなかったことにする「心理学上のアレ」があったり、なかでも
 食をめぐるエピソードが特に秀逸だ。
 孤独で寂しい女に見えていた富田靖子が蕎麦抜きの天ぷら蕎麦(天抜き)
 で一杯やる「自分なりの食べ方」を楽しんでいたり、昼食のウナギを
 めぐって食べた食べないで揉めて、「あたりまえに食べること」の価値を
 説き、たい焼きを半分に分け合うやり方を語り合ったり、深夜に無性に
 ホットドッグを食べたくなって走り回ったり…。
 人間の日常の細部の「食べること」を大切にする考え方が徹底している。
 
 原作の伊藤理佐の『おいピータン!!』がきっと面白いのだろうが、
 山口雅俊が見事なキャスティングと脚本で仕上げている。
 吉田剛太郎、MEGUMI、三姉妹の木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈だけ
 ではなく、浜野謙太、藤田朋子、ふせえり、野波麻帆、太田莉菜、
 須藤連、藤原竜也とあらゆる登場人物のキャラクターが個性的で楽しい。
 
 かつて『時効警察』や『オリバーな犬』など独特の笑いの空気感を描いた
 クセのある個性派ドラマはあったが、このドラマはまさに誰もが楽しめる
 王道のバラエティ・ドラマと言えるだろう。
 公開される映画もちょっと観たくなった。


スタッフ
【原作】伊藤理佐
  『おいピータン‼』『おいおいピータン‼』(講談社「Kiss」連載)
【音楽】MAYUKO 眞鍋昭大 宗形勇輝(ワンミュージック)
【エンディングテーマ】The Ronettes「BE MY BABY」
【脚本・演出】山口雅俊(ヒント)
【制作協力】ヒント
【制作著作】東海テレビ、日本映画放送


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