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【桜回線】693文字 ⑤

「歩いても歩いてもソ迷ヨシノ…」

私は今、夜の公園で迷子になっている。
ついさっきまで会社の同僚たちと夜桜の下でお酒を飲んでいたのに、公衆トイレを出たあと迷って戻れなくなった。

桜で有名なこの公園。敷地面積が広く遊具やジョギングコースもある。今は桜が満開の時期で、家族、カップル、学生など大勢の人が花見を楽しんでいた。

私は歩きながら同僚を探す。酔いが回って頭がふわふわしてきた。
すると提灯の明かりが届かない薄暗い場所に会社員らしきグループを発見した。

(あれかもしれない)

そう思って近づくと、スーツ姿の男がござから立ち上がり、携帯で話をしながらこちらを見た。男の顔を確認しようと目を凝らしたが、ぼやぼやしてハッキリ見えない。どこかおかしい。顔も背景も膜が貼ったように輪郭が曖昧で…。ねっとりとした視線だけ感じる、怖い。ふいに背後からトントンと肩を叩かれた。

「山本さん」

振り返ると同僚の二階堂くんが立っていた。

「二階堂くん!」

「やっと見つけた。ここ回線が込み合ってるから危険だよ」

「回線?スマホ繋がらないの?」

「スマホの回線じゃなくて桜回線。桜っていろんな人の思念が集まりやすいんだよ。思念という回線があちこちから集結して桜のサーバーに繋がってんの。山本さん、それに干渉してるよ」

「ん?は…話の内容がぜんぜん理解できない。飲み過ぎて頭が、」

言い終わる前に二階堂くんが私の手を握った。

「いいから早く、ここから離れよう」

二階堂くんに手を引かれて10秒ほど歩くと、急に景色が鮮明になった。と同時に現在地をすぐに把握できた。

「さっきまで迷ってたのに。どういうこと?」

「さあね。今度から夜桜に油断すんなよ」

追加お題【魅力的な台詞ではじまるお話】の台詞書き忘れて、一生懸命考えたけどダジャレしか思いつきませんでした(笑)
今回は二階堂くんというキャラに深みを持たせたくて、不思議なお話になりました。キャラに能力つけると話を繋げやすいかもなぁ~♪♪
それと前から #眠れない夜に に投稿したかったので、ちょうどよかった。
私自身、眠れない夜があって何か読みたいけど怖すぎるのはちょっと💧って思ってて。で、私が夜中に読みたい話を書きました~✨


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