戦艦大和の実相
先の大戦での愚行については、多くが語られているが、このほど、次の書籍を読み終えて、今更乍ら、その実相を学んだので、ここにその抜粋を紹介する。
「書籍名:データで見る太平洋戦争」
【髙橋昌紀 著】毎日新聞出版
1️⃣ 建造費
◆1937年(昭和12年) 海軍軍備充実計画で、
大和・武蔵の建造が決定された。一隻当たり
の予算は1億1,759万円に上り、その当時の
国家予算の約4.3%を占める
◆此れはどの程度の規模なのか。
JR東海によるリニア中央新幹線の土木工事
費(駅舎、車両などを除く)は約4兆158億円。
この年度の一般会計予算が約100兆円 であ
り、その比率は約4.2%である。因みに2019
年度の国防費は、約5.3兆円(一般会計:約100
兆円) である。大和一隻に何とも贅沢なもの
である(もっと言えば狂っている。)。
2️⃣ 主砲口径46センチの愚かさ
◆仮想敵国の米海軍は太平洋と大西洋に分
断されており、当時のスエズ運河の閘門幅は
33.3メートルだった。通過するために艦の大
きさが制限され、引いては主砲の搭載能力に
影響した。
◆日本海軍はその最大値を40.8センチと判
断、此れを上回ることで、建艦能力の差がも
たらす数的な劣勢を補おうとした。
また、砲径の違いは射程距離であり砲戦に
於いて相手の射程外からの「アウトレンジ」
攻撃を期待した。
◆主砲の砲撃は、観測着弾を重ねて命中弾
に至る。しかしこの間、敵艦は運動し自艦も
動いている。更に46センチ砲を最大4万メー
トルで射撃した場合、砲弾が着弾するのは約
90秒後、有効射程とされる2万〜3万メートル
でも30秒前後かかるという。
敵艦の未来位置を予測し、命中させるには
まさに神業的と言える技量が要求された。
3️⃣ 大和の最後
◆1945年4月7日、九州・坊ノ岬沖で航空攻
撃を受け撃沈した。海軍の公式記録である「
軍艦大和戦闘詳報」(1945年4月20日作成)に
よると、その戦果は撃墜3機、撃破20機とさ
れている。
◆大和出撃に当たり、米国は暗号を解読し
4月5日には、その意図を察知している。
6日、15時20分の出撃直後には豊後水道で
哨戒中の米潜水艦2隻に発見されている。
7日、12時34分大和は主砲による対空射撃
を開始、3次にわたる空襲を受け、約2時間後
の14時23分に転覆した。
大和の2,740人を含め、計3,721が戦死し
た。米軍は計367機が出撃、10機が撃墜され
戦死者は12人だった。
【追伸】
◆私が知らなかった戦艦大和について記載したが、この書籍には、太平洋戦争における実態が戦死者、国力、国民生活あるいはアジアでの位置付等々、多くの人が概念では知り得たものが的確なデータして閲覧できるものとなっている。
◆先の大戦で恥ずべきものの一つとして、一時期「国家が国民を見限っている」。
終戦に際しての外地邦人の救済、戦中戦後の食料難等々、今日を生きる我々は、それらを歴史の一遍として捉えるのではなく、緊張を以て後世に伝える義務がある。
その為の教科書として当該書籍を推薦する。
-以上-