授業にスパイスをきかせる①
国内でも海外でも、大学でも塾でも日本語学校でも、一番担当する可能性の高い授業は、文章を一緒に読み進めながら出てきた文法や単語を導入していくというタイプのものでしょう。そのような授業は、指定の教科書があり、それに沿って進めていきます。
よく使われる教科書は、教師用手引きが別売りされていたり、補助教材が充実しているので、正直な話、授業準備に困ってしまう(授業をどう展開させればいいか、全くアイデアが浮かばない)ということはないかと思います。逆に、スケジュールが決まっていてノルマがあるような場合は、限られた時間の中でどのタスクをして、どれをスキップするかということに頭を悩ませるかもしれません。
私もそうでしたが、日本語教師なりたてのころは、あらかじめ計画した教案と時計を見ることに精一杯で、学生の表情を観察して臨機応変に授業内容を変更したり、タスクを追加したりということができませんでした。こういうことは、やはり経験を積まないと難しいと思います。実際、経験が増えていけばいくほど、教案は簡略化されたものになります。大学時代におこなった日本語教育実習の時は、経過時間はもちろんのこと板書内容、教師からの問いかけ、注意点、学生から予想される反応や質問、様々なことを教案に書き込んでいました。「時間をかけて作り上げた完璧な教案なくして、授業は成り立たない」、そんなふうに思っていました。しかし今なら、「流れさえ頭に入れておけば、授業は成り立つ。それ以上に、教室を観察する力、時に脱線する勇気が授業には必要だ」と声を大にして言いたいです。
私達は、「なまもの」を扱っています。学生にも調子の良い日もあれば、悪い日もありますし、授業に集中できない日だってあるでしょう。しかも、そういった負のオーラは、いとも簡単に教室内に蔓延してしまうのです。そういうときこそ、「教師力・教育力」の出番です。
では実際に、どんな工夫をすればよいのか。どのようにスパイスをきかせれば学生が集中しやすい授業になるのか。それは次回、お話しすることにします。