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~31歳脱サラ留学生、インドでソーシャルワークを学ぶ~ #6 留学を志し、専攻を決める
年明けに1年生1学期の期末試験があり、年末年始もそこそこに試験勉強に追われ、ようやく試験が終わりました!(と、実はこの記事を書き始めたのは1月末(苦笑))
インドでは元旦、ニューイヤーの日はお休みですが、2日以降は通常稼働です。日本人的な感覚だと出勤したくないなあと思っていました…(汗)。
5日間の試験が終わり、2学期の始まりまでちょっとゆっくりできるなあ、近場に旅行でもしようかなと思っていたところ、2学期の開始が予告よりも10日ほど早まったので、束の間の4連休を満喫中です。何事も急に変わるので臨機応変さがインドでは重要です。
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会社員からインド留学をめざすまで
時は遡って2023年のこと。30歳を迎える年、社会人生活も4年目になっていたころです。いつかインドに仕事か留学でまた行きたいという希望を持って、それまでの会社員生活をずっと過ごしていました。
2022年に一度転職をしたのですが、インドや海外に赴任や駐在できそうなポストを狙ったものの、赴任のタイミングが合わなかったり、実力が及ばず不合格になったり。そんな中で、何とか前職の会社にご縁があり転職をすることができました。
国際協力に関連する会社(開発コンサルタント企業:JICAなどの官公庁からODAプロジェクトを受注し、海外の現場でプロジェクトを実際に実施する会社)への転職に成功したものの、まだこれといって専門性がなかったため、プロジェクトでは業務調整というアシスタントポジションで仕事をしていました。
一方で、年に数回の海外長期出張をし、プロジェクトの実際の現場でカウンターパートや現地のステークホルダーの方々と接する機会があったことで、言語を使いながら現場で業務を行うのは、自分の肌に合っていると感じました。
さらに、いわゆる専門家と言われる(ODAプロジェクト(または国連機関などで)活躍する、ジェンダー、教育、職業訓練、建設、電力、農業などそれぞれの専門分野を持つ)方々の背中を見ながら業務をしていくうちに、自分も専門性を持って主体的に活躍したいと思うようになりました。
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何を専攻すべき?
今後のキャリアを考え、「国際協力の現場で通用する専門性」を身に付けられる修士号を留学で取得する、という目標を立てました。この時の浅い知識で理解していたのが、国際協力を目指すためには「開発学」や「開発経済学」の専攻がメジャーだということ。
うーん、じゃあこの専攻に進めばいいのかなと考えていたのですが、お恥ずかしながら高校時代の政治経済の授業はサボって机の下で世界史の内職をしていたのでちょっと苦手意識を持っていたこと(笑)と、自分自身は大きな組織に入って大きなプロジェクトの枠組みを作るよりも、よりローカルにプロジェクトの裨益を受ける方たちと顔を見ながら話をして仕事をしたい、というギャップも感じていました。
個人的に、開発学は国を跨いだ世界というかなり大きな枠組みからの視点からの学問であることで、あまり「対個人」という目線で見えなかったことが、自分にとってはしっくり来ていませんでした。
さらに、将来も専門とする言語であるヒンディー語やウルドゥー語を使って、またはそれを足掛かりに異なる言語に挑戦して、南アジア地域に根差していきたいという思いを持っていたため、「ローカル」な視点も開発学とはちょっと違うという印象を持ったのかもしれません。
この頃、2014年にインドに語学留学をしていた時の先輩や、後に知り合った友人経由で「ソーシャルワーク」という専攻を聞いたことがあったことを思い出しました。当時は特に気に留めていなかったのですが、ふと思い立ってソーシャルワーク専攻について調べてみることにしました。
ソーシャルワーク専攻とは?
ソーシャルワーク専攻とは、日本だと社会福祉学部や社会福祉専攻に近いと言えると思います。(私自身は、日本での「福祉」は生活に困窮する方や高齢者の方への支援というイメージを強く持っていました。)
社会福祉学は以下のように定義されています。
社会福祉学(しゃかいふくしがく、Social Welfare)は、乳幼児、児童、少年、障害者、女性、高齢者、経済的困窮者などに代表される社会的弱者(制度的弱者とも言う)の福祉の増進と権利の擁護、及びそのための援助の方法、技術、また行政政策、福祉を考えた社会的な基盤と構造を考える学問。
対して、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)による「ソーシャルワーク」の定義を見てみます。(原文は英語。日本語の定義は社会福祉専門職団体協議会と(一社)日本社会福祉教育学校連盟による)
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと 解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、 および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、 社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
修士1年生1学期の科目を例にすると、
・Work with Individuals and Families(個人と家族のためのケースワークやカウンセリングの理論)
・Social Work with Groups(グループ・ソーシャルワークの手法とその特徴)
・Child Rights(子どもの人権とその保護、さらにその阻害要因や社会問題)
・Social Policy and Development Planning(社会政策と開発の関連、発展モデルと実例)
・Research Methodology in Professional Social Work(社会学の調査方法論をベースにソーシャルワーク研究と実践への調査の活かし方)
・Fieldwork Practicum(NGOや政府機関、病院などでの現場実習(週2日))
のように、個人という単位から家族、グループ、そして社会に発展し政策というアプローチまで幅広く扱っていることが分かります。さらに、ケースワーク・ソーシャルワークの理論や調査方法論を学ぶだけでなく、フィールドワークを通して現場を学ぶことができます。1年生後期では、ジェンダーや雇用、社会福祉実施機関などの授業が始まったところです。
最終的に留学するための専攻を決めたときは、「『現場』というキーワードがたくさん出てくるから、自分の希望に合っていそう。インドの文脈で社会問題を扱うなんて面白そう!」ぐらいの感覚で決めた気がします。
結果的に今だから言えることですが、「個人」といういわばローカルな対象も含むソーシャルワーク専攻はかなり自分に合っていると感じます。また、(これまで避けてきたため知らなかった)自分にとっては新たに学ぶことになった「政策」、さらには「憲法」や「法」という視点から社会福祉を学ぶことができ、インドだけでなく日本社会についても見つめ直すきっかけになっています。
「社会」そのものへの興味が沸いた
日々の授業では、教授とクラスメイトの間でインドの時事、ニュース、話題となった出来事や社会問題についての意見が飛び交います。私もクラスメイトに、どこからニュースを得るのがおすすめか聞いて、時事をキャッチアップするようになりました。
また、インドだけでなく日本の社会についてもきちんとフォローをし続ける必要があると感じます。唯一の留学生として意見を求められる場面もあれば、例えばインドの年金制度や教育について学んだとき、「日本では実はどうなっているんだ?」と思うことばかりです。
クラスメイトと話していても、農村地域や未だに残るカースト制度の問題、貧困や格差など生の声を聴くことができ、貴重な体験です。
目にするもの、耳にするものすべてが学び(というと真面目すぎる気もしますが!)だなあ、と留学を決めてよかったと実感します。
~今回の写真紹介~
キャンパスの奥ーーーのほうにあるためひっそりしすぎているソーシャルワーク専攻の校舎ですが、この度こんなにしっかりした看板が立ちました!
2年生の先輩たちが設置してくださって、前を通るたび誇らしいです!