人は自分と他者を比較しながら生きていく
読み終わった後、人にものすごく勧めたいという気持ちと「世知辛い現実に憂鬱になる」からそっと胸にしまっておこうという気持ちがせめぎ合い、表紙と裏表紙をゆっくり回転してしまった。なんというか「お金」というものは生きていく上では避けられないという事実で頬をぶん殴られたような気分になる。
内容はまさに「隣の芝生は青い」をリアル事例に落とし込んだものだ。
隣の芝生は青いと言われても、その一文だけでは「まぁ、そんなものよね」と分かりきったようなフリをして改心もしないが、この本を読むと自分に重ねて実直に考えてしまう。特に家庭を持っている人、家庭を持つ予定の人は深く考えてしまうのだろう。
とある一家とその周辺の人々のお金事情にフォーカスを当てた“日常”の物語なのだが、本を開くたび切実な状況や他所様の家の匂いを嗅いでいるような近さに各家を定点カメラで盗み見ているような錯覚に陥る。スポットを当てる人もテンポよく変わるため、リアルな事情に苦しくならなければどんどん読み進められるだろう。
登場人物だけざっくり説明すると団塊世代の夫婦 / 成人した2人の娘(既婚・子持ちの姉 / 社会人 独身の妹) / 祖母+様々な登場人物で話をリレーのように紡いでいくのだが世代や状況などバリエーションに富んでいるため、登場人物の誰かは読み手と近しいか、または未来を見るだろうと思う。
個人的な見解だが、友人の数が多い方やママ友など人間関係の渦を漂っているなら何か見つかるかもしれない。そして私のように人間関係がほぼ存在しない人間は、この本から人間の愛すべきどうしようもなさを知るかもしれない。
学ぶものも多かった、時に憂鬱にもなりはした。憂鬱は貯蓄額に比例する気もするが、画面の前のあなたは憂鬱になるだろか。
読んだ後、つまらなく感じるなら自分を誇っていいだろう。あなたは堅実でしっかりした土台の上で自分を見失わず生きている。
人付き合いが少なく貯蓄なんて呼べるものがない身としては「知識は本から得る」を体現しているような本だったが、結局得た知識で思うことは「宝くじ当たらないかなぁ」というシンプルな現実逃避だった。
しかし、土台を固めないとなぁと思うきっかけになったのでぜひ、読んでみてほしい。
それでは、あなたの時間を割いてこれを読んでくれてありがとう。