入院中の身体抑制は防げないのか?
病院で働いていた頃の話になります。
入院している患者には、鼻から管を入れていたり、腕に点滴がついていたりしている人がいます。その中には意識障害やせん妄によって自分で判断できなかったり、認知症により身体についた管に違和感を感じてゴソゴソと触ってしまったりしてしまいます。
そして、治療のために必要な管を自分で抜いてしまう患者もいるのです。これを自己抜去というのですが、自己抜去を防ぐために手にミトンをはめたり、ベッド柵にくくりつけたりします。(身体抑制)
身体抑制は患者、患者家族の同意もいることです。できればしない方がいいのですが、治療の妨げになる場合や患者に危険が及ぶ場合などはやむを得ずすることになります。
この身体抑制ですが、今回は経鼻胃管挿入中の患者さんを想定して具体案を出してみたいと思います。
経鼻胃管の自己抜去を防ぐために
患者背景
まず、経鼻胃管が入っている患者はどういう人か。
多くは嚥下障害(飲み込みが弱い)があり、食事を口から取ることができず、誤嚥リスクが高いという患者です。
つまり、経鼻胃管を自己抜去されると誤嚥していないかどうか評価しておく必要もありますね。
患者状態
では、自己抜去の原因はどんなことが挙げられるか。
意識障害
せん妄
認知症
などがあり、「抜いてはいけないものだ!」という判断ができないというところです。
経鼻胃管の特異性
次に、胃管特異性の問題はどんなことが挙げられるか。
違和感・不快感(気持ち悪い)
痒みがある(固定テープによる肌荒れなど)
ほかにもあるかもしれませんが、パッと思いつくのはこの2つくらいです。
抑制解除したい時間帯
日中
夜間
ここでは日中と夜間の大きく2つに分けて考えます。
対策案
こういう問題は、どれか一つに問題点を絞って考えるのではなく、いろいろな問題が複雑に絡み合っていることが多いので、一つ一つ紐解いていく必要があります。できることを一つ一つやっていくと解決に近づく可能性があります。
ここでは、患者背景、患者状態、経鼻胃管の特異性(他のドレーン、チューブの場合も転用する)、抑制解除したい時間帯(改善したいこと)、を総合的に判断し、具体案を提案します。
まず、背景にある嚥下障害に関しては、患者の回復やSTによる嚥下機能訓練などになると思います。
次に患者状態は、意識障害やせん妄、認知症などであれば、可能であれば日中離床を促したり、離床中に作業活動を提供したりという手段があります。せん妄がひどい場合は、Dr,薬剤師と服薬調整をすることも大切かと思います。
経鼻栄養の特異性は、不快感(痛みや気持ち悪さ含む)と痒み、不快感は変えられませんが、痒みに関しては予防できるかもしれません。肌荒れの確認をしたり、固定テープを毎日張り替えたり、小さなケアで防げることもあると思います。
解除したい時間に関しては、極論、誰かがつきっきりで入れるなら抑制の必要はありません。ですが現実的に不可能なので別の案を考えます。
夜間はマンパワー的に難しいと思うので、まずは日中の抑制解除時間を長くすることを目指すことが理想と思われます。
日中であれば、離床や離床と活動の組み合わせが効果的かと思われます。離床も活動も意識障害やせん妄の改善、認知症の周辺症状に対して良い影響を与えるとされているのでただ起こすより起こして何かさせる、集中してもらう時間が大切かもしれません。作業療法士さんとの協力も一つですね。
まとめ
背景、状態、特異性、時間帯、考えることはたくさんあります。身体抑制はどれか一つの職種では対応困難なのでDr、Ns、薬剤師、PT、OT、STなど他職種で相談し、効果判定までしてアップデートしていくことが大切だと思います。