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刑法各論 第34章 名誉に対する罪

保護法益 名誉(判例通説は外部的名誉)、内部的名誉、名誉感性

(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045

「公然」とは、不特定多数人が認識し得る状態をいう。特定人に対しされたものであっても、それを秘密にすることを要求し公表することを厳禁したのでない限り、多数人が了知する可能性は否定できない。伝播可能性があれば公然性は肯定される。(大判昭3,12,13)

「事実を摘示」とは、単なる人の意見・判断でなく、真実性の証明に適するような具体的事実であり、それ自体が他人の社会的地位を害するに足るべきを要する。(東京高判昭33,7,15)

目的は要せず、毀損の認識で足りる。(大判大6,7,3)

(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045

真実性の錯誤があった場合、誤信につき確実な資料・根拠に照らし、相当の理由があるときは犯罪の故意がなく成立しない。(最大判昭44,6,25)

(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

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「人」には、法人を含む。(最決昭58,11,1)
被害者が現在するところと否を問わない。(大判大4,6,8)
他人の社会的地位を軽蔑する抽象的判断の公然的発表で成立する。(大判大15,7,5)

(親告罪)
第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。

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名誉毀損罪と侮辱罪の保護法益に関する学説

A説 外部的名誉説
いずれも人の外部的名誉であり、違いは、事実の摘示の有無である。

B説 二元説
名誉毀損罪は外部的名誉であり、侮辱罪は名誉感情である。

各批判
A説に対し
 文言解釈に関し、侮辱罪(刑法231条)は「事実を摘示しなくても」とあるが、「事実を摘示しない」とはならないのではないか。

B説に対し
名誉感情を持たないとされ得る、幼児・重度の精神障害者・法人に対する行為が不可罰となるのは妥当性を欠く。

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