上井草
『展覧会 昔を思い 先急ぐ』
(ちひろ美術館・東京 展覧会『ちひろ・花に映るもの』訪問時)
自分が小さいころ、実家にいわさきちひろの絵が飾れれていた。家族でその絵のことを話したことはなかったが、その飾られた絵の、繊細で脆く消えそうな色は、大きくなってからもずっと覚えていました。
彼女が描写する色が交じり合う水彩や、彼女の言葉『大人というものはどんなに苦労が多くても、自分のほうから人を愛していける人間になることなんだと思います。』に接し、美術館の図書室にある世界の絵本を眺めていると、毎年夏が過ぎ秋が来るこのサイクルは何も変わらないが、自分は幼いころから先に進んでいるのであろうかという気持ちが起こりつつも、その水彩の色に溶け込まれ、そして、そこから生まれる何かがあるようにも思った。