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僕が朝井リョウさんに伝えたいこと

僕は朝井リョウさんの小説が好きだ。僕には朝井さんに伝えたい気持ちがたくさんある。

まず僕の自己紹介をしたい。

僕は今30代だ。大人になって発達障害があることがわかり、人間関係に悩んで20代からひきこもった。朝井さんの小説に出会ったのは、そんな20代の頃だ。

僕は朝井さんの本を読んで、リアルな描写、瑞々しい表現に圧倒された。なにより人間の心を見つめるまなざしに、驚かされ、そして救われた。

朝井さんの小説を読むと、物語の中にいる自分自身と対話するような感じがした。そうやって自分自身を見つめる中で、僕は色々なことに気がつけた。朝井さんの本はいつも僕に寄り添い、僕を励ましてくれた。

僕が朝井さんを好きな理由。それは「人間のいい面とネガティブな面をすべて描き切り、それでも人間や社会を肯定していこうとする姿勢」だ。

最近文庫化した「死にがいを求めて生きているの」では、生きがいに振り回される現代人の心理を巧みに言語化している。「ナンバーワンよりオンリーワン」がスローガンの、「平成」という時代の総決算とも呼べる小説だ。

僕自身、平成生まれのゆとり世代だ。物語の主人公・智也や雄介と、同じ時代を生きてきた。競争よりも協調。他人と比べるのはクールじゃない。自分らしさを大切にしよう。そういうスローガンのもと、学校などでも表立って比較や競争する機会はなくなった。

だけど、僕はいつも苦しかった。学校の成績で5をとっても、自分なんてまだまだだと、自分を認められなかった。誰も僕のことを悪く言っていないのに、僕は自分で自分を追い込み、一人で勝手に自滅してしまった。そして、僕はひきこもった。

僕はなぜ、勝手に自滅してしまうのだろうか。そのヒントが、この小説にはたくさん書かれていた。特に印象的だったのが、次の言葉だ。

「本当は誰も、神輿を担げ、なんて言ってないんだよ。雄介が勝手に、自分を周りの誰かと比較して、そう言われた気になってるだけだ。担ぎたくないなら担がないでいいんだよ、担がない自分を認めてあげられれば(死にがいを求めて生きているの P.441)」

この部分を読んで、僕ははっとした。当時、学校の成績で最高評価の5を取っても、僕は満たされない気持ちになった。そして「周りからいい子に見られるために、もっと勉強しないといけない」と、僕は自分に言い聞かせていた。

そうやって僕はこれまで担がなくていい神輿をたくさん担いでしまって、勝手に疲れていたんだなと思った。それに気がついた時、肩の荷が降りた気がした。

だけど大人になった今でも、「やっぱり神輿を担がなきゃ」と、焦る日はある。そんな時はこの本を読んで、心を落ち着かせている。

ここで急に話が変わる。僕は朝井さんにお願いがある。

朝井さんに「ひきこもり」をテーマにした小説を書いてほしいのだ。

これからの時代、ひきこもりはどうやって生きていけばいいのかを、僕は知りたい。そのために、朝井さんの小説が読みたい。

朝井さんの作品には、ひきこもりが何度か出てきている。話題作の「正欲」でも、登場人物の兄がひきこもる描写がある。きっと朝井さんは、ひきこもりに無関心ではないはずだ。

この文章を読んでくれたみなさん。出版社のみなさん。そして、朝井リョウさん。

「ひきこもり」の小説に、興味ありませんか? よかったらぜひ、書いて下さい。お願いします。

うまく伝えられなかったけど、僕は朝井さんにとても感謝している。そしてこれからも、朝井さんを応援したい。

おわり


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