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岩手県を舞台に宮沢賢治リスペクトが散りばめられた作品「ギャルにも負ケズ」。

想像してた内容と全く違いましたが、面白かった。
あらすじで宮沢賢治、岩手と言うキーワードは目に入ってたのでタイトルも「雨ニモマケズ」から来てるのかな、というところまでは想像してました。
でもやはり「ギャル」というワードに引っ張られて、いわゆる元気なギャルが陰キャ男子を引っ張り回す感じのラブコメだろうというのが読み始める前のイメージでした。

文芸部に所属する主人公の遠谷幸文(美鐘からはあだ名でゆっきーと呼ばれている)は宮沢賢治が大好きな内気な高校生。
その主人公のクラスに東京からギャル・ヒロインの渋沢美鍾(みかね)が転校してきます。 ここまでは当初のイメージと合ってたw
しかしここからが違った。

まず作品全体の印象は「しっとり」としていて、宮沢賢治リスペクトが多く散りばめられています。 タイトルからは「雨ニモマケズ」が思い浮かぶけど、ストーリーはどちらかと言うと「銀河鉄道の夜」を意識して描かれています。
主人公ゆっきーとヒロインの美鐘が、それぞれにとっての「ほんとうのさいわい(銀河鉄道の夜に出てくる友人カンパネルラのセリフ)」とは何か?を見つけようとするボーイミーツガール作品の様相…と、このあたりから「ん?」と僕は思い始めます。

あらすじだけ見ると、どちらかと言うと軽めのラブコメかなと思ってたんですよね。ところが、ヒロインの美鍾は見た目こそギャルだけどある問題を抱えていたりして、それが理由なのか、思ったほど典型的なギャルな感じではない。コミュ力は高いし明るい子なんですけど、真面目さも感じられ、少しだけ影も見える女の子って感じ。
主人公のゆっきーも大人しいので、それも相まって全体的にしっとりと静かな印象になってるのかなと。
その上、物語的に銀河鉄道の夜がモチーフになっていると考えると、元ネタの内容が内容だけに、もしかして余命系の流になるの?と正直ドキドキソワソワしながら読み進めました。

クライマックス近くになるとSF的な要素(不思議な体験系)も入ってきます。突然なので少し驚きましたが、銀河鉄道の夜が意識される描写がより強くなります。
最終的には綺麗に着地しましたし、読み始める前の印象とはかなり違いましたが、個人的にはとても楽しめました。
ただ、いわゆる「ギャル系ラブコメライトノベル」をイメージして買ってしまうと合わない人もいるかも?
おそらく本作は1冊完結なのかなーとは思っていますが、まだまだ二人の抱えている問題や人となりが分かり始めたばかりなので、続編は全然いけると思いますし、できれば読んでみたいですね。
イラストレーターのmagakoさんが担当されたイラストも全て素敵でした。


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