東京はきみの街
3/27〜3/31の日記(5日分なので長いですけどちょっとずつ読んでほしいです、最後が特にいいのでね、読んで損はさせないつもり)
3/27 の日記
午後5時。某駅東口で待ち合わせ。ぱんぱんのリュックを背負っていた彼はスーツを一式持っていたのだけれど、それでも少年みたいで、彼が上京していくことが彼よりも私が寂しく感じるくらいだった。当の本人はけろっとした様子で、大した余韻もなく、いちばん早い東京行きの新幹線へ2人でサッと乗った。これから4泊5日、彼の家での東京旅行が始まる。帰りは彼は東京で仕事、私は地元に帰ってオンライン研修だからひとりなことがいまから憂鬱だ。
3月末の平日の夕方、時間が不確かだったから自由席の切符を取っていたけれど、かなり混雑していた。それでも彼が「こっちの方がいっぱい人が降りてきて座れる気がする」と言ってくれて、その言葉通りのことが起きたので2人がけの席に並んで座れた。バタバタと家を出てきたためか頭がふわふわと落ち着かず、乗り物酔いをしてしまいそうだったのでずっと彼の腕を抱えて眠っていた。「酔っちゃいそうだから寝るね」と言えないところ、私の直したいところ。彼なら絶対に心配してくれるからこそ心配をかけたくないのだけれど。それでも酔っちゃいそうな時に抱えることが許される腕が隣にあること、幸せだと思う。
東京駅に着いてラーメンを食べた。デートでラーメンはあり得ない派が一定数いるのかもしれないけれど、私はラーメンが食べたい。食べたい時に食べたいものを好きな人と食べる以上の幸福はない。食べたくもない洋食屋で濃いソースのかかったハンバーグをテーブルマナーに気を遣いながら食べるよりも、長旅で疲れた体には油と中太麺がいい。
彼の最寄駅はなんでもあって、東京の駅は全てそうなのかもしれないけれど田舎生まれの私は感動してしまった。単に栄えているわけではなく、生活に必要なものが全てある街で、彼が住んでいるという補正はなくせはしないけれど、なくても好きかもと思うくらいにいい街だった。引越し祝いでプレゼントしたスタバのトーキョーローストという豆と、カリタのドリッパーセットを早速使ってコーヒーを淹れてくれた。まろやかな味で落ち着いた。隣に並んで歯磨きをして、まだテーブル以外の家具が何もない部屋のシングルの敷布団で眠った。彼の匂いのする枕を借りた。思っていたより窮屈ではなく、むしろ満たされた気分だった。
3/28の日記
8時か9時くらいに起きた。起きて、隣に彼がいた。今までお互いに実家に住んでいたからこの感覚が新鮮でうれしい。朝はメロンのゼリーを食べた。このメロンのゼリーが高級メロンそのものの味であがった。今日はあまりに何もない彼の家に必要なものを買いに行く日だったので、手早く準備を済ませて池袋のIKEAに向かう。
IKEAでお昼ご飯を食べる気でいたけれど、これまで行ったことのあった地方のIKEAと違い、池袋のIKEAはビルのような建物で比較的コンパクトだったため、レストランの扱いはなく、軽食の摂れるカウンターが用意されていた。思っていたのと違ったけれど、それなら気になっていた珈琲西武へ行こうと彼が案を出してくれて、道案内までしてくれたおかげでめちゃうまトロトロ絶妙オムライスと可愛いステンドグラス柄のアイスティーに辿り着くことができた。私たちのいいところは予定通りに行かなくても楽しめるところだなあと思う。
IKEAとニトリをはしごして生活用品を揃えて、夕方は近所のカフェに行った。ずっとSNSで見て気になっていたカフェで、置いてある書籍もカフェメニューも気になるものばかりでワクワクした。「筆談用のノートはありますが会話は禁止です」と店員さんに言われ、何よりも2人で話すことが好きなので少し戸惑ったけれど、念願のカフェだったのでプリンとコーヒーを注文して席に座った。筆談用ノートにお互いに日記を書いてそれを読み合った。意外と楽しくて、もし耳が聞こえなくなっても彼となら楽しく過ごせるだろうな〜と思っていたけれど、お店を出た途端彼が「あ〜早く話したかったよ〜」と言っていたのでやっぱり耳は大事にして生きていこうと思う。
スーパーに寄って、調味料や夕食の材料を買った。家路に着いていると雨が降り始めた。雨が降り始めてドタドタと走るのとか、走っている人を見るのが好きだ。ひとまず家に帰って食材を仕舞い、箸を買い忘れていたので100均へ傘をさして向かう。彼の小さな折りたたみ傘に2人は窮屈だけれど、彼の腕にぎゅっと寄りかかることができるのでいいとする。性能はわからないけれど100均はほんとうになんでも売っていて、なんと箸に加えて鍋の蓋まで買った。
家に帰ってひと通り食器を洗って、餃子を作った。私の切ったニラはかなり大きかったけれど上手に包めた。ニコニコ包んでいる彼が可愛かった。一緒に料理をするのは初めてだったけれど、思っていたより楽しくて、この先も隣に並んで作ったご飯を隣に並んで食べたいなと思った。もちもちのあったかい餃子を食べて、お風呂に入って、コーヒーを飲んで眠った。昨日は枕が一つしかなかったけれど、IKEAでクッションを買ったので今日はさらにいっぱい眠れた。
3/29の日記
9時くらいに起きた。布団の上でだらだらと過ごしていると、彼がコーヒーを淹れてくれた。コーヒーと一緒に名前入りのコアラのマーチを食べた。私はコアラのマーチが人よりかなり好きで、絶対に絵柄を見てから食べている。その話を彼にすると「そりゃ見るでしょ〜」と言っていたのに見ずに食べようとしていたから止めた。止めたコアラには「マーチくん」と書いてあった。ほ〜らレアじゃん(本当にレアかどうかは知らないけれど)。
今日は「14歳の栞」という映画を観ることがメインの日だった。池袋に行ってルミネの韓国料理屋さんで選べる2品+チヂミみたいなランチセットを食べた。私たちは辛いものが苦手なのに「味は好きだから(汗をかいたりする反応が苦手)」という理由で本場のカレーなり韓国料理なりに挑戦してしまう癖がある。今回も「韓国料理あんまり食べないよね?!(辛いのが苦手だからなのに)」となり、つい入ってしまったけれどやっぱり辛くて持参のティッシュで何度も汗と鼻水を拭った。味はほんとうに好きだから、辛いものを食べられるようになりたいなと思っている。金原ひとみの『アンソーシャル・ディスタンス』に辛いもの好きの女性が登場していてますます食べられるようになりたいと思った。
そのあと無印で夕食用のナンのキットを買った。東京の無印は服しか売ってない「MUJI」なる店舗がある。罠にも程があるけどいつか慣れるんだろうな。はやくそれになりたい。
梟書茶房へ行った。知っている人もいるかもしれないけれど、ここは書店併設のカフェであり、その書店のスタイルが奇妙なのだ。本には全体にカバーがかけられ、タイトルや著者を購入前に知ることはできない。カバーにつけられたあらすじや解説を読んで気になったものを買うシステムのここにはずっと来たかったので本好きな彼と一緒に来られて嬉しかった。私の購入した本は『まさかジープで来るとは』であり、前作の『カキフライがないなら来なかった』を最近読んだばかりだったのでテンションがあがった。この2冊はどちらも又吉直樹×せきしろの自由律俳句集である。Twitterが好きな人には是非読んでほしい。ここで食べたプリンもメロンソーダも美味しかったな。
シネマロサで14歳の栞を観る。公開当初から気になっていたものの地元での上映がなく、再上映も春の都会でしか行われていなかったためにこの数年間観ることが出来ていなかった。ほんとうの中学2年生に密着したドキュメンタリー映画であり、劇的なことが起きたり誰かが死んだりするわけではないけれど、ひたすらに懐かしく、すでに22歳の私は「まっすぐ大きくなってほしいな」と彼らに対して心の中で大人ムーブをかますなどした。彼とは中2のクラスが同じで仲良くなり、それから8年の時を経て偶然再会して付き合ったという経緯があるため、そんな彼と一緒に観れたことは名前をつけて大切にとっておきたい。
映画館を出ると、紺色の夕方が訪れていた。お昼には暑いくらいの陽気だった街の空気も落ち着いて、肌寒くない程度の冷たさが清潔で気持ちよかった。隣の彼も「こういう時間めっちゃ好き〜」と言っていて、おんなじ気持ちなのが嬉しかった。違う気持ちでもきっと楽しいけれど。
夜は家に戻り無印のキットで手作りナンを作った。生地をこねたあと、ぼんやりスマホを触っていたら「しっ!」と彼に言われ、うるさくしてたかな...ごめんよ...と反省した顔で彼を見ると、「ナンが寝てるんだから!」と言われた。悔しい。おもろすぎるだろ。この後ねかしていたナン生地を起こしにふたりでバズーカーを持ってドッキリしました。そのせいかお店のようなナンにはならなかったけれど、十分作るのが楽しかったし何より無印のカレーが美味しすぎて全然お店の味だった。余っていた餃子の皮を揚げ焼きにしてパパドみたいにルーにつけて食べるのも美味しかったので余らせている方はぜひ。
3/30の日記
この日は午前中にベッドが届く予定になっていたから、洗濯をしたり身支度をしたりしながら家にいた。ベッドを待っている間にmenuでバーガーキングを頼んだら、バーガーよりもベッドが先に届いてしまって今度はバーガーを待つための時間が生まれてしまった。バーガーキングは地元にないのでおそらく初めて食べたのだけれど、なんだかステーキみたいな強烈な肉感が美味しくてドクターペッパーによくあった。東海オンエアのサブチャンネルを見ながら土曜の昼に食べるハンバーガーにはきっと三つ星がついているはず。
この日もお天気で、ポカポカだったのでワンピース1枚で出発した。少し前に一緒に買い物に行った時に「こういうの着てるの見たいな〜」と彼が言っていたのに似ているワンピースを着てドキドキしていたら想像の5倍くらい褒めてくれた。それにしても外は暑く、彼が日焼け止めとお水を買ってくれてありがたかった。余談ですが、クリスタルガイザーってなんであんなにおいしいの?
目的地の上野動物園につく。彼は上野駅で好きなガチャガチャを見つけ、目当てのキャラクターを引き当てていた。なんだか今日はついている気がする。当然大きな目当てはパンダなのだが、ところどころで桜が咲いていたり、パンダのカチューシャとサングラスをつけたパンダみたいな人間がいたりして嬉しかった。赤ちゃんパンダを見るために1時間並んだが、私はおしゃべりだし彼と喋るのが一番好きなのでほんとうに話しっぱなしだったため、すぐ時間が経った。少し前の待ち列で喧嘩が発生し、リアルなヒスを目撃したものなんだかドキドキした。パンダの前でねえ、やめなよ。
上野動物園は600円とは思えないほど楽しく敷地が広く、単に散歩をしに行きたいと思うくらいだった。カバ舎の中がかなり匂いがきつかったのだが、「わっ、あ、でもメスか...」とカバが女の子だったために「臭い」ということを我慢した彼がツボだった。動物だもんね。キリンが美人で驚きました。まつ毛美容液何使ってるんだろね。
上野動物園を出て浅草へ。暑さもあって少し疲れていたけれど、浅草についてすぐ冷たい抹茶を飲んで全回復した。着物で観光している人や海外からの方も多く、お弁当を食べ歩きしている欧米風の人がなんだかかっこよかった。確かに片手で食べられなきゃ食べ歩きはできないなんて決まってないもんね。名物のメンチカツも食べて、五重塔が夕陽を浴びてオレンジ色になっていて、花やしきの前でポストの上に乗ったパンダカーも見られて大満足だった。
浅草から歩いてスカイツリーへ向かう。とにかく大きい。高い。綺麗。ずっと上を見ていたらいつのまにかふもとにたどり着いた。が、展望台チケットの当日分は既に完売で登ることはできなかった。かなり前に来たときも強風の影響で登れなかったので、私はそういう運命にあるのかもしれない。それでも明日の東京タワーの展望台チケットをすぐさま予約し、事なきを得た。彼に「有能ね〜!!」と褒められたので胸を張りました。ドヤドヤ。少しくらい予定通りに行かなくても落ち込まないの、もしかして私の長所かもな。そのあともんじゃに90分並び、お腹ぺこぺこ脚へとへとだったけれど、もんじゃを食べて全てを忘れた。帰りのスカイツリーはライトアップされていて、夕方と違う美しさがあった。
3/31の日記
10時ごろ起床。最終日の今日は東京タワー近くの公園でピクニックをして、そのあとタワーに登り、私は地元へ帰る。彼の家を出るために荷物をまとめていたが、シャンプーや歯ブラシを置いてきてしまった。というと意図せずという感じだけれど、かなり意図して置いてきた。暮らしの中で私のことを思い出してほしいな〜という強欲さが表れてしまったけれど、彼にも何も言われなかったので許されていることにする。朝昼ごはんでパンケーキを焼き、彼が最終日もコーヒーを淹れてくれた。なんだかすごく平和な時間だった。早く一緒のお家に住んで、この朝を数えきれないくらい繰り返したいな。
東京タワーへ向かう道中にあるパン屋さんでマフィンとドリンクを手に入れ、芝生の公園へ。あまりの春らしさにうきうきが止まらない。もちろん冬がいちばん好きだけれど、あたたかい気候は純粋に過ごしやすくてポジティブな気持ちになれる。ガチャガチャで手に入れた人形たちも一緒に日向ぼっこをした。彼と私は地元でよくピクニックをしたけれど、この日のピクニックはまさにゴールみたいだった。お弁当を作ってきても楽しいだろうな。またしたい。
東京タワーからの眺めは、東京といえばというものが全部見えて楽しかった。なんならスカイツリーも見えた。東京のビルは全部四角じゃなくて色々な形をしていておもしろい。透けている床の上を子どもが怖がる様子もなくペタペタと歩き回っていたのが無邪気で可愛かった。
帰りの新幹線が19:30だったので早めに東京駅へ向かう。家を出てからずっと私の激重キャリーケースを持ってくれていたので「重たいでしょう、ありがとうねえ、、」と言うと、「じゃないは向こうに着いたら家まで持たなきゃいけないから今くらい楽しときなよ」と言われて、なんだかすっげ〜優しさを感じた。この人は一体どれだけ私のことを支えたら気が済むのだろう。気が済まれてひとりにされても困るので支えたいなと思ってもらえる人でいる方の努力をしたい。
暑かったのでさっぱりしたものが食べたくて、東京駅で讃岐うどんを食べた。本場と味も値段も相違なく、東京でも讃岐うどんが食べられる喜びと安心を感じた。彼とは香川県で有名なうどん屋さんを一緒に訪れたことも、地元にしかないおしゃれうどん屋さんに何度か行ったこともあり、意外にもうどんにまつわる思い出が多いので、東京でもうどん思い出を作れて嬉しかった。
新幹線の時間までスタバで過ごす。実際にこのスタバでは泣かなかったけれど、泣くことだって出来たくらい寂しかった。寂しさとは少し違う気もするけれど、とにかく彼と一緒に地元に帰れないこと、東京で過ごした日々がたまらなく楽しかったことなど、たくさんの彼との事実で胸も頭もいっぱいだった。ずっと一緒にいたかったけれど、時間は無遠慮に過ぎる。改札前に向かった。
ここでお別れだと思っていたのに、彼が入場券を買って入ってくれるらしい。「どこにも行けないのにわざわざ150円払ってくれてありがたいねえ」と私が言ったら、彼が「じゃないの隣に行けるからね」となんでもないふうに言って、私はそこで声を上げて泣きそうになったのを、上を向いたり横を向いたり、目にものすごい力を入れたりして必死に堪えた。なんてことを言ってしまうんだ。どこまで私のハートを掴むんだ。必死に堪えた涙も新幹線乗り場ではついに堪えきれず、嘘くらい泣いてしまった。まだ遠距離が確定したわけでもないのに(私の配属が未定なため)ただ彼と明日会えないという事実が寂しかった。彼が、彼が好きだ。大好きだと思う。私が新幹線に乗った後も「顔見せて〜」とLINEをくれて、窓から覗くとニコニコと手を振っていた。こちらは泣きじゃくって全然可愛くないのに、彼の目は可愛い犬を見るときのような穏やかで愛に満ちた目をしていた。彼が好きだ。彼のためならなんだってできるし、彼の人生の一部に私がいることが嬉しい。前にも出した金原ひとみのアンソーシャル・ディスタンスの中に「彼女の涙を拭う仕事があればいいのに。」といったニュアンスの言葉が出てくるが、まさに私はその気持ちだった。
楽しい、楽しい5日間だった。幸せで、幸せでたまらなかった。ふとしたときに隣にいることが嬉しくて、絶対に手放したくなくて、何度も何度も腕を強く抱きしめた。春の東京にはトラウマみたいなものすら抱えていたのだけれど、この5日間で完全に上書きされた。いつもいつもありがとう。ほんとにほんとに大切にしたいな。またすぐに会おうね。
(なんと7,000字を超えています。ここまで読んでくれた方ほんとうにありがとうございます。コメントなど返せていなくて申し訳ないけれど、ほんとにこちらも涙が出ちゃうくらい嬉しいのです。春先は慣れないことも多いし体調も崩しやすいけれど、それでも楽しいとか幸せだとかポジティブな気持ちでいれたらいいなと思います。またね!)
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