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透明日記「園児のように過ごす」 2024/08/17

昨日の日記。

金曜は飲みに出掛けていた。家に帰り、床に就くと、目が冴えて眠れない。かと言って頭が回るわけでもない。起きようかとも思ったけれど、起きてもすることがない。暗い部屋の布団の上で、黒い靄のように過ごしていた。

何も考えていないようで、ふと何かを思い出し、小さなことで笑い出したり、小さなことを後悔したりする。夜のうちに何度か、口から勝手に歌が漏れ、驚くこともあった。そのうち、起きているのか寝ているのか、分からなくなった。カラスが鳴き、スズメが鳴き、カーテンの隙間から夜の白むのを見た。それからやっと、眠りについたように思う。

朝、生ゴミの日。時間が迫る。眠気に揺れて朦朧とゴミを集め、玄関に急いだ。サンダルを履くと、ゴミ屋のメロディーがドア越しに薄っすらと聞こえる。まだまだ遠い、余裕だなと思って玄関を出ると、ゴミ屋はすぐそこまで来ていた。

雲のような体で廊下によろめき、走っているつもりで走っていないような速度を出す。階段まで来ると、階段は怖い。エレベーターは遅い。ゴミ屋が家の前まで来ている。階段を一歩一歩、慎重に急ぎつつ降りる。

ゴミ屋は次のポイントまで進んでいた。後ろに車は来ないので、路上の真ん中をよろめいてゴミ屋を追う。ゴミ屋は進む。よろよろと追う。地獄の鬼の子供たちの人形にでもなったような感じだった。

ゴミ屋のにいちゃんにゴミ袋を渡すとき、ああ、という亡者のような呻きが漏れた。初心者的な札を胸につけた、若い爽やかなゴミ屋だった。ゴミ袋は丁寧に受け取られた。

ゴミから解放されると、途端に日差しが眩しい。眩しさは気怠さを掻き立てる。目の回る重い体で家に帰った。

眠りが少なかったが、眠る気がしない。家には昨日の夜中から、兄が泊まっていた。母と兄と三人で、朝食を摂る。焼き鮭、卵焼き、蓮根の和え物、昨日の炊きご飯、海苔。

海苔でご飯を包むとき、パリッと海苔が割れ、破片が高く跳ねた。破片は、食卓に屈む母の炊きご飯の上にぴとっと貼り付く。焼き鮭を突いているので気づかない。ご飯を見た母はギョッとして顔を上げ、虫か思たと驚いていた。

食後、文字を読む気もせず、アサラトを振る。飽きるまで、ずっと振る。なかなか飽きない。アサラトを振り終え、冷蔵庫の前で茶を飲む。部屋に戻ると、アサラトを今日初めて見つけたかのように手に取り、振りはじめる。そんなことを繰り返していた。新しいリズムを発見し、飽きが来ない。しまいには母に、あんた、それ飽きへんのかと、呆れたような心配そうな声色で聞かれた。

いつから始め、いつ飽きたのか覚えていないが、昼の二時か三時ごろにはやっていなかったように思う。せや、絵の具さわろ、ということで絵を描きはじめた。思い返すと、幼稚園児の自由時間のように過ごしている。

テキトーに塗りたい色を塗ったり、線を描いたりして過ごす。微妙な感じの絵ができた。細部に気に入るところがほとんどない。気に食わない所ばかりが目立つ。絵を描く感覚が掴めない。ぼんやり、植物のようなものを描こうとだけ思っていた。

夕方、いつの間にか外に出ていた兄が二人の姪を連れて戻る。ブラジル人にもらったタコで、たこ焼きをやろうという運びらしい。姪は「マッシュル」というアニメを第一話から観はじめた。観ながらワアワア感嘆していると思うと、絵を描き出したり、ソファに跳ねたりする。

五時半ごろから、たこ焼きを食べた。たこ焼き粉を釣具屋で買ってきたという。釣具屋もよく考えてるなと思う。たこ焼きは中がとろとろで美味かった。

たこ焼きの途中で、今日描いた絵の写真を見ると、雰囲気だけはなんとなくある。実物よりも粗が見えにくくなるのか、写真だとまだ見れる。遠目で見て、L版サイズならいけるかもと思い、ローソンに行く。夕方を歩きたかったというのもある。

写真の絵は、プリントしてみると、なお良い。周りの余白がそうさせるのかもしれない。

家に帰り、たこ焼きを食い終え、少し文章を書く。兄と姪が風呂に入ってから帰るという。風呂前に、上の姪が全裸でリビングを駆けていた。小麦色の肌に南の島を思う。風呂上がりも全裸で駆けていた。下の姪はバスタオルで顔を隠して遊びながら出てくる。三才を、はんはいと発音する。サ行がハ行になるらしい。なになにハアと人に話し掛けるが、なになにサアと言っているつもりらしい。

百均に写真立てを買いに行く。プリントした絵を部屋に飾ることにした。ついでに頼まれた牛乳も買う。食品売り場の前を通ると、玉ねぎやじゃがいもなど、不揃いな玉のような形に注意が向く。アサラトも木の実を加工しているので不揃いな玉だ。玉ねぎを見ると、アサラトの感覚がよみがえる。

マンションの一階で帰り際の兄に会ったので、見送った。姪はケラケラ笑いながらバイバイと手を振っていた。空には澄んだ月が出る。美容パックを貼った、人の顔のようだった。

家に帰り、プリントした絵を飾る。母に、なんとなくいいやろ、と聞くと、ああ、うん、なにそれと、曖昧な評価を得た。

部屋で少しアサラトを振り、日記を書いた。ベランダで一服したとき、今日流していた音楽がやんわりと、頭の中で鳴る。寝不足で、頭がゆるいのだろう。

寝る前にトイレ。股間を振って残尿を切ると、アサラトの感覚を思い出し、便所で笑った。

今日の絵
「植物のようなもの」

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