伊豆 一人旅【感情日記】
先日、1人で伊豆に行ってきた。
最高な1泊2日の旅になった。
9月のとある日、会社側の都合で有給の日が変更になり、急に四連休になった。
せっかくの連休だから泊まりで出かけよう!と思い立ち、行き先を検討。
淡路島に行くことに決めて、色々と計画を立て始めたが、心のどこかに引っかかるものがあって、一度計画は白紙に戻して、改めて行き先から考え直すことにした。
色々調べた結果、伊豆に変更した。
今私が行くべきところは、絶対ここだ!と、伊豆を調べている時に直感で思った。
移動時間とか交通費とか、そういう現実的なことを後回しにしてでも、“ここだ”と感じた自分の直感を、大切にするべきな気がした。
この旅に行くにあたって、1つ、決めたことがある。
それは、
「自分の気持ちを第一優先すること」。
雨が降りそうな予報だったから心配していたけれど、2日間、とってもいい天気で、空はいつも青かったし、雲はいつも白かった。
最初の行き先は、小室山。
駅の観光案内所でチケットを買って外に出て、バスの時間を確認する前に、「はーー、ついたーーーー!」と心の中で叫んでいたら、乗りたかったバスが出発した。
「あ。」と思わず声が出たけれど、全然問題ない。
バス停近くにあったベンチに座り、ただボーッとしながら、30分後の次のバスを待った。
時間や約束に追われない、流れに抗わない、それが、とても良い。
小室山は、1人乗りの小さなリフトで山頂まで登った。
リフトがかわいくてキュンとした。
ゆっくり進んでいくほどに、ワクワクで心がいっぱいになった。
山頂から見える景色は、私の心を完全に掴んだ。
山頂にあるカフェのウッドデッキに座って、ホットカフェラテを頂いた。
周りの人達の会話や風の音を聞き流しながら、目の前に広がる景色を、存分に楽しんだ。
空と海の青色の境目が、曖昧にぼやけている感じが特に好きだった。
時計も見ず、心が満足したタイミングで立ち上がり、次の目的地に向かう。
次は、大室山に行く予定だったけれど、小室山から駅までのバスの中から見えた川と海が、ものすごく気になり、急遽行くことにした。
駅でバスを降りて、バスから見えた景色の方向に歩き進める。バスに乗っていたから、どのくらい歩いたら着くのか、よくわかっていないまま、とりあえず向かった。
しばらく歩いてたどり着いた場所は、オレンジビーチという砂浜だった。
観光スポットという感じではなくて、人が少なく、絶景というわけではなかったけれど、空気がゆったり流れている感じがして、ホッとする場所だった。
なんだか素敵だ~と思いながら、砂浜をぽつぽつ歩いた。
そのまま、気になっていた川へ。
道路から階段を数段降りたところにある、川沿いの歩道(河川敷?)がバスから見えて、これにとても惹かれたのだ。
ここを歩きたいがためだけに、駅から歩いてきたと言っても過言ではないくらいに、どうしても気になった場所。
別に特別なことはなにもないけれど、気の向くままに、自分のペースで歩いて、自分のペースで辺りを見渡して、その場所その時間を満喫した。
電車に乗り、違う駅に向かったのだが、車内からの景色がとても素敵だった。
山の中とトンネルの中を走りながら、時々、一気にひらけて海が見える。
電車の中から見る数秒の海は、他の場所から見る海よりも、キラキラして見えた。
大室山に着くと、山に登るリフトが大行列で、結局45分並んだ。前後の人たちの会話をBGMに、本を読んで過ごした。
二人乗りのリフトの、ど真ん中に座る。
左右どちらかに座るのとは数十センチしか変わらないけれど、なんだか贅沢な気がして嬉しかった。
山頂は一周1キロの円になっていて、歩いて回れるようになっている。景色と空気を楽しみながら、マイペースに歩いた。
こちらの景色も、空と海の青い境目が、変わらず綺麗だった。
そしてなにより、大室山の、山頂が凹んでいる特殊な形状だからこそ見れる、山の内側(?)の景色が、圧巻だった。
全体が鮮やかな緑で、風に吹かれて波打つ草たちが、とても美しかった。
山頂にあるお店で、お団子を食べる予定にしていたけれど、その時なんとなく、食べる気分ではなかったから、やめた。
たまたま発見できた記念スタンプをノートに押して、リフト乗り場に向かった。
下山してすぐ、リフト乗り場の隣にあるお店に入った。
地の食材をたっぷり使ったお店で、優しくて柔らかい味がして、とても美味しかった。
こだわりの箸が、ものすごく使いやすかった。
行けたら行こうかな~くらいに思っていたお店だったけれど、大満足なご飯と大満足な時間になり、行けてよかった。
計画段階では、小室山と大室山には必ず行こう、夕方早めにチェックインして宿でゆっくり過ごそう、としか決めておらず、もし行けたらどこかの砂浜でゆっくり海を眺めるのもできたらいいな~くらいだった、1日目。
もう宿に向かおうか、と思ったけれど、海に行って綺麗な夕日とか見れたら最高だな~とも思い、弓ヶ浜に行くことにした。
駅からバスでしか行く手段がなかったのに、駅に着いた時点で、次のバスがくるのは40分後。
その時すでに日は落ち始めていたからバスを待つわけにはいかない。
さらに、そのバスで弓ヶ浜まで行くと、帰ってくる時間のバスはなかった。
ただ、海を見たい、砂浜を歩きたい、波の音を聞きたい、できたら夕日が見たい、
その気持ちで、タクシーに乗り込んだ。
夕日が見たい、と伝えると「ギリギリだな、急ぐわ!!」とスピードをあげてくださった素敵な運転手さんに、「でも方向的に、太陽は海には沈まんよ、反対だから」と衝撃的なことを言われながら、連れていってもらった。
また駅に戻るなら待っててあげるよ、と言ってくださったのを、何十分何時間海にいるかわからないので、とお断りすると、じゃあ帰るとき電話してくれたら迎えにくるよ、と電話番号を書いて渡してくださった。なんて優しいの。
弓ヶ浜から見える夕日は、運転手さんの言う通り、海とは反対方向に沈んでいた。
けれど、十分すぎるくらいに、美しい空と海の景色だった。
砂浜には私しかいなくて、波の音だけが響く世界だった。
海の弧に沿って何十メートルと歩き続けているうちに、日が沈んで暗くなった。
ふと上を見上げると、空いっぱいに星が光っていた。
ただただ、感動した。綺麗すぎた。
砂浜と道路の境にあるベンチに座って、しばらく海と星を交互に眺めてボーッとしてみたけれど、なんだかしっくりこず、もっと海を感じよう、と海に近づいた。
誰もいない砂浜のど真ん中、波がこないギリギリのところにレジャーシートを敷いて、荷物を重しにして、腰を下ろす。
目の前に広がる美しい景色。
波の音、風の音、砂の音。
海の匂い、砂の匂い。
肌に触れる砂、肌に触れる風。
口を開けると入ってくる砂の味。
五感をたっぷり使って、その時その場にあるもの全てを、自分に取り込んだ。
星空も見たい、と思い、レジャーシートに仰向けに寝転がった。
波の音が、さっきまでと全然違うものに聞こえた。
砂浜に寝転がり、大きな波の音を聞きながら、満天の星空を見ていると、なぜだかふわっと涙が溢れてきた。
そして、こんなことを思った。
“なんか、こんなに美しい景色を見て、こんなに充実した旅をしてるのに、人生のなにかのキッカケになるような心の動きは、意外と起こらないもんなんだな。”
と。
私はこの旅に、癒しを求めていると思っていたけれど、もしかしたら、人生のヒントを求めている自分がいたのかもしれない。
それと、
“あぁ私、生きてる。”
と、やんわり感じた。
綺麗なものを見て綺麗だと思える心も、
世の中の理不尽や誰かの悲しみに大きく反応して、怒ったり悲しくなったりしてしまう心も、
日常に溢れる些細な幸せや人との繋がりに、これでもかってくらい喜びを感じる心も、
全部、大切にしていきたい。
自分の心に振り回されることばっかの毎日だけど、厄介で手に負えない心だけれど、もっと心が鈍感だったらきっともっと生きやすいんだろうけど、
でも私は、今私が持っているこの心を、手離したくない。
気づいたら1時間くらい経っていて、宿のチェックインの受付終了時間が近づいていた。
電車の時間を調べて、1時間に1本しかないことに衝撃を受けつつ、ちょうど良いタイミングだったので、タクシーの運転手さんにもらった電話番号にかけた。
行きも帰りも、運転手さんとお話するのがものすごく楽しくて、たくさん笑った。
宿の近くのスーパーで食べたいお菓子を買って、宿に着いたのは21時頃。
受付と宿の説明をしてくださった方がとっても丁寧で、かつ気さくで、もうそれだけで、ここの宿にしてよかったと思った。
お部屋も、とても素敵だった。
1人で泊まるには広すぎる和のお部屋。
部屋を一通り散策したあと、しばらく寝転がってボーッと過ごした。
22時から1時間だけ、“夜鳴きそば”といってラーメンを頂けるサービスがあって、1人のおじさまやご夫婦たちに混ざって、美味しく頂いた。穏やかで幸せな空間だった。
寝る前に、机に向かう。
デスクとチェアではなく、低い机に座布団なのが、なんだか良いなぁと嬉しくなったし、味のある木でできていて、小さな引き出しがたくさんついている、とてもかわいい机だった。宿のお部屋の机に、収納力なんて必要はないはずなのに、あえてその机が選ばれているのが、とっても素敵だと思った。お部屋の中で一番のお気に入りポイントになった。
もらったパンフレットと撮った写真を見ながら、ノートに今日の振り返りを書く。
ノートとペンを持ち歩かないことはないくらいにアナログ人間で、書くことが大好きな私は、毎日日記を書くし、普段から頻繁に、机に向かってノートを広げてペンを持って、色んなことを書く。
その時間はいつでも大切な時間だが、素敵な宿のお部屋の、お気に入りの机で、旅を振り返って書く時間は、とてつもなく“非日常”で、本当に特別なものだった。
朝起きると、夜には暗くて見えなかった窓からの景色が目に飛び込んできて、想像以上に緑色が鮮やかで、びっくりした。
予約時に見た気がする「オーシャンビュー」という言葉を思い出し、ベランダに出てみると、木の間からではあるものの、しっかり海が見えた。
なんという贅沢、、、と思い、しばらく、窓に向けた椅子に全身をあずけて、ボーッと過ごした。
チェックアウトギリギリの時間に受付に行き、宿とバイバイした。
2日目は、伊豆テディベアミュージアムと、行けたらお土産屋さんも行こう、という計画。
真っ先にテディベアミュージアムに向かった。
駅からの道中、踏切の景色がなんだか素敵なところを通って、テンションが上がった。
やっぱり、知らないところを歩くの、好きだなぁと思ったりした。
伊豆テディベアミュージアムは、
展示も、ショップも、カフェも、全部全部、幸せすぎる空間だった。
どこを見ても、くま。
全てのもののモチーフが、くま。
なんでもかんでも、くま。
くまくまくまくま。
かわいすぎるだろ。
ここに住みたい、と本気で思ったし、
ここで働いたら毎日ここにいられるじゃん!と、伊豆に移住することを数分間は考えてみたりした。
そのくらい、ほんっっっとうに大好きな空間だった。
お土産を買いに行ったショップで、心が引っぱられる出逢いがあった。
テディベア売り場の隅に座っていた、テディガールさん。
毛色、毛質、触り心地、お顔立ち、表情、座り姿、瞳、
全てが私の好みどストライクなテディベア。
ただ、それだけではなくて、なにかとてつもなく惹かれるものを感じた。
言葉にはならない、でも確実に存在するなにかを、感じてしまった。
なにがなんでも絶対に連れて帰らなければいけない気がした。
少しお高いお買い物にはなるけれど、もうそんなことどうでもよくて、その子を連れて帰る決心をした。
テディベアミュージアムが最高すぎて、ありえないくらい長時間滞在していて、帰ることを決めたときに見た時間に驚いた。
大満足すぎて、お土産屋さんに行く気は完全になくなっていたので、帰ることにした。
帰りの電車で、袋の中で座っているテディガールさんを見つめながら頭を撫でていると、涙が溢れてきた。理由はわからない、でも、なにかしらが私の心を動かしていることは間違いなくて、「これからの私の人生を、いつも見守っていてね」と心の中で呟いた。
帰りの新幹線を待ちながら、旅を振り返る。
大満足の旅になり、心置きなく帰れるぞ!という心境だった。
それと同時に、良い時間すぎて、幸せすぎて、帰りたくない!とも思った。
初めての、アンビバレントな感情に出会った。
本当に最高の旅になった。
旅先を決めるところから、旅の中での行動全て、自分の気持ちのままに、全てを心に従って、過ごすことができた。
行き先も、動くタイミングも、食べるものも、買うものも、見るものも、すべて。
旅行やお出かけのときは特に、「せっかく来たんだから」という考えで動くことがほとんどで、事前に分単位の計画を立てたり、予定を詰め込んだりしがちな私。
もちろん、そういう旅も素敵だし、好きだし、それもそれで充実した経験になる。
けれど今回は、“考え”ではなく、“気持ち”を指標に動く旅を、初めてしてみた。
「やりたい」という前向きな気持ちだけではなくて、「やりたくない」「なんか気分じゃない」という気持ちにも、しっかり目を向けて過ごせた2日間は、私にとって、とても新鮮で、ちょっとむず痒い、でも心地よい、そんな感覚だった。
2日間、一度も富士山見れなかったな。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。