シャーロック 感想 絶対見てほしい名作ドラマ。天才と孤独。思考と感情。
イギリス好きの血が騒ぐ〜!
BBC制作ドラマ「シャーロック」みました。
なぜ今まで見ていなかったのか自分を責めたいくらい面白い!今2周目見ようとしております。
概要
タイトルの通りかの有名なコナン・ドイルの小説「シャーロック・ホームズ」を原作としたドラマです。
ちなみに私のシャーロックホームズの知識は、「憂国のモリアーティ」という漫画程度です。
このドラマは現代イギリスにシャーロックがいたら、の話になっています。
(ちなみに漫画の方は悪役モリアーティを主人公に置いている話になっており、こちらもおすすめ)
事件も現代技術があってもおかしくないよう改変されており、普通に違和感なくスッと入ってきます。
携帯電話やセキュリティレベル、本来ならば小説として書かれるワトソンのシャーロック伝記はブログ、などなど。
間違いなく名作なので、絶対全員見てほしいのですが、良かった点を順に。
①演出が良い
これただのドラマですか?ってレベルの演出力です。
音楽はもちろん、クイック&スローモーション演出が非常ーーーにうまい!これは実際に見ていただかないと説明が難しいんだけど、緩急がすばらしい。
推理で謎を解いていく爽快感をこの演出でうまく表現してるんですね!!
これに関しては百聞は一見にしかず!私の拙い文章力では到底褒めきれないので見てみてください!!
特にシーズン3、エピソード1のミスリード回想の中の、シャーロックとモリーのキスシーンは痺れた!これがセクシー!
②シャーロックの変化の表現が素晴らしい
シャーロックは名探偵ですよね。つまり天才なわけです。
シャーロックには兄がおり、彼も頭脳明晰。そして作中の彼が語ります。「一般人は金魚に見える」。つまり彼らの思考能力は卓越しすぎていて、一般人は馬鹿すぎて同じ土俵で語れないってわけです。
これは天才が主人公の作品でよく語られがちなことですが、天才=孤独です。シャーロックは事件を求めている。日常は退屈で仕方がないわけです。
自分の思考を理解できる同レベルの人間がいないために、友人もおらず、話し相手になる存在もないわけだ。そりゃ退屈になりますよね。
そこに現れるのが相棒になるジョン・ワトソンです。彼は医者ですが、頭脳明晰ではないです。一般社会に溶け込める普通の人です。元兵士の軍医ってだけ。彼のキャラクターで語るべきはそこではないです。
ではどこか?それは「純粋さ」これに尽きます。そしてそれはシャーロックにはないものです。
わたしは思うのですがclever(明晰)であればあるほどpure(純粋)からは遠ざかると思うんですよ。
超簡単に説明すると「オチが読める推理小説に心から驚けるか」ってこと。途中でオチがわかって仕舞えばトリックがわかった感動は半減です。オチを当てた時点で、作品を楽しめなくなる。
シャーロックはこの現象を現実社会で常に行なっている状態ってわけです。今日何が起こるか、もっと言えば、世の中で何が起きるかすらわかってしまう(読み取ってしまう)。
そりゃ人生に退屈するはずですよね。
だからこの世の中(社会)っていうものに興味が全くない。
でも、そんな彼の目を社会に向けさせるのがワトソンという存在です。ワトソンという純粋(悪く言えば単純)な相棒が隣にいることで、彼は少しずつ成長なのかはたまた衰退なのか、をしていくわけです。
周りは金魚ばかりで、人間は、金魚に理解されないことを嘆いたりしない、だからシャーロックは世間の目や知人の目を気にしない。
しかしジョンの目を気にしないかというと、気にするようになってくる。
それはなぜか?
馬鹿な人間の中にも善良な人間っていうのはいるからです。そして善良な人間こそジョンなのです。
シャーロックが一般人を馬鹿だというのは、「自分の意見をもたず、現象を理解しようと思考せず社会に流されるまま生きているから」だと私は推測します。
なんで理解しようと努力しないのか?自分の目で判断しようとしないのか?そのことに呆れているんだと思うんです。
ジョンは推理ができるわけではない。
しかし、自分の目で見て体験したことを自分で判断しようとはします。
つまり頭はバカかもしれないけど、人間としてバカじゃないってことです。
だから失礼な推理を堂々と披露する常識のないシャーロックに呆れながらも、そのほかに類見ない推理力を「excellent」「brilliant」と褒め称え、そしてブログにまで書くに至るんです。
シャーロックの失礼な態度に腹を立てる。けれども、失礼な態度とは別にシャーロックにもいいところ(天才的な頭脳)があることを彼は素直に認め、尊敬するんです。
普通の人はどうか?それは、シャーロックの失礼な態度に腹を立て、そして慄き、恐れ、嫌うだけです。
シャーロックの周りに残った仲間たち(ジョンやモリー、ハドソン夫人、刑事)らは、シャーロックにバカにされながらも、その実、認められ、そして認めているんです。
そういう意味で、頭の良し悪しではなく、お互いに対等なんです。
そして、そんな純粋な仲間たちに恵まれたからこそ、シャーロックは兄のマイクロフトのように冷徹に徹さず、人間味ある天才として変わっていきます。
しかしこの作品が優れているところは、誰もが憧れる卓越した頭脳っていうのは、人間味や感情と対極にあり、感情に揉まれると頭脳が霞んでしまうということをうまく表現しているから。
シャーロックが人間的感情的になっていくと、皮肉のように窮地に追い詰められていく。
それはシャーロックにとって、果たして幸か不幸か。これは大きな命題ですよね。
卓越した頭脳か、人間的な幸福か。
幸福っていうのは、「emotion(感情)」であり、主観的であり、曖昧で、実のない物であるから、きっとシャーロックは一蹴する、し、したがるとおもう。
けど本人すら気づかないうちに、ジョンやその妻メアリーを心から守りたいと願うくらいには、シーズンが進んでいくうちに彼も人間味を増していきます。
天才でありながら人間的な感情を切り捨てられないのは、本人にとって不幸なことです。でもシャーロックには、ジョンや仲間がいる。そしてそれが彼を弱くし、強くする。
これは人間の真理であり、そしてシャーロック・ホームズという天才を通してこの作品はその真理を表現しているから、だから素晴らしい。
『天才は孤独であり、思考と感情は対極にある。』という人間心理をね。
そしてそれを作中でシャーロックは繰り返いしこのように言います。
感情の頂点ともいえる恋愛に関して。
「精密機械の中の砂粒」「レンズのヒビ」とね。
まったくもって私は、女であるにもかかわらず、シャーロックに全面同意なのが、アラサー独身でこんなNoteを書いている理由でしょうね。まさしく。
③俳優の演技力
私は、この作品(に限らず外国作品は基本的に)英語&日本語字幕で見ています。
正直、英語を話しているので彼らの演技力ってあんまりよくわからないんですが…一つ言えるのはこの作品の俳優の演技力は英語だろうが容赦なくすごいと断言できます。
たとえばシーズン2-エピソード1、私の愛するキャラクターアイリーン・アドラーの話のクライマックス。
マイクロフトからジョンはアイリーンが死んだことを知らされ、そしてそれをシャーロックに伝えます。その時に死んだことを「アメリカに移住し保護プログラム下にある」とはぐらかすのですが、シャーロックは死をお見通しのような表情を浮かべただ一言「彼女の残した携帯を僕にくれ」といいます。そしてそれを悲痛な表情で渡すジョンと、死を推理しながらも、携帯を受け取るシャーロックの表情。
はい、号泣。
まぁ、シャーロックは実はアイリーンを救っているのですが、今は演技力の話です。
ジョンもシャーロックも台詞では語らないアイリーンの死に関して「気づかれている」「気づいている」ということを演技だけで伝えるのががうますぎる!!!!!
っかー!そりゃあそうでしょうとも!主人公シャーロックを演じるベネディクト・カンバーバッチは、かの名作アカデミー賞映画「イミテーション・ゲーム」の主演俳優ですからねええええ!!!おっとう!!興奮してきた!!!
そして同じくシーズン2-エピソード1では、アイリーンがモリアーティの援助のもと、シャーロックと兄・マイクロフトを追い詰めるシーンがあります。そして自分の保護と莫大な金銭を要求します。
そして、マイクロフトはアイリーンなんかに負けたシャーロックに対し「童貞」だから。そう。アイリーンはいわばモリアーティが送り込んだ美人局であり、そんな古典的かつ単純な罠に引っかかってお前は負けたのだ。と指摘します。
するとシャーロックは、それまでずっと解けなかったアイリーンの携帯のパスワードを見事推理し解除する。
そしてそのパスワードは「SHER」LOCKED。
心惹かれていた女性であるはずのアイリーンの方こそが、自分に惹かれていたのだとまで言い当てます。
これはアイリーンに対するほとんど死刑宣告。
何せ自分の身を守る唯一の携帯の暗号が政府であるマイクロフトにばれてしまったからです。
そして恋愛に対しても敗北。童貞だと馬鹿にしていたシャーロックに一本取られるわけですね。
なぜそこまでシャーロックが徹底的に彼女に仕返ししたか。
それは兄であるマイクロフトに「恋愛感情にとらわれたから、お前はゲームに負けたんだ」と言われたからです。そう、シャーロックがいつも言っている恋愛感情こそが思考力を鈍らせるという自身の信条を見失っていたかもしれないと焦るからですね。
このシャーロックの心理をなんと映像作品で表現する素晴らしい脚本ですが、もちろん俳優の演技あってこそ。
そんなこと作中の台詞でも説明していませんからね(つまり私の憶測にすぎません)しかし私にそう憶測させるだけの演技力が彼らにある。
つまり俳優の演技が作品を考察させる余白となっている。
ドラマという映像作品の完成度として見ても、すばらしい、としか言葉がありません。
まとめ
まだまだ語りつくせないので今から2周目見ようと思いますが、とにかく面白いのでみなさん見てみてください。
個人的にはシーズン1>3>4>2の順で面白いです。(まあずっと面白いんだけど)
シーズン後半は少し演出過多(凝りすぎ)て話の導線の理解が難しくなっているところがありますが、気にならない程度です。
個人的にアイリーンというキャラクターが一番好きですが、話としてはジョンの嫁メアリーが出てきてからが面白いですね。シャーロック・ジョン・メアリーの3人の関係性が非常に好きです。
私アイリーンみたいな男に引けを取らないくらい賢く強いのに女である武器を使うことをためらわない女性が好きなんです。憧れですね。