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かけひきを楽しむ思考型ランニングゲーム3選

11月になると、毎週のように大学生や実業団の駅伝大会が中継されるようになる。そしてその流れに乗るかのように、学校現場でも「持久走」のシーズンが幕を開ける。しかし、これまで一般的に行われてきた伝統的な「自分との戦い」を強いる持久走は、全く楽しさに触れることができず、マラソン嫌いや運動嫌いを大量生産する装置と化している(これについては別稿で詳細に述べている)。

そこで、今年度体育主任である私は、自校の持久走を撤廃し、大会や休み時間の練習もすべて「なし」とすることに成功した。一方で、従来の持久走に代わる新たなランニングゲームを同時に提案することで、どの学年でも「楽しく走る」体験を積み重ねながら、”副次的”に全身持久力の向上できるようにしている。


なぜ持久力の向上は「副次的」なのか

細かな部分はその学校によりけりだが、従来の学校における持久走の目的は、主に①体力(=持久力)の向上と②目標に向かう調整力の育成にまとめられるのではないかと思う。

①については、学習指導要領において明確に否定されている。現行版の体育科の中で、「体力の向上を主たる目的とする」ことは発達の観点から望ましくないと言及されており、これはスキャモンの発育・発達曲線からも裏付けることができる。たしかに持久走によって心肺機能の向上は見込めるが、それによる最大酸素摂取量の上昇を「第一目標」とすることは避けなければならない。したがって、いわゆる持久力の向上というベネフィットは、何か別の目的にコミットすることによる「副次的」な結果であるのだ。

では、そこにくる上位目標とは何か。②目標への調整力とは、具体的には1)自らに合う目標を設定し、2)その達成に向けた最大努力をし、3)適切な自己評価をする、という一連の行為になる。このように文字にするととても教育的で心地よい感じがするかもしれないが、実際はまるで異なる。まず、1)に掲げる目標は、多くの場合学年内の順位か、あるいは自己記録への挑戦である。順位を明確化することは、その集団におけるヒエラルキーを顕在化するということであり、それを学年という実生活に直結する母集団で行うということは、下位層に著しい心的負荷がかかる。それを避けるために、順位は全くつけずに自己記録への挑戦のみをさせる学校も少なくない。しかし、競争がないとかえって自分を追い込むことが困難になり、走ることそのものにより高いモチベーションが求められることになるのだ。

つまり、持久走において学年順位や自己ベストといった目標設定をさせることは、ヒエラルキーを顕在化して社会の厳しさを受け入れさせるか、高いモチベーションを前提として自分自身を追い込ませるかという「鍛錬・訓練」の様相が極めて強くなるのである。

では、子供が楽しく走っている場面は何があるか。それはいうまでもなく「遊んでいるとき」である。鬼ごっこやサッカーなど、遊んでいるときの子供はどんなに心拍数が上がっても笑顔で走り続けている。息が上がって苦しいはずだが、それよりも遊びが持つゲーム性がもたらすポジティブ感情が上回り、本人には「楽しい」が一番強く残るのだ。楽しさを排除した訓練的なランニングではなく、遊びのような楽しいランニングを体育でも再現すべきである。

思考を促すランニングゲーム

前置きが長くなったが、いよいよこれを達成するためのランニングゲームを3つ紹介したい。すべてに共通するのが、子供に走りながらかけひきをさせ、思考を促すという点である。作戦やねらいを立てさせ、その遂行に全力コミットさせるというボール運動ではよく用いられるデザインを、ランニングの中でも導入できるのだ。

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