【期間限定公開01】はじめに 働くあなたの心が少しでもラクになるために――
「仕事が楽しい」「今の職業にやりがいを感じている」「働いている自分が好き」
今の時代、そう感じている日本人は少ないと言えるでしょう。
そして逆に、次のようなつらい気持ち・状態で働く人が増え続けています。
●「私なんて……」と思わずにはいられない。それが口癖にさえなっている
●人に「嫌だ」「やめてほしい」と言うことができない
●嫌われたくないから、自分の考えより人の意見や評価を大切にしている
●誰かと比較して「どうしてああなれないんだろう」と自分を責めずにいられない
●自分だけが職場で浮いていて、必要とされていないと感じている
あなたにも当てはまるものがあるのではないでしょうか。
こうした人たちに共通しているのが、 「自己肯定感」の低さです。本文で詳しくお話ししていきますが、自己肯定感とは、無理に頑張ったり、常に誰かの役に立つべきだと考えたりせず、 「飾らない自分を大切にしようと思う気持ち」 のこと。
自己肯定感が低いと、他人よりも自分の価値が劣っていると感じ、何をするにも自分の考えや希望は後回しになってしまいます。体調や精神面に不調があっても、逆にそんな自分を責めて「迷惑をかけてはいけない」と無理を続けがちです。
そうして、ストレスや心身へのダメージ、「私はダメな人間だ」「自分が嫌い」というネガティブな感情がどんどん積み重なり、働くことがひたすら〝苦行〞になってしまう。あるいは、会社に行くことさえできなくなってしまう―。
こうした人たちに、今まで数え切れないほど出会ってきました。
申し遅れましたが、私は産業医・精神科医として働いている井上智介と言います。
大阪を中心に、数十社以上の企業で産業医を務め、従業員の心と体の健康を支えるべく活動しています。
そんな私が日々直面しているのが、必要以上に自分を責めて自らを追い詰めている人や、自分を好きになれず、仕事で無理をすることでどうにか自分の価値を見出そうと必死な人など、自己肯定感を持てずに苦しみながら働く多くの方たちの姿です。
私は、前著『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(小社刊)において、職場で起こる様々な問題・悩みへの対処法をお話ししました。ありがたいことに多くの反響をいただきましたが、同時に「それほど多くの人が、働くことをつらいと感じている」現実を改めて痛感しました。
勤勉で努力家の多い日本人は、「飾らない自分」を認めず、常によりよく成長すべきと考えて無理をしがちです。うまく結果を出せない自分を責めて、理不尽なことや大変な思いをしても「私が悪いからだ」とばかり考えてしまいます。
その原因、つまり、「働くことがつらい」の根源にあるものこそ、自己肯定感の低さなのです。そこで2冊目となるこの本では、自己肯定感を上げるための方法について書くことにしました。
●どんな人との会話も苦でなくなる「ラポールトーク」
●ネガティブな空気にのまれそうな時に効く「バリア」の作り方
●やりたいことが見えて前向きになれる「自分探しの旅」の進め方
いかがでしょうか。
このように、実際に私が産業医として診てきた人たちと二人三脚で取り組み、そして効果を出してきたノウハウをたくさん詰め込んであります。
生まれつきの気質や家庭環境によって差はあるものの、自己肯定感は、あなた自身の力で高めることができます。
自己肯定感が上がれば、これまでのように何かにつけて自分を責めることがなくなっていきます。うまくいかないことや失敗を経験しても、「そんな時もあるよね」と考えられるようになりますし、「次はこの経験を生かそう」と今後の仕事に対して前向きに向き合うことができるようになるでしょう。
また、少しずつ仕事が楽しくなってやりがいが出てきて、自分の考えや自分自身を大切にすることにつながります。すると、人の顔色をうかがってばかり、周りに振り回されてばかりの日々から抜け出せます。そうして、これまでのように疲れることなく、あなたらしい日々を送れるようになっていくのです。
私は、自分自身の、そして従業員の方々や患者さんたちにお伝えするモットーとして、次の2つをいつも心に掲げています。
①人生は60点で合格!
完璧な人間などこの世に存在しません。誰にだって得意・不得意があります。
さらにはある意味〝自分勝手〞な好き嫌いを持っていますが、それが人としての当たり前の姿です。失敗や間違いをしたって大丈夫ですし、それであなたの価値がなくなるなんてことは決してありません。何事も、60点くらいまでいけば大丈夫なようにできているものです。
②ラフに生きる
あなたはずっと無理をして頑張り続けてきて、とても大変でしたよね。これからはぜひ、大ざっぱ(rough)に、笑って(laugh)生きてほしいと思います。
「こんな日もあるよなあ」「きっと何とかなるさ」を口癖にしていきましょう。
案外、大抵のことは何とかなるものですから、きっと大丈夫。
この本には、これらのエッセンスを凝縮しました。
著者としてはおかしなことを言うようですが、この本も、〝ちゃんと読む〞必要はありません。気になったところ・好きなところから目を通し、「できそう」「やってみたい」と思ったことから、あなたのペースで取り入れていただけたら幸いです。
少しずつ進めても、着実に自分を好きになり、自信を持てるように構成しています。
読み終わった時、働くあなたの心が少しでもラクになることを心から願っています。
それでは、ぜひ楽しみながらページをめくってみてくださいね。
産業医・精神科医 井上智介
→【next】「PROLOGUE なぜ、働くうえで自己肯定感が大切なの?」
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