【論文】フォーミュラマシンに関するパーツの開発論文を書いたよ!
はじめに
本記事は以下のような人にお勧めの記事です.
・学生フォーミュラに携わる人
・自動車工学,3D CAD,材料加工などの分野に興味がある人
・ものづくりが好きな技術畑の人
・バイク,レース.キャンプ等の男のロマンが大好物な人.
・自動車業界の産学連携事情を知りたい人.
・ゆるキャン△に関する面白記事が知りたい人.
1.あなたは学生フォーミュラを知っていますか?
参考
#01 第19回 学生フォーミュラ 日本大会 2021-クルマづくりに挑む学生たち (youtube.com)
学生フォーミュラとは,大学生が設計・製作したフォーミュラスタイルのレーシングカーで競技する全日本規模のイベントです.この競技会では主に、大学生達が自大にて自作した車両について、車両走行性能や車両デザイン,開発プロセスやコスト計算精度等を競い合います.なので本競技会に参加する学生の特徴として、エンジニアリング能力をゴリゴリ磨きたい理工系学生、実践的なプロジェクト運営管理のスキルを学びたい商学部生、車両に搭載する多様な部品のデザイン設計をやってみたいデザイン専攻の学生などが挙げられます.
参考
2023 Formula SAE Japan: Day3 (Dynamic Events) Endurance / 表彰式 - YouTube
参考
2018年 全日本学生フォーミュラ大会 山梨大学学生フォーミュラ部 スキッドパッド (youtube.com)
2.侮ることなかれ!普通の大学生の部活動のレベルではありません!
参考
https://readyfor.jp/projects/grandelfino
参考
名古屋大学FEM 世界レベルのEV開発への挑戦(名古屋大学 FormuraTeamFEM 2023/06/01 公開) - クラウドファンディング READYFOR
上記の写真をご覧の通り,レーシングカー1台を開発するのには各大学のフォーミュラ部にもよりますが,大体数百万規模の開発費用が求められます。当然そのような莫大な資金は大学生のアルバイトだけでは賄うことはできないので,実際の資金の収集方法としては,①大学からの資金提供,②地元企業からの支援金,➂クラウドファンティングといった方法でお金を集めているのが現状です.またこんなにお金が沢山必要とされるのには以下のような理由が例として挙げられます.
このように学生フォーミュラとは,膨大な開発費用を準備し,独自性,新規性,再現性のある車両部品開発に尽力するような部活動です.といっても元々学生フォーミュラに参加する学生は幼いころから自動車のカタログ書を読み漁ったり,機械いじりが大好きなエンジニア思考の人だったりするので,何だかんだ楽しみながら部活動に励んでいます.ただそれでも学生だけで車両製作を完遂するのは技術的に困難なこともあるので,定期的に日産やTOYOTAやHONDA等の企業が車両開発講習を開催し,大学生たちはそれらの教育イベントにて車両開発のスキルを学んで行ったりしています.
参考
ホンダの学生フォーミュラ活動支援|Honda (global.honda)
3.学生フォーミュラはオープンハートな文化が強い傾向にあります!
学生フォーミュラに励む全国の大学生同士では定期的な交流会が開かれています.こうした交流会の例としては主に以下のようなものが挙げられます.
また交流会で車両情報を発信しあうだけではなく,SNS上でも自分の大学で設計製造した車両部品について解説するような動きが多数確認されています
例えば各大学の部活動の公式HPを参照すればそういった数多ある部品の開発情報を閲覧することができます.勿論,部員の趣向によって情報公開する範囲は様々異なると思いますし,あまりの多忙さに情報発信を忘れる大学も珍しくありません.ただ本格的に部品開発に励んでいるという姿勢を情報発信という手段でアピールしないと,大学学務や協賛企業からの支持が得られない可能性があるので,基本的には全国の各部活動では自主的にマシンパーツに関する紹介記事が公開されていることが多いです.
参考
年間活動報告|金沢工業大学 ーFormula Car Projectー (kanazawa-it.ac.jp)
また下記のページでは全国各大学のフォーミュラ部の取組がどんな感じなのか雰囲気が掴める記事が沢山公開されていますが,現役部員によるフォーミュラ活動の楽しさと過酷さがよく分かる記事が多いと思います.こんな風に各大学の取組記事を参照すると,全国の部員同士は競い合う関係である一方で互いに学び合うことのできる関係であることが分かり,尊いなと思いました.
参考
https://gazoo.com/feature/article/university/15/01/13/
4.といってもあまり情報が盛んでないパーツもあったりして…
そうなんです.車両に搭載するパーツは数十数百規模で色々な種類があり,各大学が開発したそれぞれの部品に関する専門的な紹介記事は,各部活動の公式HP以外にも,様々な関係組織のHPにて公開されていることもあります
しかし情報が充実しているパーツもあれば,ほとんどSNS上にて情報が確認できないパーツもあったりします.なので自分が設計開発するパーツの参考情報がSNSや図書館等で発見できなかった場合は,自力で試行錯誤しながら0ベースで設計開発にチャレンジする必要があります.これがまた大変で,
設計製作スキルに自信の無い学生が,そういった参考文献がほぼゼロのパーツの開発係を担うと,いろいろと調べながらモノづくりに励まなければならない過酷さに直面します.それはそれで,モノづくりスキルが物凄く成長するという魅力もありますが・・・
写真引用元
33:大阪工業大学|Motor-FanTECH[モーターファンテック]
なのでこのパーツに限らず,設計開発工程に関する情報が充実していないパーツについては,誰か一度専門的な開発論文を執筆してくれ!と思っているような人が全国にいる可能性があるのでは?と思いました.ちなみにこのマシン押引のパーツの開発係を担当する人は,工学的なものづくりに携わった経験が無い場合も多いので,猶更そういった知識経験があまりない方にとっては参考となる開発工程記録書があったほうがいいなと思います.
5.本題(論文公開)
そこで今回,このマシン押引のパーツの設計工程を扱う論文を自分1人で執筆してみようと思った次第です.勿論,様々なパーツの設計開発工程を扱う文献を自分1人で沢山執筆することができたら,全国の部員が各々担当するパーツの開発について,多数ある参考文献を利用して効率的なマシン部品開発に励めるようになるとは思います.しかし全パーツに関して逐一執筆記録書をまとめていたら,時間がいくらあっても足りないので,今回はこのパーツに限って開発工程の論文を紹介したいと思います.
本論文の概要としては,車両押引を可能とするアルミ製の金属パーツの設計工程をまとめたものとなっています.この設計論文の執筆時には様々な工夫を凝らしました.工夫点はいろいろとありますが,例えば以下のような感じでしょうか…
工夫点1:
本パーツの製造に使うパイプ同士を斜め角度で溶接すると,製造難易度が上がって大変という意見がSNSにあったので,基本的にはパイプ間の溶接は90度に限定した.
工夫点2:
本パーツを使ってマシン押引をする際,本パーツとマシンの連結箇所を2つに設定した.理由としては,特定箇所だけに連結箇所を設定した場合,何度も本パーツと車両の連結行為を行う際の摩擦により,車両の特定箇所だけマシン塗装が剥がれる恐れがあるので,できるだけ局所的な塗装剥がれを,
防ごうと考えたため.
工夫点3:
設計工程を文章だけでまとめると読み手側の理解が浅くなってしまう恐れがある.そこで三面図と3DモデルをSNS上で公表することにした.
工夫点4:
本パーツの設計には特別な治具が不要.本パーツを作る為の必要なパイプ同士は,適当なブロック材で固定しておけば,溶接時による大きな熱歪は抑えられる.ただしアルミ溶接は融点が低く,また熱伝導率が高いアルミ同士を溶接する都合上,本パーツのアルミ溶接の前にはアルミ溶接の練習を事前に行っておくことが望ましい.
工夫点5:
本大会には外国からの大学の参戦事例もあるので,論文は日本語版と英語版の2種類を執筆した.
6.最後に
学生フォーミュラの取組紹介と,本大会で利用される特定パーツの開発記録の紹介を行いました.将来的に本パーツの開発係を担うであろう未来のフォーミュラ部員の方々だったり,本記事がフォーミュラ関係者や理工系学生に限らず,あらゆる人にとってなにかしら有用と思って頂けたら幸いです.
7.おまけです(必見!?)
参考
『イージー・ライダー』のように生きたい、マフィア梶田のこだわりチョッパーバイク (youtube.com)
参考
自分を志摩リンだと思いこんだオタクが「ビーノ」に乗って行く「ゆるキャン△」ガチ聖地巡礼レポート【前編】(2/2 ページ) - ねとらぼ (itmedia.co.jp)